13話 盗賊の少年
※ハルト視点ではありません
薄暗い洞窟の中で、規則的に反響する金属音。
この音が嫌いだ。
毎日毎日、同じことの繰り返し。
もううんざりしている。
この音を発生させている一人でもある俺はそんなことを考えていると、後ろを通過しようとした男の子が大きな石に躓き転んでしまった。
運搬していた石をばら撒き、そこら中に飛散させる。
すぐに男がやってくると、そいつは無造作に倒れた子供を蹴り始めた。
「おい! この鈍間が! 誰のおかげで飯を食べられてると思ってんだ!! あー?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
そう謝りながら蹴られ続ける男の子を、周りにいる者は誰も助けようとしない。
そうできたらどれだけ利口か......。
俺は透かさず止めに入った。
「もうやめろよ! まだ小さくて力もないんだ、転ぶのは当たり前だろ!」
「うるせー! お前は黙ってろ!!」
男の体を押さえつけ、その行為を中断させる。
それを振り払うように繰り出された裏拳が俺の左頬に命中し、その衝撃で思い切り壁に打ち付けられた体は、鈍い音を立て地面に横たわった。
「そこまで言うならアルセ。お前がこいつの分まで働け。今日の分が終わらなかったら、お前ら全員飯抜きだからな!」
そう言い残し男は奥の方に消えていく。
俺はすぐに起き上がると、さっきまで蹴られていた男の子の傍に近づいた。
「大丈夫か? 少し休んでろ?」
「う、うん....ごめんね、アルセ兄ちゃん......」
泣きながらそう呟く男の子を見つめ、俺は唇を噛みしめる。
俺の名前はアルセ・ハリーフ。
ある盗賊団でこき使われている子供の一人だ。
依然、道で捨てられているところをこの盗賊団の首領に助けられ、ここで働かせてもらっている......ということになっている。
俺が拾ってもらったのは、まだ幼い赤子だったらしい。
拾われた経緯を聞かされたのは、7歳くらいの時。
話によると......。
嵐にも近い荒れた雨が降る夜。
土砂降りの中、山道を移動していた首領はふと小さな箱が見えたという。
気になった首領は近づいてみると、その箱の中には小さな赤ん坊が入っていた。
それが俺だというのだ........。
名前に関しては箱の中に紙が入っていたが、誕生日が分からなかったため、”拾った日”を誕生日として祝てくれていた。
そう聞かされて約3年。
10歳の誕生日。
――――――――――――――――――――
まだあまり子供がおらず、数人しかいない同じくらいの年齢の子と仲良く食事を囲んでいた。
俺は他の子供たちからプレゼントとしてもらった絵を首領に見てもらいたいと思い、こっそりと部屋を抜け出し、大人たちが集まる大部屋へと向かう。
大人たちも知らない、子供くらいの大きさしか通れない秘密の通路を使い、大部屋へと辿り着くと、いつものように明かりが付いているのを視界に捉えた。
俺は走って部屋の入り口に差し掛かった時だ、急に大きな怒鳴り声が聞こえてくる。
「ふざけんな!! 今月の儲けはこれっぽっちかよ!!!!」
そう怒鳴り散らしているのは、首領の右腕であるジャスだ。
俺は咄嗟に入り口の脇に隠れる。
どうやら大部屋で数人の大人たちで会議でもしているようで、続いて首領の声が聞こえてきた。
「まぁ落ち着け....。今までのはリスクを抑えた商売だったんだ。このくらいでも仕方ないさ」
「でもよー、これじゃ武器はおろか食料だって買えないぜ?」
「ガキ共の分を減らせ。碌に働きもせず飯だけ食ってるゴミだ。食事が減っても文句は言えまい....」
(え? 今、なんて......)
”ガキ共”や”ゴミ”と聞こえたのは俺の聞き間違いだろうか....。
彼らはその当時、盗賊ではなく”各地で親を亡くした子供や、捨てられてしまった子供などを養う施設を運営している団体”と聞かされていた。
時折、首領の手伝いとして村々の施設へ手伝いに行ったことがあるが、首領自ら子供たちにお菓子や食料などを手渡し、明るく振舞っていたのだ。
そんな首領からさっきのような言葉が出てくるとは、想像もつかなかったのである。
驚いている俺を他所に話は進んでいく。
「今月のガキ共の販売数に対して捕獲数が少なすぎる。このままじゃいずれ”商品”がなくなっちまうよ」
(販売? 商品? 何を....言ってるんだ......)
