力の目覚め編 上手い事やったるって素晴らしい
真っ青な空の下、太陽に照らされる白い砂浜を俺達は全力で駆けた!
ーーーーーー 日向 海晴 ーーーーーー
「くそ!待て!」
「待つっちゃぁーーー!」
俺とヴェルは真っ黒な烏賊に引っ張られていく翔陽とアナウンサーのお姉さんを追いかけてる!
烏賊の背後の海は見た事もない大きな渦潮が巻き起こっていた。
ッザザザザザザ!!
必死に走ってだいぶ追いついて来た!
もう少しや!!
もう少しで追いつける!!
ッザザザザザザ!!
もう目の前や!!
ニ人に向けて飛び込む俺とヴェル。
「翔陽!」
ガシッ!
「ちゃ!」
ガシッ!
海の手前5mくらいで翔陽に飛び込みギリギリ捕まえた!
ヴェルもしっかりアナウンサーの姉さんを捕まえてる!
「うぉお!!」
「ちゃぁぁーーー!!!」
この真っ黒な烏賊!
引っ張る力めちゃくちゃ強い!
「とぉまぁれぇ!!!!!!」
俺は両足で踏ん張って思いっきり引っ張った!!!
ザザ、ザザ、ザ、ザ、、、
俺と翔陽はその場ででなんとか止まることができた。
しかしヴェルとアナウンサーさんは力が足りないのかズリズリ引きずられてる。
引きずられて行く先にいる真っ暗な烏賊がいる。
さっきより近づいたからか、さらにデカく見える。
でか過ぎやろ、あの烏賊。。
ザクッ!
翔陽が引きずられてもずっと持っていたサーフボードを砂浜に突き刺した!
「海晴!あっち先助けてこいよ!」
翔陽がボードを砂浜に刺してから。
巨大烏賊に引っ張られる力が弱くなった様に感じた。
翔陽がボードをビーチに突き刺し引っ張る力に耐えられる様になったからか。。
「わかった!」
俺はすぐ横のヴェル達の助けに向かう!
すると、すぐ側に先の尖った流木が目に入った。
俺はすかさずその流木を拾って、ヴェルとアナウンサーさんが引っ張る真っ黒い触腕に駆け寄った。
ヴェルがいるから引っ張れるスピードはズリズリと相当遅い。
俺はその触腕に思いっきり尖った流木を、、ぶっ刺す!!!!
ザクンッ!
ブホォォォォォォォォオオォォォ!
大きな鳴き声と共に黒い触腕がアナウンサーさんから離れた!
離した触腕が海に逃げる。
「しまった!」
俺の持っていた流木は突然凄いスピードで引いた触腕に刺さったまま持っていかれてしまった。
でも、アナウンサーのお姉さんは触手から助け出せた!
「翔陽!」
翔陽の方へ振り返ると、ヴェルがもう翔陽に飛び寄ってた!
せっかく触腕から逃れられたのにアナウンサーさんはその場で硬直してガタガタ震えてる。
「早く!にげろ!」とアナウンサーのお姉さんに俺はとっさに叫ぶ!
声で硬直が取れたのかアナウンサーのお姉さんが目に涙を浮かべながら猛ダッシュでテレビクルーの人達の方へと走っていった!
俺は翔陽の方へもう一度目線を戻すとヴェルが触腕に噛み付く瞬間やった!
うそやろ?
ガブッ!
噛み付いたーーー!!
無理無理、俺ならあの黒い触腕に気持ち悪くて絶対噛みつくなんて無理!
よくやるわ。
俺は武器になる流木をさがす。
先の尖ってる流木が全然無い。
そらそんなに都合よく無いか。
仕方なく今度は大きくて長い流木を拾う。
その流木で思いっきり翔陽を掴む触腕を殴りつけようとした瞬間。
「うわ!」
その拾ったはずの流木を思いっきり引っ張られた。
引っ張られたその勢いで俺は真っ黒な烏賊の方へ投げ飛ばされる。
「!?」
なんや!訳分からへん!
