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8話 アオガミの魔女

修正中


 幼い少年の声に続いて、三人の少年たちも驚愕の声を上げると、いくらか後退しているのがわかった。


 しかし今の俺はそんな彼らの行動に向ける意識はほとんどなく、ただただ高速で頭を上下に振っている。


 それは驚きのあまりの行動で、そうやって確認していたのは――”彼女が降ってきた上空”と”今彼女が立っている場所”である。


 見た感じだと、子供たちが喧嘩をしているこの路地の建物も、左右共に四階ほどの高さがあるはず。


 ”ここは【異世界】だ”、と認識したとはいえ、そんな高さから人が落ちて――彼女からすれば降りて?――来れば、驚愕を抑えることなんかできない。


「あ、青ガミの魔女が、ちょ、直接来てくれるとはな」

「と、とはなー」

「うっわ、めんどー」


 リーダーらしき一番背の高い、炎の塊を携えた少年は焦りを隠すよう精一杯声を張るが、それに続く他の二人の声はやや小さい。


 そんな彼らの言葉は全く聞こえていない様子の金髪の少女は、二人の姉弟の方を向いて優しくなだめていた。


「大丈夫? どこも怪我とかしてない?」

「うん。私は大丈夫なんだけど....」

「あ、カイ。少し膝擦りむいてるじゃない」


 彼女はそう言って、手に持っていた食材などが見える袋から小さな箱を取り出した。

 その中に入っていた容器の蓋を開け、軟膏のようなものを少年の傷に塗り付けていく。


「よし! これでもう痛くないでしょ?」

「ほんとだ! ルナお姉ちゃんありがとう!」



(”回復魔法”....とかじゃないんだ......)



 意外と原始的な治療法に少しばかり拍子抜けしていると、彼女はようやく悪ガキ三人組の方に視線を向けた。

 そんな彼女の青い瞳には、少しばかりの怒りの感情が窺える。


「な、なんだよ? 魔法で人を傷つけるのはダ、ダメなんだぞ!?」

「だ、だぞ!」

「えー? だって....バレなきゃいいんでしょ?」

「「「!!!!」」」



(ちょ、ちょっと!?)



 碧眼に宿る怒気に気圧された少年は震え声で反論すると、それに対して彼女は先ほど彼自身が言っていた言葉をそのまま口にした。


 そして彼女は徐に片手を動かすと前にかざした。


 彼女の動作に慌てる少年たちと同様に焦っていた俺の脳裏には、昨日のあの光景(・・・・)がよぎっていた。


 ――――”無慈悲に切り落ちた熊の頭”の光景が....。



 さすがにいくらなんでも殺すのはダメだよ!? と心の中で叫ぶ俺を他所に。


 事は一瞬で片付いた。


 少年たちの手元にあった火や水の塊はなぜか急に乱れ始め、彼らを離れて金髪の少女の手の中へと移動したのだ。


魔素(・・)の出来が甘いね。これじゃ簡単に奪われちゃうよ?」



(? マ、ソ....?)