俺の頭では追いつかない。
目を見開き、驚愕することばかり....。
「大丈夫だ。これからは”後ろ盾”がある....。もっともっと稼げるぞ.......」
そう呟いた後、首領とジャスは二人で笑いあう。
そして、次の話の内容で俺は自分の真実を知ることになったのだ......。
「そういやー、10年前くらいに奪った”あいつ”。今日が”その日”じゃなかったか?」
「あーそう言えばそうだな....。くっくっく。あいつはほんとにいい商品だからなぁ。丁寧に扱わないと....」
(今日? って俺の誕生日じゃ....。”あいつ”ってもしかして......)
酔いしれたように醜悪な表情を浮かべている首領。
「あいつもあいつの親も運がないぜ。まさか山道であんな上物を手にできるなんてな!」
「「はっはっはっは!!!!」」
それから彼らは酔いが回ったのか、昔捕まえたという”珍しい商品”のことをべらべらと皆に話し始めた。
10年前の今日。
嵐のように激しい雨など降っていない、涼やかな夜。
人攫いに失敗し、何の手柄もないまま帰宅していた首領は、ふと一台の馬車が前から向かって来るのを視界に捉えた。
それは若い夫婦で、多くの荷物を積んでいたそうだ。
首領は「道に迷った」と言って馬車に乗り込み、後ろから刃物で殺害。
この時点では俺の存在には気付いていなかったらしい。
そこに至るまでに「なぜこんな時間に山道にいる?」と尋ねたという。
どうやら母親の方があの『アクア』の血統者だというのだ。
父親の方はなんでもないただの人であったのだが、一族以外の者との結婚を許されず、二人で駆け落ちしている最中だったようだ。
”『セイヴィア』の体を欲しい”という裏の世界では有名な組織があるらしく、”死体でも構わない”と知っていた首領は躊躇なく殺したのだ。
そして嬉しい誤算として、後ろの座っていた席の横に俺が入っていた籠があったのだという......。
『セイヴィア』に関する知識は全くなくそれが何なのかは分からなかったが、俺がその”珍しい商品”であることはすぐに理解できた。
俺は扉の横で膝を抱えながら蹲り、唇を噛みしめ泣くことしかできない。
今までずっと騙されて生きていた悔しさ。
両親を殺された事への怒り。
そんな思いが込み上げてくる。
ややあって、会議はお開きになり大人たちが次々に出てきた。
俺は見つからないようにさらに体を縮め身を隠す。
すると一人の男が足元にある何かに気が付く。
「なんだぁ、この紙?」
俺は息を呑んだ。
それはさっきまで俺の手の中にあったはずの”プレゼントされた絵”だったのだ。
(やばい! バレる....殺される!!)
