相変わらずのネーミングセンス
モンスター未熟者で申し訳ございませぬ
コバルトを追いかけて見つけた目的地
「はぁはぁ、こ、ここだね、探していた、ダンジョン」
ラスさんが息も絶え絶えに指差す
「あー、コボルトはあそこですね」
見上げる視線の先に、岩場をよじ登
るSiri!
「仕方ないですね、地道に登りますか」
「はぁ、はぁ、仕方ない、ね、ところで、はぁ何で息切れ、して、ないの?」
言われてみればそうだ、結構長い距離本気で走っていたのに、息切れもしてなければ疲れもない
「割と体力あるみたいですね」
「あるみたい、ですねって、ふー、若さの違い?」
「まぁ、そんなところです、じゃあ行きましょう」
深くは突っ込まれない内に、呼吸の整ったラスさんと一緒にダンジョン内に突入した
「ラスさん、中級モンスターなら大丈夫ですか?」
「んー、種類にもよるかな」
大人が5人並んで歩いても余裕がある、やたら広い洞窟の道が奥へと続く
「そうですか、とりあえず行きましょう」
「そうだね、レベルを上げたいし」
ダンジョンに入ってレベルを上げる
ラスさんの目的はそれだけ、でもオレには別の目的ができてしまった
あんなに必死に逃げるコボルトが向かった先が気になる
(おそらく居るのはボスなんだろうけど)
暗がりの中に動く影を見つけ、にゅるんと出てきたのは
「スライムだ」
叫びながら目が輝いてしまう
(おー!!雑魚中の雑魚、ひたすらに倒されるキャラ!!)
しかし、何やらおかしい
やたらとオレを見ている、少しずつ近づいてきて、終いには足にスリスリされる
服越しでもヒヤリと冷たい
「なんか懐いてるけど、切っていいのかな?」
「確かにやたらフレンドリーですね」
スリスリ、スリスリー、和んでしまいそうだ
(あれ、手が冷たい)
手のひらに水滴が溢れて、消えていた剣が姿を現した
そんな剣を見てスライムがジャンプしだした
「え、何?これ欲しいの?」
剣をスライムに近づけると、剣の形がバッと変わり、水の狼が現れたかと思うとガバッと一口で飲み込んだ
「………は?」
「いまスライム食べたよね……」
「やっぱりそう見えましたよね」
「見えた見えた、こう、ガバーって」
両手を広げて狼の口の真似をしているラスさんの背後に、ウニウニとまたスライムが現れ、列を成している
「なんか、行列になってるけど……」
「そ、うですね、何故かはわかりませんが」
ぴょんぴょん跳ねるスライム達が次々と剣に喰われる
(なんかシュール)
全てのスライムを喰い尽くした剣はまた水滴になって消えた
「なんだったんだろね、今の」
「分かりませんが、なんか喜んでたんで居たからいいかな?ははっ」
もう笑ってごまかすしかない、あんなスリスリしてくれて、やや和み気味だったのが次々と剣に喰われるシュールな5分
忘れていた事を思い出す
「すみません、ラスさんのレベル上がらなかったですね」
ラスさんもハッとしてるところを見ると、今思い出した模様
いいよいいよと笑いながら先に進む
どんどん暗くなって、視界に限界がくる前に
「炎の道しるべ」
ラスさんが剣に向かって話しかけると、剣先に揺らめく炎が現れ
「火の力があるんだよこの剣、暖炉に火を付けるのにも使えるから、母さんに喜ばれてる」
なるほど、そういう親孝行もあるのかと妙に感心した
「ゔゔぉーーー」
先の暗闇から声がする、ラスさんが剣の炎を大きくして前に突き出す
臭い、なんとなく嗅ぎ覚えのある、子供の頃遠足で行った牧場で
足音が複数、たまに聞こえる『ゴフッ』と鼻を鳴らす音
(はい、これは例のアレですね、この臭いと鼻音)
「オーク!!」
(はい正解www 皆さんも、もちろん当たりましたよね)
「「「「ゔゔぁーーー」」」」
鎧を着て、棍棒持って、やたら臭い奴らが集団行動!!
「炎の演舞!!」
ラスさんが叫ぶとオークを囲むように炎が吹き上がる
逃げ場をなくしたオーク達がパニックにになりながらも輪から出ようとすると、肉が焼ける臭いが立ち込める
(あ、オークって豚肉扱いだから食べられるのか)
結構冷静に食欲を掻き立てられ
「トンカツ、生姜焼き、豚の角煮ーー!氷の刃ーーー!!!」
ほぼ料理名の後に攻撃してみた
「「「「グヴガァァァーーー!!」」」」
無数の氷が豚肉………オークに突き刺さり、虫の息になって炎の中に倒れると炎のを消したラスさんにトドメをさしてもらった
「なんか美味しいところだけもらって悪さかったね」
「いいえ、オレは肉目当てなんで!」
「あー、オークは美味しいね、でもこんなに持っては帰れないな」
「ですよね、売ったらいい値段になりそうなのに」
(くそー、トンカツで勝つぞーって言いたかった!!)