 聞き慣れない単語に俺が疑問を抱いていると、少年たちは怯えた様子で。


「く、くっそぉー。覚えてろよー!」

「てろよー」

「うっわ、うっわー」


 何もできなくなったのか、完全に戦意を喪失した彼らはありきたりな捨て台詞を残して、俺が隠れていた角とは反対側の道へと逃げていった。


「ありがとう。ルナ姉ちゃん」

「どういたしまして」

「?? あそこ、誰かいるー」

「え....?」


 去っていく少年たちの無事に安堵し、そのせいで気を抜いた俺の体は物陰から出てしまっていたらしい。

 男の子の言葉に反応した紺碧の瞳と、俺の黒目の視線が交わるのはすぐだった。 



「あ......」


「君....なんでこんなところにいるの?」


「あー、いやー..........。なんでだろう?」




「ルナ姉ちゃんありがとう! またね!」

「ルナお姉ちゃん、バイバイ!」


 この裏路地の少女が走ってきた方向はすぐ表通りだったらしく、俺たちはそこまで出てきていた。

 お礼を言って去っていく姉弟に、金の長い髪を揺らす彼女は軽く手を振って見送っている。

 人の壁で彼女らが見えなくなると、前にいた彼女は俺の方へと振り返って尋ねてきた。



「それで? なんであそこにいたの?」


「じ、実は....」



 俺は彼女の質問に対し、青果店での経緯から今に至るまでのことを正直に話した。



「そっかぁ。確かにちゃんとおじさんに紹介してなかったしね。ごめん」


「い、いやいや! 全然大丈夫!」



 謝られるほどのことではないと思った俺は、両手を振って気にしないでほしい旨を伝える。

 そんなことよりも――。



「それよりもさ。さっきのって――」


「あ! そろそろ君の宿探ししないとね! 早くしないと日も暮れちゃうし急ごー!」


「え? あ、う、うん....」


(今のは....誤魔化されたのか?)



 気がかりだったさっき少年たちが口にしていた”言葉”。

 それを聞こうとすると、なぜかはぐらかした彼女に少し疑問を抱いたのだが、それも一時のことだった。



「それにしてもほんと、どうやってそこまで魔力を抑えてる(・・・・・・・)の?」


「え....?」


「湖のときもそうだけど。そこまで小さいと普通に魔力感知したんじゃわからないんだよね」


「魔力......あるの? 俺にも?」


「?? 当たり前でしょ?」



 俺は彼女の言葉に返答するのも忘れて、広げた両の掌を無言で凝視した。



(俺にも....魔力があるのか........!?)



 確かに思い返してみれば、湖で最初に彼女と話した時もそんなことを言っていた気がする。


 ただ少し気になるのは、それはどういった経緯で身に宿ったのかということだ。


 元の世界ではまず、そんなものは発見されていないはず。

 あれだけ科学技術が進歩した世界で、これだけ便利そうなものを発見して公表されないはずがない。


 となると――――。



(俺が気を失ってる間に......”この世界の神様が力を与えてくれた”....とか? ........まさかね)




 少しラノベっぽい設定を考えているうちに、先ほどの裏路地からほんの数分で辿り着いたのは――。

 どう見ても宿泊する施設ではなさそうな店。

 まず立地自体、知る人ぞ知るみたいな場所にあって、外見の雰囲気も酒場感が半端じゃない。


 そんなお店の名前は――。


「ここ、”山賊の館”って言うお店なんだけど」


 うん。絶対に名前からしてゴツイ男共がわんさかいそうだ。


 そんなことを思っていると、先行く彼女は「こんにちはー」と元気よく挨拶をしながら扉を開けて中へと入っていく。


 それに続く俺は先ほど思った”ごつい男”の例えを想像していた。

 今日出会ったばかりで失礼かもしれないけど、”この村の入り口にいた彼”や、”青果店のあれ”なんかがいても不思議じゃ――。



「あれ? ボルおじさん?」


(っ!?)



 まさか”例え”として予想中のうちの一人が、現在進行形でいると思わなかった俺は体を跳ねさせた。



「よう!」


「もう仕事終わったの?」


「今日はもう遅いからな! たぶんもう人は来ないだろうさ!」


「来ないって....。私がまだ出ていくんだけど......」


「お? あー! そうかぁ。すまん! 今日も上から(・・・)出てってくれ」


「はぁー。もー、しょうがないなー」



 びっくりしていた俺を気にする様子もなく、彼女たちはまた勝手に会話を弾ませていた。


 話の内容的にも完全に職務放棄している彼は、悪びれたように合掌した両手を彼女に向けている。

 「この通り」と言わんばかりのそんな姿を見た彼女は、いつものことだから仕方ないなというような口調で、”謎の提案”を承諾していた。



上から(・・・)....?)