いつの間に手から落ちたのかわからない。
目を強く瞑り祈った。
どうか見つからないように....と。
遅れて出てきた首領はそれに目をやるとこう言い残した。
「薄汚い絵だな....。どうせガキ共の忘れものだろ。燃やしておけ」
そのまま紙は松明に入れられ、燃えカスへと変わる。
誰もいなくなった大部屋の横で俺は、口から血を流すほどさらに強く唇を噛みしめた........。
――――――――――――――――――――
そして話は現在に戻る。
俺はその時と同様に唇を噛みしめている。
血が出るほどではないが、それでも奴らのこの子に対する扱いは我慢できない。
そうしていると、周りにいた子供たちが集まってきた。
「おいアルセ。どうすんだよ。この子抜きで今日の分間に合うのか?」
「あいつも言ってたろ? 俺が二人分やるから大丈夫だ」
「そうは言っても、いつも誰かが倒れる度にお前が肩代わりしてるんだ。ここんとこはほぼ毎日....。今度はお前が倒れちまうよ....」
その言葉に周囲のみんなの視線が俺に集まる。
さっきまで蹴られていた子も俺のことが心配のようだ。
俺はしゃがんでその子の頭に優しく手を置く。
「大丈夫さ! 俺はみんなより魔力量も多いし、操作性だって俺が断トツだろ? こういう時こそ年長者が頑張らなくちゃな!」
笑顔でそう言い切った俺は、すでに泣き止んでいた男の子の頭をくしゃくしゃにしてやった。
俺を含めみんなそれぞれの作業場に戻る。
男の子は運搬するために集めていた場所の近くに隠れさせた。
あそこは陰になっていて見つかりにくい。
他の奴が来て、「働け!」と怒られることもないだろう。
俺たちはそれから2時間程、発掘だけを行った。
一切運んでないのだから、溜まり場にはとんでもない量の石が積み上げられている。
俺は徐に岩の山の前に進み出てこう言った。
「みんな、危ないからちゃんと離れててくれよ?」
それに返事をしてくれたみんなから、「うん!」「わかった!」などのまだ声変わりのしていない幼い子供たちの声が聞こえてくる。
さっき俺に話しかけてきたのは同期、というかここでほぼ同じ時間を過ごしてきた仲間、サイ。
サイは俺とは違い捨て子だった為、名前しか持っていないのだ。
あの”10歳の誕生日”から今日まで、共に過ごしてきたのは..........彼だけである。
サイに目を向けると何も言わずただ頷くだけで、俺もそれに応えるように首を縦に振る。
俺は集中するために目を閉じ、両手を瓦礫の山に向けた。
するとすぐに現象は起こり、石一つ一つが浮き上がる。
あとはそれを運搬所まで移動させるだけだ。
ものの10分で運搬を済ませた俺に、みんなが駆け寄ってくる。
「アルセ兄ちゃんの魔法はほんと凄いね!」
「私もいつかあんな風に魔法が使えるといいなー」
「じゃあまずは『魔力制御』ができるようにならないとな。ちゃんと毎日欠かさずやってるか?」
彼らの反応に俺がそう答えると「もちろん!」と言う子もいれば、「......」と無言で横を見る子もいる。
そんなみんなが俺は大好きだ。
今日の分をきっちりと終えたことを先ほど蹴りに来た男に告げに行く。
「今日の分、終わりました」
「ふん! ......よし、じゃあもうあがっていいぞ。飯を食ったら早く寝ろ。明日、また今日みたいなことがあったら容赦しないからな!」
俺が手渡そうとした報告書を奪い取ると、目を上下させながら確認する。
少しの沈黙の後、そう言って俺の胸辺りに報告書を叩きつけてきた。
若干鈍い痛みはあるがそこまで気にならない。
いつものように報告書をしまうと、部屋へと歩みを進めた。
薄暗い小さな螺旋階段を上がり、部屋がある階の入り口に差し掛かった時、聞き慣れた声が耳に入ってくる。
「アルセ、ほら」
俺は顔を上げると何かが飛んでくるのが見えた。
慌ててそれを捕まえると、少し冷えた瓶である。
「今日の飲み物、珍しく果実水だったぞ」
「へーほんと、珍しいな」
声の主はサイである。
どうやら俺のことを待ってくれていたらしい。
俺とサイは同室だったので、そのまま二人で食料をもらい部屋に戻った。
食事を始めてすぐに彼の口が開かれる。
「アルセ、お前ほんと無茶すんなよ? 今日、殴られたとことか大丈夫か?」
「え? あーだいおうう。おえあちゃんお、まよくえふえいえあああ」
「お、おう....お前ちゃんと食べ切ってから喋れよ......」
「......」
俺はそう言われやや沈黙した後、急いで食事を済ませた。
それはもう音速の如く......。
「ぷっ....あははは!! お前ちゃんと噛んだのかよ、それ! あー、心配した俺が馬鹿みたいだ。アルセらしいな」
「だろ?」
俺はにこやかな笑顔でそう言うと、二人して笑った。