投げ飛ばされた俺はゴロゴロビーチの上を転がった。
そして何があったか確認すると。
さっき拾った大きくて太い流木が宙でブンブンと飛び回ってる。
流木に刺されて一回離れた触腕が再び戻ってきて俺を襲ってきてた。
その流木を掴んだ触腕は即座にその流木を振りかざし、俺に振り下ろしてくる!
あかんって!!
ヒュン! ドゴン!!
流木は激しくビーチを打ち付けた。
危なかった!
俺は横に飛び転がってギリギリで流木を回避していた。
ビーチを二回転して立ち上がる、が、また上から流木が俺を襲う。
ドゴン!!
ドゴン!!
流木での連撃!
紙一重で流木での攻撃を横へ横へと避ける避ける!
本当にギリギリの回避。
避けることに精一杯でヴェルと翔陽の方の見て状況を確認する余裕すら無い。
この状況どうしたらいいか全く分からへん。
あの黒い巨大烏賊を倒すなんて到底無理やろ!
三人でこの黒い巨大烏賊の攻撃の届かないとこに逃げるしか無い。
流石に陸の方には上がってこーへんやろ!
そう考えていると、また上から殴打して来た、さっきの通り横に飛びのこうとしたら!
「うわ!!」
ドン!!!
飛びのこうとしたその時、俺は何かに躓いて倒れてしまった。
でも倒れた事によってギリギリ流木の攻撃は避けることが出来てた。
危なかった。
俺は慌てて立ち上がる。
「何やねん!」
何に躓いたんかとはチラッと躓いた物に俺は目を送る、と。
もう一本の触腕が見えた。
俺が躓いた物は翔陽を掴んでいるもう一本の触腕やった。
逃げてるうちに俺は翔陽の方に近づいて来てた。
転けてる俺に向かってまたも上から流木が襲って来る。
そうや!
俺は横に一回転また紙一重で回避する!
そして今度はあえてもう一本の触腕を越えるように流木を避けた!
ドゴン!!!
ブホォォォォォーーー!!!!!
巨大烏賊の叫び声が聞こえた!
間抜けなことにもう一本の自分の触腕に流木で思いっきり殴打していた。
狙い通り!!
「よし!!」
ヴェルと翔陽の方を確認すると翔陽に巻きついてた触腕が取れる瞬間やった。
ヴェルはまだ噛り付いてる。
「ヴェル!翔陽!逃げようぜ!」
「おう!」
「あ!わかったっちゃ!」
全員で走り出す!
真っ青な空の下、太陽に照らされる白い砂浜を俺達は全力で駆けた!
ヴェルが少し遅れている。
俺達は猛ダッシュで砂浜を駆け上る。
テレビクルーの近くまで来た!
飛んでいるヴェルも今はもう俺の横まで追いついて来ようとしている。
シュルシュルシュル!
「ちゃ!」
途端に横目で見えていたヴェルの姿が視界から消える。
走っていた俺と翔陽はザザザザっと、急ブレーキをかけながら後ろを振り返った。
そこには二本の触腕に胴体を巻きつかれ物凄い速さで渦巻き残る海へと向かって砂浜を引きずられていくヴェルがいた。
ビーチを引っ張られながら両手で触腕を解こうと頑張っているが、二本で巻きついた触腕じゃ簡単には離してくれなさそうだ。
巨大な黒い烏賊は身体をさらに陸に上げている。
まるで、あいつらを絶対捕まえるぞ!という意志があるみたいや。
ズザザザザザザ!
ヴェルはどんどん引っ張られていく!
速い!
アナウンサーのお姉さんと翔陽を引っ張ってた時と速さが大違いや!
一人しか引っ張っていないからか、ヴェルに触腕が二本巻きついるからか。
とにかくめっちゃ速い!
このまま走っても追いつけなさそうや。
どうすれば。。
俺は何か助ける方法はないかとキョロキョロ周りを見渡す!
お!あれで海の上まで追いかけれるんっちゃう?
そこにはスキムボードを持った二人の男の子が呆気にとられ茫然と今この状況を見ていた。
俺は二人の男の子達の所に駆け寄り。
「ごめんちょっと貸して!絶対返すから!」
そういうとスキムボードを借りた。
「絶対ちゃんと返すから!」
二人分のスキムボードを持って走り出す!