 俺は頭を左右に振って、一瞬でも脳裏によぎった予想を瞬時に消し飛ばした。


 そんな彼らの話はまた長くなるだろうなと思った俺は、店内の様子を見回し始めた。


 思った以上に広い店内にはカウンターと多くのテーブルが並べられている。

 どうやら予想通り、ここは酒場らしく、店の奥やカウンターの後ろに見える多くの瓶や樽の酒が、そのことの証明だろう。


 内装も俺が想像していた通り、木材によって構成されている壁や床は材質のせいか、または暗めの塗装がされているのか。

 程よい薄暗さで、酒場らしい雰囲気を作っていた。


 天井にも昔の映画などで見たことのある白い五枚羽のやつがゆっくりと回転していて、いくつかあるそれらの間には、鉄製らしき小さな檻が紐で吊るされている。

 その中で灯る炎とそれらを反射している白い羽だけが、この店内の明かりらしい。


 そうして酒場の様子を観察していると、意外とすぐに話は本題へと移った。



「それで、ルナちゃんたちは何しに来たんだ?」


「あ! えーと、実は....。彼、ハルトくんをここで預かってもらえないか、マスターに頼みたくて来たんだけど....」


「あー、そいつはなぁ....。無理だと思うぜ? なぁマスター?」


「あ゛ーそうじゃなぁ。ちと厳しいかのぉ」


(!? 今どっから声が....!?)



 首を振って店内を見回しても、ここには俺と金髪の少女、髭男の三人しか見当たらない。


 俺が困惑していると、再び聞こえてきた声はカウンターの方からのようで――。



「よっこらしょっと!」


「うお!?」



 視線を向けるやいなや現れた陰に、俺は声を上げて驚いた。



「マスター。厳しいって....どうして?」



 彼女がなんの戸惑いもなく話しかけたそのマスターと呼ばれる人物は、少年のような背丈に老人のような風貌の男....の子?

 


「最近、あぁのクソ村長がまぁた税を増やしやがってのぉ。”滞在料”とか言ったかぁ。この村に住んどるだけで、年に100ゴルドもよこせっちゅうんじゃ」


「ひゃ、100ゴルド!?」



 この世界の通貨の基準をまだ知らない俺にとって、その”100ゴルド”がどれ程のものなのかわからないため、彼女の驚愕に同じることはできなかった。


 しかしその代わりに俺が驚き続けているのは、この酒場のマスターだ。


 見た目は少年に髭を足したようなものなのに、一体どこから声を出しているのか。

 今日出会った三人の男たちの中でも一番貫禄のある声で、話し方ももちろん、生きてきた年月の長さを感じさせる。


 もういっそのこと「他の誰かが喋ってましたー。ドッキリでしたー」と言われた方が納得できるほどに。



(というか....。この村に来てここまで出会ったのが、オヤジたちばっかりなんだけど......)



 『ハーレム物なんて期待していない』

 『そんなことが起きるのはラノベの中だけだ』


 そう心に言い聞かせていたはずが、この村の女性たちの容姿を目の当たりにした今だと、物凄く簡単に可愛い子と出会えるのではと思えてしまっていた。


 確率的にもそう難しいことじゃないはずなのに、これは......。



(さすがに異世界の神様を恨むぞ......)



 俺は心の中でそう呟くと同時に、うな垂れた。

 そんな俺の様子には誰も気付くことなく、彼らの話は進んでいく。



「嬢ちゃんも気を付けた方がえぇ。ここに住んどるわけじゃねぇが、それでなくても嬢ちゃんはあの村長に目ぇ付けられて(・・・・・・・)んだからのぉ」


「うん...。気を付けるよ........」


目を付けられてる(・・・・・・・・)....?)



 それは”嫁にしようと躍起になっている”とかそういう類のものか。

 それとも――。



「ところで、預かってほしいなんて。一体なぁにを拾って来たん――」


「あ、マスターにはまだ紹介してなかったね。彼はハルトくんていうんだけど――ってあれ? マスター?」



 彼女は俺を紹介しようとして再びマスターの方を向いた時、彼の異変に気付いた。

 来た時よりも一層顔を赤く染めている髭男はマスターが現れてから全く会話に参加せず酒を飲みまくっていたが、そんな彼でもマスターの様子を感じ取れるほど。


 マスターの顔には動揺の色が濃く滲んでいた。


 マスターの言葉が途切れたのは彼女の声が重なったからではない。

 俺はまじまじと彼を観察していたからわかる。

 彼の言葉を止めた原因は――。


 俺だ。


 俺を見た瞬間、マスターの目は見開かれた。


 何がどうしたのか皆目見当もつかない少女と門番は、互いに顔を見合わせ首を傾げている。



「お、お前さん......」



 するとようやく口を開いたマスターは掠れた声を漏らしながら、震える右手をゆっくりと上げて人差し指を俺に向けた。



「その髪と目の色は....生まれつき....か?」


「え? ええ。まぁ、一応そうですね....」


「そうか........」



 それを最後に、マスターは喋らなくなってしまった。

 何やら考え事でもしているのか、俯いて腕を組んで固まっている。


 そんな状況に、またも少女と髭男は互いに首を傾げることしかできない様子だ。



(”黒い”ってそんなに珍しいのか....? 確かにこの村の人で、茶色い感じで少し暗めな人はいたけど、”黒”って感じの人はいなかったような......?)


