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剣のスキル

 テポテポテポ


 前を歩く珍獣ちんじゅう……こと元天使のクロ


(なぜお前が先頭⁇)


「次を左だな、その先が封鎖ふうさされて行き止まりになっている」


 地図を広げて確認しながら『ラス』さんがオレに振り向く



「わかりました、そこに行ったらスキル発動させます」



 レベル28 という冒険者の ラスさん

 レベルを上げ、中級レベルのモンスターを倒せるようになって、その肉を売ってお金をかせいで、両親に楽させた上げたいらしい


『道案内』を発動させる


 地図に例のコボルトの足跡が記される

 それと自分たちの現在地



「あれ、これ何?」



 見ると、『危険!!』と書かれた足跡が出ている

 しかも動いて、どんどん近づいてくる


 ピー、チチチ、鳥が後方で飛び立ち

 ガザー、ドガドガー、葉がれ木が倒れドダドダと何かの足跡に合わせて地響じひびきが体を揺らす


 剣に手をかけてラスさんがオレの前に立つ

 


「少しさがって」



 低く身構える


(クロ!!……は猫じゃらし見つけてそっちに夢中)



「来る!!」



 ラスさんの声が低くなる


 

「ヴヴァーーー!!」



 口を大きく開け、息を荒げ、ついでに鼻息荒い何かが姿を現わす



「……そんな……」



 目の前の何かを見て、ラスさんの顔から血の気が引いていく



「ミノタウロス」



(あー、あれね、んー、つまり敵)


 カタカタと震える手で剣を構えるラスさんの唇が青から紫に変化していく


(チアノーゼ!!息は吸って!!)


 鼻息荒いミノタウロスが首を振りながらこちらを睨む


 クラウチングスタートの足場でも作るみたいに足で地面に穴を掘っている


(オレも武器!!)


 腰を探すが剣は水滴すいてきになって消えたままだったのを思い出す


 次の瞬間、足場が完成したのか

 勢いよくミノタウロスが怒号どごうと共にこちらに向かってくる、というかラスさん目掛けて


 背後からオレに捕まれて横に倒されたラスさんは

 足が震えて動かなくなっているようだ


 そのまま止まることなくクロがいた場所まで走るミノタウロスをけて、身軽に木の上にジャンプして回避かいひしている


(コスプレ魔法使い猫、なかなかやるな)


 なんて言っている場合ではなかった、また穴掘りを始めたミノタウロスがオレとその場に座り込むラスさんをロックオンした


(けん、ケン、剣ーーーー!)


 諦めとヤケクソの心の叫びが向かってくるミノタウロスをスロー再生にする


(そろそろ走馬灯そうまとう見て死ぬ直前になるのかな、転生したのに)



「氷のやいば!!!!」



 一瞬、は?ってなった

 だってオレから勝手に言葉が出たから


 次見たのは、ミノタウロスの体中を貫く無数の尖った氷

 氷柱つららのように鋭いそれらをつたうミノタウロスの黒褐色くろかっしょくの血



「ドゥガーーーーー!!……」



 最後の断末魔だんまつまか、見る見る目が白くなって、氷から地面に伝う血も少なくなると


 ドダーンと足音より凄い地響きを立てて自分の血を吸収した地面に倒れた



「…………は?」



 動かなくなったミノタウロスにゆっくり近づいて

 息をしていないのを確かめてみる



「死んでるっぽいね」



 苦笑いしてラスさんを見ると、震えも収まって立ち上がり



「凄い!!ミノタウロスを倒せるなんて、ユウヤ君何者⁇」



 ツノを貰っていいかと聞かれ、何に使うのかと思ったら、武器加工などに使えるらしく

 ザラドさんへのお土産が出来たとはしゃいでいる



「ナリアソード使えましたね、スキル何か増えたそうですね」



 木の上からシャシャシャーと滑り降りてきたクロが見上げてくる


(こいつなんで今頃降りてきた、助ける気ないかっただろ)


 ともあれ、ステータスを見てみる

『ナリアソード……気まぐれのため主人を選ぶ』って不安になる言葉が書いてあるが今は無視して


『氷のやいばが使えるようになりました』

 無数の氷が相手をつらぬきます


 シュールな説明の下に

水分補給すいぶんほきゅうが使えます』


 ん?



「水分補給!」



 って試しに言ってみたら、コップ一杯程度の水が現れて、目の前に浮いている


 下に手を置くと、チロロローと手のひらに溜まったそれを飲んでみる


 冷たい水が喉を通る、ゴクリと飲み込む

 普通に飲める、これは結構便利だ


 なんてそんな事をしているオレと、また猫じゃらしで遊ぶクロ、ツノをバックにしまうラスさんの横の林から音がする


 目があったのは、腰を抜かしたコボルトの姿


(そりゃそうだ、ミノタウロスからツノもぎ取ってる集団なんて出来れば出会いたくなかっただろう)


 四つんいで逃げ始め、そのうち立ち上がって二本足で走り出したその後ろ姿


(4本足の方が早いんじゃないか)



「あれって地図にあったコボルト?」

 ラスさんが指差す

「た……ぶんそうですね」

「ならダンジョンまで行くのかな?」



 顔を見合わせて一気に走り出す


(あ、ヤベー、クロ忘れてた、まぁいいかそのうち来るだろ)


 猫じゃらしで遊ぶコスプレ魔法使い猫は置き去りに、人間二人は逃げるコボルトを追いかけましたとさ




「ひー、あんなのに捕まったら毛皮剥けがわはがされて殺されるー!」



 と血相を変えてコボルトが急ぐのは、白龍ガンドュラーナが待つダンジョン最上階!!


 ――――――――――――――――――――――――――


「そろそろコボルトさん来てくれるかなぁ、お腹空いたなぁ」


(次回会わせてあげるからもう少し待っててガンドュラーナ!! もちのより)



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