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こんなにも世界は素晴らしい!  作者: R0ssi
第二章 神秘の森
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生命の力って素晴らしい



 チチチチチっと子鳥達がさえずり。


 サワサワと木の葉が鳴る。


 泉の水が細波さざなみ立ち。


 暖かい光が俺達に差し込んで気持ちいい。


 。。。


 まるで森がありがとうと言っているようだ。。




 ーーーーーー エクロ・ナギ・オキクルミーーーーーー



 チャプチャプっと耳元で優しく水の音が聞こえる。


 体に触れる水が気持ち良い。。

 

 それに。。


 暖かい。。

 この暖かさは日差しだ。。


 サワサワと風が木々を撫でる音もする。


 チチチ、チチチチチっと鳥達優しく鳴いている。

 まるで早く目を開けなよって言っているようだ。。


 なんだか懐かしい、この感じ。。


 ポタンっと拙者の鼻頭に木々の葉っぱから一粒の水滴が落ちた。


 雨は止んだようだ。。


 鳥達に促されるように拙者はゆっくりと目を開いた。


 拙者は夢を見ておったのか?


 目を開けるとそこには雨の上がった後の木々の葉っぱが風に揺られサワサワとしておる。


 葉っぱから水滴がポツポツ、、と拙者の頬へと落ちた。


 さっきまでの記憶が夢だとしたら恐ろしい夢だった。。

 そして夢だとしたら本当に夢でよかったっと思う。。


 拙者はムクっと身体を起こした。。

 夢か現実かわからない。

 ぼんやりした頭で拙者は辺りを見渡した。。

 

 うっすらと霞んだ朝ぼらけの森の中で、生命の泉の辺りに柱のような光芒が何本も差し込んでいる。


 幻想的な朝の森に俺は息を呑んだ。


 長い間俺はこの森にいるのだが、、こんなに美しい朝の森は見た事がない。。



 チャプチャプ。


 ピィチチチ。。



 なんて神秘的な森の朝なのだ。。



 サワサワサワ。。



 毎日来ていたはずの生命の泉が、御神木が、また違う雰囲気を発している。。



 全ての草木、それに動物達が若く見える。。

 


「エック。。」

「ん、、?」

 ああ、隣にニケがいた。

 ゆっくりとニケも身体を起こす。

「エック、本当にすまなかった。」

「良いのだ、拙者こそすまなかった」


 拙者が今まで見てきた物は夢なんかではない。

 さっきまでの悪夢は現実で、その悪夢はもう去ったと俺はニケを見た瞬間実感できた。。


「エック、新たな命でいっぱいだ。。」

 拙者は息を漏らして今にも泣きそうなニケを見た。

「ニケが全てを生き返してくれたんだ」

 そっと手を俺は重ねた。


「これは私の力じゃない。力はほとんどは猫守びょうしゅ様の力だったし、私一人ではここまでできなかった。ビアとネロ、後あの四人の人間達のおかげだ。。」

「そうか。。」

 ニケはスッと俺の手を握ってくれた。


 。。。


 

 ドサリ。。


 拙者とニケは生命の泉に浮かぶ島の上でまた柔らかい苔のベッドの上に寝転んだ。。


 あたらめて御神木を見上げ、辺りの神々の森を見渡す。


 なんて美しくて生命の溢れる森だ。


 精霊のユンも木々の枝の上や苔の上、森中にいっぱいのユン達が森を輝かせている。


 この森はこんなにも美しく生き返ったのだな。。


 まるでニケの心のようだ。。



 。。。



 一本の光芒の光の下、スポットライトを浴びるように寝転ぶニケと拙者。。

 

 ビアとネロもそれぞれの光芒の中で伏せているのが見えた。


 光の柱のような光芒の中に人間達が二人ずつ合計四人。


「エック、何があったか聞かせてくれないか?」

 ニケがこを横へ倒し拙者を見つめた。

 ニケの不安そうな眼差し。。


「ああそうだな。」


「ニケがある夜から突然いなくなって、、拙者は死の呪いを抑えながらいつものように森と猫守びょうしゅ様を守っていたんだ」

「ああ、それはすまなかった。。」

「良いのだ、それで、日が進むにつれて拙者の中の死の呪いの力が大きくなってきた、さらにはおとなしかった猿達が狂ったようにどんどん奇怪おかしくなり始めたおった」

「ああ、あの黒い猿達か。。」

「そうだ、猿達の毛は黒く染まり毎日のように、この生命の泉を襲ってきおった。生命の泉を渡り御神木を傷つけようとしていたのだ。。」

「そうなのか。。」

「毎日毎日、黒い猿達は攻め込んできて、攻めてくる数もどんどん増えていった、そして俺の体から死の呪いも漏れ出し初め、辺りの生き物の命を奪い始めたのだ」

「なんてことだ。。」

「このままでは拙者が御神木を、神々の森を、殺してしまう、だから拙者は死の呪いが神々の森へと及ばないように死の谷へゆき、お主が帰って来るのを待つことにした、黒い猿達はネロが俺の代わりに戦ってこの生命の泉を守ってくれてのだ」