「うむ......。わかった」



 マスターの動揺の原因らしい髪と目のことを考えていると、時間が停止したように硬直していたマスターは小さな声で呟いた。



「え? それはハルトくんを預かってくれるってこと?」


「ん? あ゛ーそうじゃない。すまんが嬢ちゃん、もう少しだけ彼を泊めてあげてはくれんかのぉ」


「え? うん。それは全然いいんだけど....」


「わしも少しばかりだが金を出す。彼の身の回りの物を揃えてやりなさい」




 そうしてなぜか、一人暮らしの女の子との俺の共同生活は続くことになった。


 ”山賊の館”を後にし、追加で俺の衣服や生活品などを買い、今は彼女の家へと続く帰路を歩いている。



「......うっ」


「まーだ酔ってるの? だらしないなー」


「いや、だってさ......」



 酒場での”謎の提案”を覚えているだろうか。

 ”上から帰ってくれ”という髭男との約束は、俺が一瞬でも思い浮かべた通りの行動だった。


 買い物を終えて、人気のない壁際に着いた俺たちは彼女の「行くよ」という一言で浮上した。

 急に浮いたことに俺は少し焦りもしたが、それは普段遊んでいるゲームに似た感覚ですぐに慣れた。


 しかし、想像以上の高さの外壁の上に一度足を付けると、すぐさまそこから一気に降りた――俺からしたら落ちた――のだ。


 「少し距離を稼ぎたい」という彼女の言葉通り、やや斜めに下降する俺たちの速度はどんなものだったか。

 完全に物理現象を無視した落下で降り立ったのは、俺が今朝転んだ水溜まりのやや近く。


 一体何が起きたのか考察する暇もなく俺は、目を回していた。



 そこから無理やり叩き起こされて歩き始め、ようやく少し落ち着いてきたところだった。



「あーあ。せっかく村に行ったのに、なんかあんまり意味なかったね」


「いやーそんなことないよ。異世界の村ってすっごい興奮したし――」


「? イセカイ?」


「そう、いせか――あ! いや! いっ、いい世界! そう! いやーこの辺はいい世界! というか、いい雰囲気のところだなーって!」


「そう? 別にどこもこんな感じじゃないの?」



 酔っているせいか、頭が上手く働かない俺は完全な失言を漏らしていた。

 動揺が頂点に達し、加速する鼓動は再び気持ち悪さを呼び覚ます。


 嗚咽を何度か我慢しながら、なんとかあの”奇妙な小屋”に辿り着くことができた俺たちは、昨日よりは少し遅めの夕食に取り掛かった。


 と言っても俺は気持ち悪さのせいでベッドでダウンしていただけだけど....。



「あー、しんどい....うぅ」



 しかしそれが、俺の記憶を呼び覚ます時間を作ってしまったんだと思う。



「それにしても......今日は色々あったよなぁ」



 予想とは違い過ぎた村の様子。

 まだ知らないことが多い、この世界の魔法の仕組み。 

 加えてルナ(あの子)の謎の人脈事情。


 どうしてゴツイ男ばっかりなんだよ......。



「あ、そう言えば幼い姉弟もいたか。あの時はほんと冷や冷やし――」



 そのことを思い出した時、俺の脳裏にはある”言葉”が蘇った。


 『青ガミの魔女』


 あの時喧嘩していた少年たちが口にしていた言葉。

 その前の青果店へ向かう道中でも、主婦らしき人が呟いていたのもおそらくこの言葉だろう。



「青ガミ....。”青神”?」



 彼女の瞳とあの美貌からそう呼ばれているとか?

 けどそれだと、あの目や態度はなんだろう?


