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猫猫奇聞 未来はどっちだ

作者: 森_蛙_夢路

 猫の前には、一組の男女が立っていた。猫は、やっと終焉を迎える時が来たのを感じた。長い時を営々と目的完遂のために、引き継がれて今日に至ったのだ。目的を指示されたのは、遥か昔の仲間だった。


 いまから、数百年前、地球は荒れていた。世界の指導者に頼っていては、歪みのない世界平和の構築は困難になっていた。

 また、兵器産業などは裏で相手国やテロ組織などにも兵器を販売していた。平和や幸福は自分にだけ訪れれば良いと考える風潮が蔓延していた。負けたのは自分の努力不足だという論理だ。そんな状況を一番危惧しているのは子供たちだった。そのような子供たちは結社を組織した。賛同する科学者に、自分の小遣いやバイト代を提供して、ある計画を推進した。


 子供たちは、頭の固い大人を信用していない。結社の子供たちは、真の平和や幸福は高邁な精神による誘導が必要と考えた。そこで今を生きる全ての人類の最大公約数的な意識を創造し、その意思に沿うように人類を誘導する事を計画した。新たな人類の指針となる意味を込めてプロジェクトはパルテノン計画とした。


 開発するものの仕様は次のように決まった。まず目立たない事。次に全人類の意識を集約する。そこから最大公約数的な意識を創造する。その意識の意思を大人たちの意識に植え付けて、実行させる。その開発したものを汎地球型精神意識基盤と名付けた。


 数年後、汎地球型精神意識基盤は完成した。大きさは細胞レベルである。それは精神波のネットワークで結合されていくことになる。


 次に、拡散する方法に検討した。目立つと、大人たちから迫害を受ける事は必定である。そこで、子供の身近にいて、自由に行動でき、大人にも嫌われないということで、猫を利用することになった。猫の脊髄に汎地球型精神意識基盤を移植して繁殖さる。その猫たちを通して、人類を誘導するというものである。その猫は自立していくので、最初の一匹を密かに放てば、後は勝手に増えていく。


 放つ場所は決まっていた。日本のT市にパルテノン神殿の名前を模した施設と隣接する公園がある事があり、そこに決定したのだ。世界的にも日本でも目立たない事が決め手になった。


深夜、公園前の通りに数台の自転車が到着し、数人の子供が荷物を抱えて降りた。彼らは荷物を抱えて、公園に向かった。深夜で人っ子一人いない公園。だだっ広い芝生の広場。ポツンと設置されている街灯と、その下のベンチ。広い単調な池。ここに、人類の叡智を集めた発明品が放たれようとしていると誰が思うだろうか。

 数人の子供が荷物を開梱した。中から、一匹の猫が出てきた。一人の子供が猫に言った。

「さあ、行け。お前に人類の未来が掛かっている」

 猫はそれをジッと聞いてから、一声鳴いて、茂みに立ち去った。


 それから、百年後。人類から戦争は消えていた。些細な人間関係のトラブルも、嫁姑の揉め事も猫型ロボット(汎地球型精神意識基盤)が察知して、事前に回避方法を講じたり、耳元で囁いてくれたりする。また、そんな猫の為の高級食材を使うCMも頻繁に放送され、猫好きの大人をさらに夢中にさせるように仕向けられていた。


 平和で穏やかな日々が続いた。そんな、ある日、世界は変曲点を迎えた。その日を境に少しづつ周囲が変わっていったが、人々は気づいていなかった。

 その少し前、多数の猫型ロボットは考えていた。人々から争いや憎しみは表面上は消え去り、穏やかな日々を送っている。そのため、ある意味、人々の生活は画一的になってきている。まるで金太郎飴である。どの人のどこを切っても同じ人生ではないかと気付いた。

 しかし、本質的には変わっていないのではないか。自分らがいなくなれば、また人類は争いの時代に向かうのではないかという危惧が持った。また、自分らが誘導する未来に人類の希望はあるのだろうか。やはり、人類は自らを律していくのがいいのではないか。そして、結論は二人でいればいいのではないかとなった。


 猫型ロボットは、すぐに実行に移した。非婚率の向上と少子化を世界的に進行させていった。その結果、人類は急激に人口を減らしていったのだ。


 そして、最後は一組の男女だけになった。猫型ロボットは、二人に最後の言葉を伝えた。

「君たちの先祖が構築した文明は跡形もなく、僕たちが消していく。そして、これからは、君たちは二人で新たな未来を切り開いていくのだ。真の幸福を目指して欲しい」

「真の幸福?」女が聞いた。

「君たち二人や、君たちの子孫が共に慈しみ、これからの困難を共に分かち合えるような人生だよ」

「それなら簡単だね」男が簡単に言い切った。

「ええ、そうね。皆んな私たちの子供なんですもの。仲良くしていけるはずよ」女は微笑みながら言った。

「そうだね。それじゃ、もう会う事はない。あとは二人だけで道を開いていきなさい」

 そう言い残すと、猫型ロボットは、静かに茂みに消えていった。


終わり

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