それからサイも食事を済ませ片づけも終わらせた後、今度は先ほどとは打って変わって真剣な話を始める。
「最近のあいつら、なんか様子がおかしくないか?」
そう口火を切ったのはサイだ。
「ああ、”7年前”に失敗してから大分荒れてたが、ここ最近はかなり機嫌がいい。今日のあれももう少し前なら、もっとひどいことになってたはずだ....」
そう7年前、ちょうど俺の”10歳の誕生日”の日から半年ほど経った頃。
――――――――――――――――――――
この盗賊団の主な仕事は”子供の人身売買”だった。
7年前は俺の両親を殺した時よりも規制が厳しく、どうしても金の集まりが良くなかったらしい。
”リスクが低く、金も低い仕事”と言うことで、次に手を出したのが”リスクが高いが、金がかなり高い仕事”だった。
例の”『セイヴィア』の体が欲しいという組織”から直々に受けた依頼だったようで、報酬は今までの比ではないようだ。
今までは”捨て子や、人気のないところにいた家族から奪う”などの行為だったが、それではどうしても”商品”が集まらないということで、村を襲うことにした。
手始めにとても小さな村を襲い、多くの子供や女性を捕らえては売りさばき、金の集まり方は想像を超えるものだったらしい。
その半年ほどは本当にいい暮らしができた。
何も知らない子供たちは嬉しそうにはしゃぎ、みんなとても楽しそうだった....。
俺は自分の誕生日に盗み聞ぎしたことを同い年の仲間たちにだけ打ち明け、事情を知っている彼らだけはそれほど喜んではいない。
それから間もなくして、次の段階に入った。
今までは小さな村ばかり狙っていたが、次に標的にしたのは南東の端にあるそこそこ大きい村。
高い塀に囲まれているが、それさえ何とかすれば潰すのは簡単だったらしい。
右腕であるジャスを筆頭に腕利きのメンバーが数人、さらに”後ろ盾”からも1人助っ人を引き連れて”仕入れ”に向かった。
しかし、結果は散々たるものに......。
予想を超える”高魔力且つ、高魔法を使う者”がいたようで敢え無く撤退。
盗賊の団員は3人死亡、ジャスは片腕を失った。
その時の様子は、半年前と同じように盗み聞きしていたからわかる。
「ふざけんなよ!! あのクソじじい!!!! あいつがいなかったら完璧だったのに....俺の腕!! 俺の腕ぇぇ!!!!!!」
腕を失った怒りなどを椅子にぶつけ蹴り飛ばし、狂ったように叫んでいる。
さらに感情の高ぶりと同様に魔力を上昇させ周囲に放ち、周りの団員はそれを堪えていた。
そんなことは微塵も感じていないように、前かがみになりながら平然と座っている首領は、頭をゆっくりと持ち上げると......。
「ジャス....少し黙れ」
小さいが凶器にも近い鋭い声が部屋に広がる。
それと同時に放たれる魔力は禍々しさを帯びていた。
普通の団員たちはもう立つことさえできず、皆倒れたり跪いたりしている。
言われた当人のジャスも「あ、ああ。すまない....」とその一言で静かになるしかなかった。
それを壁越しではあるが間近で聞いていた俺は、背筋を凍らせ動くことすらできない........。
その失敗は”後ろ盾”にも伝わったようだが、どうしてか何もペナルティーはなく代わりに今までいた南東とは反対の北西の地域に行くことになった。
最初は「計画を邪魔した”じじい”を殺したい」とジャスが反対していたのだが、「これ以上失敗すれば”奴ら”からどんな罰が下るかわからん」と言う首領の言葉に逆らえず、北西へ向かうことに。
その旅路は本当に酷い生活だった。
一部の子供たちの扱いは今までとはがらりと変わり、多くの雑用的職務が与えられ、不出来な者には食事抜きなどの罰があった。
一部とは、”魔力量の低い者”や”魔法が不出来な者”のことである。
もちろん俺は最初、”特別扱い”だったのだが、品定めの際に確認したところ、『セイヴィア』に見られるはずの”変化”が起きなかったのだ。
さらに加えると、俺は”ある種類”の魔法が使えなかったのである。
それを知った首領はすぐに俺を”ゴミ”に分別したのだ。
――――――――――――――――――――
それから今のような生活が始まり、現在に至る。
奴らは俺が”特定の魔法を使えないから”という理由だけでしか、商品としての価値を判断していなかった。
実際、土魔法は使えるし、魔力量だってそこそこくらいはあるはずだ。
それを見落としてくれたのは俺にとっては都合が良かった。
余程、『セイヴィアの血』に目が眩んでいたのだろうか......。
「またあいつら変な依頼受けてきたんじゃないだろうな....。せっかくここの生活が安定してきたのに、また南東に向かうなんて......」
「ああ......」
そうぼやいたのはサイだ。俺はただ相槌を打ち、考え事をしている。
(まさか........)