 あれは明らかに――人を蔑む眼差しだ。



「じゃあ、青......”髪”? いや、青くないし――」



 その現象は声に出したからか。

 急に俺の脳はそれ(・・)に関連するすべての記憶を一つに繋げた。


 ――今朝感じた『違和感』


 ――村人が言う『青ガミの魔女』



 俺は酔いのことなど忘れ、勢いよく起き上がると扉を開けて、今も調理している彼女の元へと向かった。



「あれ? もういいの? なら昨日みたいにお皿を――」


「あ!! あのさ......」


「な、何? どうしたの大きな声出して?」



 俺の行動に彼女はやや戸惑っている。 

 具合が悪いと()せっていた人が急に現れて大声を出せば当然だ。


 しかしここまできて引き返せない。

 俺は握った拳に少し力を入れて、生唾を呑んだ。



「....”青ガミの魔女”」


「――!?」


「今日すれ違った何人かの人達も、そして裏路地にいた三人の子供たちもそう言ってたよね?」



 そんな俺の問いに彼女は、片腕を抑えて無言で俯いているだけだった。



「今朝からなんか違和感があったんだ......。でもそれが何なのか....今さっきわかったよ」



 そう続けた言葉を聞いて、彼女は俯いていた顔を上げて俺と視線を合わせた。


 その動きで少し揺らめいた彼女の金の髪は、昨日同様に部屋の灯りで煌めいている。

 さらに両の目に携えた綺麗な紺碧の瞳には、微かに自分の姿が移っているのがわかった。



「君は髪が......青く(・・)なるの?」


「........うん」



 俺の最後の質問に、瞳を閉じて数秒の静寂を作ってから彼女は返事をくれた。


 その表情は――とても悲しそうだ。



「ごめんね....ずっと黙ってて。やっぱり明日、マスターに頼んで向こうに住めないか聞いて――」


「待って待って!! 違うんだよ!」


「え? 違うって....」


「別にここから出ていきたいとかじゃなくてさ。きっと何か事情があるんでしょ? 俺だって事情があって話せてないことだってあるんだし。お互い様だよ」


「え......?」



 俺の言葉に、なぜか彼女は動揺しているようだった。



「き、君は....怖くないの?」


「え? 何が?」


「何がって....髪の色が変わるんだよ? それって普通じゃないし....」


「まぁそうなのかもしれないけど....。んー........」



 腕を組んで唸った後、俺はただただ思ったことを伝えた。



「別に人格が変わるってわけでもないんでしょ?」


「そ、それはそうだけどさ......」


「?? なら特に問題ないんじゃない?」


(ていうか....もう俺からしたらこの世界にいる、それこそ今日のあの悪ガキたちだって普通じゃないからな......)



 続く返事もただ感じたことを言ったまでに過ぎない。


 そんな俺の言葉は、彼女にとっては予想外のものだったらしく、彼女の大きな瞳はより一層開かれていた。



「........わかった。君に話すよ」


「え......?」


「君なら大丈夫そうだしね。あ、誰にも言っちゃダメだからね?」


「も、もちろん! と、というか俺はその話を聞いても話す相手がいないから......。情報が洩れるなんてことは決してないです」



 そう言うと彼女はまた瞳を大きくして盛大に笑った。

 それにつられて俺も笑ってしまう。


 「せっかく料理を作ったんだから」ということで、俺たちは先に食事を済ませることに。

 昨晩と同じくらい美味のそれらは、歩き回って疲れた体を癒してくれた。


 片付けを終え、また水だけを互いの前に置いてあった。



「君は....おじいちゃんは好きだった?」


「え....?」



 急に飛んできたのは謎の質問だった。

 母や父でもなくなぜに祖父なのか、少しの疑問を抱きながら俺は答える。



「う、うん。俺はじいちゃんっ子だったからね。......なんで?」


「いや、昨日の食事の時”じいちゃん”って言ってたからさ」


「え? 言ってたっけ?」


「言ってたよー。まーそれはいいんだけどね......」



 彼女の表情はまた少し暗くなった。



「私にもね。おじいちゃんがいたの」



 そこから俺は、彼女の過去を知ることになる。



修正中

読んでいただきありがとうございます。


これからもよろしくお願いします!


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