男の子達は何も言えずにただ呆然と走って行く俺を目で追いかけてた。
「翔陽これで追いかけよ!」
翔陽にスキムボードを走りながら手渡す!
「お、おう!」
スキムボードを持って翔陽も走った!
15mくらい先でヴェルがずるずるとビーチを引っ張られてる。
ヴェル巻きついた触腕を外すのは諦めて、足と手で踏ん張り、頑張ってブレーキをかけてる。
そのおかげで引きずられていくスピードは遅くなってる。
でもヴェルの抵抗虚しく、真っ黒な巨大烏賊が海まで到達してしまった。
「ちゃ!!」
そこからまた急激に引っ張られるスピードが上がる!
海の中の方が引っ張る力が強いそうや。
「ダーーーーリン!翔陽ーーーー!!」
ヴェルが叫んでる。
もうヴェルは水上をバシャバシャ引っ張られてる。
遠浅の海だからまだ水中には引き込まれてへんけど、引き込まれるなんてそんなんすぐや。
俺達は猛ダッシュで波打ち際まで来た!
いい感じに波が引いてる。
ダダダダダダダダダ!
「いくぞ!翔陽!」
「おう!」
全力ダッシュの俺と翔陽は同時にスキムボードを海面の上へ投げて、スキムボードを滑らせた。
二人同じタイミングで海面を滑るボードの上に飛び乗った!
シパパパパパ!
真っ青な海の上を切るように進んで行く俺と翔陽!
最高のスピードでスキムボードは俺達を沖へと連れて行ってくれる!
引っ張られるヴェルとの距離がグングン詰まる!
俺達は前から来る波を膝のクッションで越えて追いかけていく。
徐々にスピードが落ちてきた。
全力ダッシュの惰性で進んで行くから、当然スピードは徐々に落ちる。。
けど、来てる!
ヴェルはもう目の前や!
「ヴェル!」
「ダーリン!!」
ヴェルが俺に向かって手を伸ばして来た!
俺も滑走するスキムボードの上から手を伸ばした。
「ヴェル!」
俺が右手、翔陽が左手を差し出してヴェルの手に触れた!
その瞬間!
ゴボン!
ヴェルが水の中に引き込まれた。
「な!!」
ヴェルの手に触れただけで捕まえる事は出来なかった。。
「ックッソ!!」
「ヴェル!!」
「行くぞ!」
ザブン!
翔陽が躊躇もなくスキムボードから飛び降り、頭から海に飛び込む。
ザブン!
慌てて俺もヴェルを追いかけて海に中に飛び込んだ!
ヴェルどこや!
海中を泳いで行く!
横に翔陽も泳いでる。
目を海の中でも開けてぼんやりした視野で状況を把握していく。
目の前にヴェルがいる!
足を引っ張られながらも手をこっちに伸ばしてる!
待て待て待て待て!
俺は必死に巨大烏賊を追いかけた!
ここで諦めたら確実にヴェルを失ってしまう!!
必死に海中に向けて泳ぎ潜って行く俺と翔陽!
なんでやろ?
深くなるにつれて次第に泳ぎが軽くなっている気がする!
奇怪しいな。
必死やからか、それとも最後の馬鹿力なんか。。
ぼやけていた視野もだんだんとハッキリ見えてきた。
あれ?
水の中なのになんではっきり見えるんや!?
急に海の中の音がなくなった。
そして同時に夜の様な暗闇に襲われた。
「な!」
俺達は不可思議な驚きで泳ぐ手を止めてしまった。
急に暗くなって周りもヴェルも見えへん。
どういう事ややねん!
「ヴェルはどこや??」
俺は目を凝らして辺りを見回した。
するとだんだん目が暗闇に慣れて、辺りが見えてきた。
「ここは。。?」
翔陽の呟きが聞こえる。
だんだん見えてきた視界で当たりを見回すと。。。
美しい星々がキラキラと光っている。
天野川や赤や青の星雲。
美しい世界や。。
「嘘やろ。。?」
そして気づいた。
ここはあのヴェルと初めて出会った世界や。
また俺はこの不思議な宇宙の様な世界に来てしまった。。