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第四話
結局、善等菜はカルフという甘い焼き菓子を買うことにした。不格好なため手頃で安く、美味しいカルフは善等菜が幼少の頃、好んでよく買っていたものだ。
懐かしい匂いに思わず嬉しくなりながら、善等菜はカルフを三つ頼んだ。頼まれた娘さんのカルフを焼く手は、善等菜が教会のお偉い様だとでも思ったのか、小刻みに震えていた。頬を真っ赤にしながら、懸命に焼いている。最初は頬だけだった朱が首筋にまで広がっているのを見て、善等菜はなんだか申し訳ない気持ちになった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だ。私はまだ修行中の身だからな」
安心するかと思って、笑ってみる。
娘さんは、今度は顔色を真っ青にすると、震える声でこう言った。
「……あなたさまは、かみさまですか」
え。
「いや、違う」善等菜は驚いて、たじろいだ。「私は神ではない、です」
娘さんは善等菜の頭の中を覗き込むように、じっと見つめた。
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