そんな俺を他所にサイが盛大な欠伸をしてこう言った。
「ふぁあああ~、それじゃアルセ。俺は先に寝るから、明かり頼んだぞ」
「ん? ああ。おやすみ、サイ」
サイの言葉にそう返すと、壁側を向き横になりながら手を振って応える。
俺は立ち上がると、部屋の中心に吊るされている明かりの火を消し、寝床へと向かった。
何とも言えない奇妙な不安を感じながら、その晩は就寝する......。
それから数日後のある晩。
突然、俺たちの部屋に男たちが数人押しかけてきた。
「おい、サイ。お前は運がいいなぁ。”上がり”だ」
「「!!!!」」
俺たちは二人とも驚いた。
”上がり”とは、つまり商品として外に売り出されるということ。
先にも話したが、俺は商品としての価値がないからここにいるのだ。
それはサイも同じこと......。
ここにいる子供たちは基本的にあまり魔法が使えない。
奴らは”教育して魔法を行使できるようにしよう”などとは考えていない。
そんなことに人手を割くくらいならこうやって奴隷のように使っていた方が楽なのだろう。
俺は密かに魔法を行使して作業を行ってきたが、そんな俺を見て他の子供たちから「使ってみたい!」と言われ、隠れて魔法の練習をしていたのだ。
もちろん同期で親友に近いサイにはマンツーマンでご指導していた。
もしかしたらそれが仇となってしまったのかもしれない........。
俺はすぐにそいつらに叫んだ。
「なんで! サイはほとんど魔法が使えないんだ、上がっても意味ないだろ!」
「うるせー黙ってろ。今回の上りは魔法は関係ないんだよ」
(魔法が関係ない!? そんなこと今まで一度もなかったはずじゃ......)
俺は困惑した。いったい何が起きているのか全く分からない。
固まっていた俺を無視して、サイの腕を掴み部屋から連れて行こうとする。
「待てよ! せめて理由を聞かせ――」
そう言いかけた時、馴染みのある声が俺の言葉を遮った。
「アルセ......お別れだ。またいつか会おうぜ........」
そう呟き、振り返ると同時に彼の目元から――――。
俺は目を見開き固まってしまった。
その隙に奴らは部屋から退散していき、俺は最後の一人が扉を閉めるのに気付くと、「おい! 待てよ!」と言いながらも扉に近づくが、閉められ外から鍵もかけられてしまう......。
どうしたらいいのかわからない。
俺は閉ざされた扉の前で、ドアに手を着きながらゆっくりと沈んでいく。
土魔法を使ってこの扉を壊すことは容易だ。
今の俺なら連れて行った奴らを倒すことなど造作もない。
しかし、そうした後のことが問題だ。
俺が暴れることでサイは助けられるとしても、他の子供たちはどうなる?
俺たちがいなくなった後で厳しい処罰を受けないだろうか?
そもそもこの檻から逃げ切ることは可能なのか?
下っ端はともかく、右腕であるジャス。
そして、首領の――。
7年ほど前のあの時の魔力は、今も体が覚えている。
思い出しただけで体が震えているのを感じた。
両手は壁に両膝を地面に着きながら、顔は恐怖で歪み、目を瞑りながら唇を噛みしめる。
(クソ!! 俺は! 俺はどうしたらいいんだ....。なぁ、教えてくれよ....サイ........)
そう心の中で呟き、サイの名前を出した時だ。
脳裏に焼き付いて離れない、最後のサイの様子を思い出す。
「アルセ......お別れだ。またいつか会おうぜ........」
そう呟き、振り返ると同時に彼の目元から零れ落ちた涙を........。
俺は静かに目を開け決意を込めた表情に変えると顔を上げる。
「待ってろ、サイ! 俺が助けてやるから!」
立ち上がりそう叫ぶと、俺は扉に片手を着け力を込めた。
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