「そうか。。」


「それから何日も拙者は死の谷で水だけを飲んで生きながらえてた、もうだめだ体も限界だし死の呪いを抑えるのも限界。。そのギリギリのタイミングでニケ、お主が来たのだ」


「そこだ、そこが奇怪おかしい、私は死の呪いに飲み込まれる前のエックには会えてない」


「そう、なのか、、?」


 俺は過去の記憶を必死に思い出した。


「確かに、、、あれは奇怪しなニケだった、俺に俺でも信じられないような話をしてきた」

「一体どんな話だ?」

「拙者が世界をもう滅ぼしたと」

「何!?」

「そしてニケ、お主は黒い蛇を出し、拙者に悪夢を見せた」

「悪夢?」

「ああ、拙者の故郷の村が復興しておって、死んだと思っていた妹も元気に生きておったのだ」

「うむ」

「復興を遂げて笑顔で生活する俺の故郷を。。」


 。。。


「俺がまた滅ぼしてしまった」

 身体が震える。。

 妹の悲しみを思い出し、また拙者の目からまた涙が溢れた。

 思い出すだけで心の中が闇に染まりそうでござる。。


「そうか、あいつらエックになんてことを」

 ニケがガバッと俺を抱きしめてくれた。。

「ニケ。。」

 さっきとは違う涙が拙者の頬を流れた。。


 。。。


「ニケ、拙者はお前も殺していた。。」

 グググっとまた心の闇が負けじと溢れ出そうとしてくる。。


「エック。。」

 ニケがさらにぎゅっと拙者を抱きしめてくれた。

 拙者の中に暖かな光が流れ込む。。

「エック、それはただの夢だ。。私は生きているしエックの故郷をエックが滅ぼしたりはしていない。。」

「だが、拙者の死の呪いが暴走したら。。」


 。。。


 ニケが俺から離れた。

「エック、これを見て。。」

 そしてニケが手を俺の顔の前に持ってきた。

 ニケの手の上に黄緑色の光の珠が浮いていおる。。

「これは。。」

「この生命の珠、この珠があれば私はエックの希望になれる。。」

 ニケはフワッと生命の珠を放った。。

 すると光の奥からモゾモゾと森の精霊のユンが出てきた。。

「これは。。」

「ユン達、お願い」

 そういうとニケは拙者の座る足元に森の精霊のユン達をゆっくりと降ろした。

 拙者の座る周りの苔は死の呪いで命を吸われて枯れかけておる。

 きっとあの夢を思い出して拙者は少しだけ死の呪いを制御できなくなっておったのだ。。


 ユン達はピョコピョコ拙者の周りに集まりでフワッと霧散し光に変わりおった。

 黄緑色の光が俺とニケを包む。

 プチプチと植物が発芽する音が聞こえる。。

 拙者の周りの枯れた苔の下からまた新たな命が生まれていた。

「これは。。」

「この力が有るかぎりエックの見た悪夢のようなことにはならない」

 ニケが拙者を見て笑った。

「ニケ、、ありがとう」

 拙者はニケを抱きしめた。


 。。。


「エック。。」

 ニケも抱きしめてくれた。。


 。。。


「エックそれからどうなった?」

「ああ、それから拙者は絶望して真っ暗な中にいた。。そしてその中で新たな世界を創るのだと言われ、絶望している拙者はそれに同意した。その世界を創るという意味は世界を破滅に導いて再建するって物だった。」

「うん。。」

「そこから拙者はもうこの世界を滅ぼすことしか考えられなくなっていたのだ」

「そうなのか」

「頭の中に響く声に逆らうことが出来なくなっておった。。」


 。。。


「でもその暗闇の中からニケが救ってくれたのだ。。」


「ニケ、何度も言うが本当にありがとう」


「エック。。」


「私もエックに救われてるんだ、そして、いつの間にかいなくなってすまなかった。。」

「いいんだ、ニケが自らいなくなる訳がない、何かあったとわかっておった」

「ああ、ありがとう。あっちの世界も大変だったんだ。。」

「心配した、何があったかはまた聞こう、本当に無事で何よりだ。。」

 拙者はニケをぎゅっと抱きしめた。

「エック、帰ってきてくれて本当によかった。。」

 ニケは拙者の胸にグッと額を当て涙を流した。。

 拙者の目からも涙が止まらなかった。。



 拙者達は涙を流し再会に涙を流した。



 。。。



 そして、ドサリと拙者達二人は暖かな光の中、寝転び天を見上げた。。



 。。。



 チチチチチっと子鳥達がさえずり。


 サワサワと木の葉が鳴る。


 チュプチャプと泉の水が細波立ち。


 暖かい光が俺達に差し込んで。


 まるで森がありがとうと言っているようだ。。



 。。。



「本当によかった。。」




 そして疲れからか、拙者とニケはその場でまた眠ってしまった。。






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