訳の分からない思考になっている時
「アサルトスライム!!!」
(はい来た、勝手に叫ぶ変なクセ)
しかしそんなオレの手には勝手に現れた剣が握られている
は?って感じになったららたまたま向いた剣先がオークにの死体に向いていた
「うーわ、何これ!!」
「え、え、オレにも分かりません!ラスさんどうすればいいですか?」
2人が見合って対応に困ったのは剣の先からポコポコ出てくる…スライム!!
さっき食べられたスライム達が後から後から飛び出しては、オークの方へ跳ねて行く
「スライム死んでなかったんですね」
「今気にするところそこ?」
ラスさんに突っ込まれている間に、更に数匹のスライムが剣から出て静かになった
オークの死体に集まるスライム達が、何やら不穏な動きをしている
ジュージュー音がして、何かが溶ける音と焦げた鍋のような臭いがしている
「鎧溶かしてる、しかも器用に肉は残してるよ!」
「うっわスライムそんな事できるんですね」
おぉーっと関心している男2人
いやいや一番はその後、沢山のスライム達が分け合うようにオークを飲み込みだした
ちゃんと部分ごとに分けるように、足、手、頭、胴体、1匹一部分ずつ
そして食べ終わったスライム達が、膨れた腹でまた戻ってくる
透けた腹に飲み込まれた肉が見える、解けずにそのままの姿で
「また列作ってるけど、これって」
「多分食べられるの待ってそうです…」
ぴょんぴょん跳ねるスライムがまた水の狼に喰われると
「まぁ、死んでないってわかったから、またそのうち出てくるのかな?」
「……今の何だったのかな、意味がわからないですね」
「ま、まぁねとりあえず先に進もうか」
そんなこんなで、何度かオークが出てきては、まだ肉を食べてないスライムが飛び出して、オークを食らって膨れたスライムが水の狼に喰われるのを繰り返してると、オークキングにまで当たってしまった
しかしなぜかオレの姿を見ると、ブルブル震え出し、助けてください!!と懇願している
洞窟で、ブヒブヒキング、人語を話す…字余り
今は俳句どころではなかった
「まだ酢豚の分がない!」
オークキング、その他の残りのオーク、ラスさんまでもがキョトン顔しているところに
「酢豚、餃子、小籠包ー!氷の刃ーーー!!」
「………よくわからないけど、無慈悲だね」
と苦笑しながらも、トドメを刺したラスさんひとたち一太刀の断末魔が洞窟中に轟き、やっと最上階
そう、コバルトが必死に登ったが先にいる白龍の鎮座する場所へとたどり着いた
『………ところでユウヤさんは魔王様なの?』
ガンドュラーナの言葉に、コボルトが壁の角に素早く移動し、ラスさんも数歩離れた
「わぉ、クロちゃん、このボリナの実美味しいよ」
「ほぉほぉ、これはなかなか美味ですね、中が赤くて果肉は甘酸っぱいです!」
「でしょ、これ大好きなんだぁー!」
あくまでもマイペースな一匹と一頭を放っておいてラスさんが苦悶の表情になっいる
「ユウヤ、さっきのガンドュラーナの言葉の意味を教えてくれ
「え、良いですよ」
クロの間違い死んだ事、その後この世界に転生した事、自称神に職業を選べと言われている事、それから職業はこの世界を見てから決めると言ってあることを伝えた
「………そうなのか、それでまだ職業は決めていないのかい?」
ラスさんの質問にコボルトまでがこちらを向く
「職業、職業はまだ未定です!!それにオレまだフリーターとして色々な仕事を経験してみたいので!」
「ねぇ、ねぇ、ユウヤさん、ガンドュラーナも一緒に行きたい!!」
「おー、それは良いですね、私も賛成です」
「クロちゃんもそう思う?ガンドュラーナ、クロちゃんともっと遊びたい!!」
(いや、フリーターは遊びではない、断じて)
「そうかい、魔王と聞いてビックリはしたが、何か悪い事を考えているわけでもないようだね」
緊張した表情をやっと緩めてもらえたようでホッとする
「まさかー、魔王と覇王の違いがわからないし、どっちが必要とされてるのか良く考えたいだけです」
そうかと納得してくれたラスさんが
「なら、街に戻ってザラドさんに今後の仕事の事を相談しよう、お土産もあるしね」
とバックをバシッと叩くと、中でミノタウロス のツノ同士がガツンとなる音がした
「なら、ガンドュラーナの背中にみんなで乗っていけば良いよ」
大きくつばさを広げた白龍が、飛べる事が嬉しいというようにバサッと一度翼を羽ばたかせると、砂煙が最上階に舞った
ゲホゲホとみんな咳き込む中、不安そうなコボルトがこちらを見ている
「あ、コボルトさんも行く?」
オレが何の気なしに聞いて、行くと答えたので
「じゃあ名前決めないとね、コボルトじゃ変でしょ!えーっと」
「え、え、ユウヤちょっと待って」
ラスさんが止めるのも聞かず
「ガンドュラーナのお父さんみたいなもんだから、ガ(ガンドュラーナ)オト(お父さん)『ガオト』ね!」
相変わらずのネーミングセンスに目を細めたコスプレ猫
やっちゃったーと頭を抱えているラスさん
かくして、2人と一匹と一頭を乗せ、白龍ガンドュラーナが街へ向けて、大空へと飛び立った