遊真vsメフィスト
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「がはっ……!」
メフィストは勢い良く地面を転がり、地面に手を着いて咳き込んだ。
「立てよ……メフィスト」
遊真はゆっくりとメフィストに歩み寄っていく。
「遊真……!」
メフィストは遊真に殴りかかった。 メフィストは拳を振りかざし、遊真の顔に拳を突き出した。
しかし遊真は表情すら変えることも無く拳を避けるとメフィストに蹴りを叩き込んだ。
「ぐはっ……!」
メフィストの体がくの文字の様に折れ曲がる。 遊真はメフィストの顔を殴り飛ばした。
メフィストの体は宙を舞い、遊真が手を向けるとメフィストは地面に叩きつけられた。同時に周りの地面もヘコんでいく。
「消えろ!」
メフィストが叫ぶとメフィストを地面に叩きつけた重力が消え、メフィストは再び遊真に向かっていく。
「滅剣時喰」
遊真の右手に白銀の剣が作り出された。 遊真はそれを掴むとゆっくりと構えた。
「死ね遊真! 「傲慢」!」
メフィストは遊真を睨み付け、その瞬間に遊真の動きがピタリと止まった。
「竜神王衝撃!!」
メフィストが遊真に右手を向け、メフィストの手から放たれた衝撃波が遊真に直撃する。
メフィストはニヤリと笑い、防護膜の向こう側でもペルセポネが既に勝負が決したかの様に笑みを浮かべている。
「これで終わりか?」
「なっ!!?」
メフィストが驚きの声を漏らすと前には剣を握った遊真が何事もなかったかの様に立っていた。
「確実に全身に当たったはずだ……。 何故無傷で立っている……!?」
「何でだろうな」
遊真はそう呟くとメフィスト目掛けて剣を突き出した。 メフィストは剣が当たる寸前で回避するともう一度遊真に右手を向けた。
「もう衝撃波は飽きた」
遊真は一瞬の内にメフィストとの距離を詰めるとメフィストの右手を切り落とした。
「くっ!」
メフィストは再び遊真を睨み付け、左手で衝撃波を放った。
周りの木々は吹き飛ばされ、地面には底の見えない巨大な穴が空いた。
メフィストは地面に着地して自分が放った衝撃波の跡を見つめた。 そこには遊真が無傷で立っていた。
「無駄だ。 お前は俺には勝てない」
遊真が剣を手放すと剣は複数の小さな槍へと姿を変えた。
「黙れ遊真。 お前が俺に勝てるはずが……
あれ……?」
メフィストは自分の右手が戻らない事に気づいた。 先程から右手が再生する想像をしているのにも関わらずメフィストの右手は切り落とされたまま再生しない。
「再生なんて出来ると思うなよ。 さっき斬った時にお前の右手の「時間」を消滅させた。
傷口から血が出ないのは当然だ。 お前の右手は最初からこの世に存在しなかったのだから」
「時間を……消す……?」
「あぁ」
遊真の回りの槍がメフィストに向かって放たれた。 メフィストも周りに複数の槍を作り出して遊真に向けて放った。
メフィストの放った槍は遊真の槍にいとも簡単に力負けし、メフィストの体を複数の槍が貫いた。
「がっ……!」
メフィストはふらりとよろめき、地面に膝を着いた。
「今の傷も当然治らない」
遊真はそう呟くと再び右手で作り出した剣を握った。
「存在しないものを……どうやって再生させるのかって言う話か……」
「そうだな。 そしてこの剣でお前の首を斬れば……どうなるか分かるだろう?」
遊真は剣を振りかざすとメフィストの首を目掛けて水平に振り抜いた。 メフィストは咄嗟に回避すると遊真の腹部に蹴りを入れた。
しかし遊真は全く動じることもダメージを受けることも無く剣でメフィストの足を斬り落とした。
「「暴食」!」
メフィストの横に黒色の剣が現れ、メフィストは左手でそれを掴むと遊真目掛けて剣を振り下ろした。
遊真は剣を水平に持つといとも簡単にメフィストの剣を防いだ。 メフィストが作り出した剣は遊真の剣でぶつかり合い、折れていた。
「「憤怒」! 竜神王衝撃!!」
メフィストは剣を手放すと先程よりも遥かに強力な衝撃波を放った。
衝撃波は大地を抉り、背後にあった女神族の森の木々をいとも簡単に吹き飛ばした。
「はぁ……はぁ……」
メフィストは息を切らしながら衝撃波を放った方向を見つめた。 舞い上がる土煙の中からは遊真が何事もなかったかの様に姿を現した。
「大人しく死ねよ。 メフィスト」
遊真はゆっくりとメフィストに歩み寄っていく。 その表情は憤怒の色も無く、笑顔もない。 ただただ無表情である。
「ふざけるなよ……! お前ごときが! 俺に勝てるはずがない!」
メフィストが叫ぶとメフィストから魔力が溢れ出るかの様に体が輝き始めた。
「俺に「嫉妬」がある限り……俺の魔力は尽きない……!」
「そうでもないさ」
遊真が小さな声で呟きながらメフィストに手を向けるとメフィストの体から光が消え去った。
「なっ……!?」
「魔力はもう湧いてこない。 後気をつけるのは「怠惰」位のものだ」
「なん……だと……」
「その代わりお前の魔力はもう尽きないぞ。 良かったなメフィスト」
遊真は一瞬の内にメフィストの目の前に移動し、メフィストは殴り飛ばされ、地面を勢い良く転がった。
「まぁ……尽きないかは一応俺のさじ加減だが」
遊真は小さな声でそう呟くと再びゆっくりとメフィストに歩み寄っていった。
「何だよ……あの強さは……」
弘行は遊真の強さに驚きを隠しきれない様子だった。
「まさかあれ程までとは……! 想像の遥か上をいく」
大輝もメフィストを圧倒する遊真に驚いていた。 周りの人も全員驚き、勝てるという希望に胸を踊らせていた。
「向こうの大陸で鍛えたと言っていたが……。 確かメフィストには敵わないのではなかったのか……?」
大輝はそう言って少し首をかしげた。
「その通りよ。 遊真はメフィストには勝てない」
「えっ!?」
結菜が呟いた言葉に思わず弘行達は耳を疑った。
「もちろん今の話ではないわ。 ただ向こうの大陸にいた時は勝てなかった。
そしてこの戦いが始まった時ですら勝てる相手ではなかった……。 でも今は違う。 今の遊真が使っている魔力はついさっき目覚めたものよ」
「ついさっき? いったい何が……」
「恐らくミカエル君や翔一君の死を目の当たりにしてそのショックや怒りで覚醒したのよ」
結菜がそう言うと大輝は首をかしげた。
「待ってください結菜様。 遊真はサタンとの戦いで既に覚醒し、その覚醒魔力として「想像世界」を開花させたはず。
今メフィストを圧倒出来ている覚醒とは一体……」
「その覚醒よ。 つまり遊真はサタンとの戦いの時にまだ覚醒してはいなかった」
「なっ!? では……」
「もちろん全く覚醒していない訳では無かったと思うわ。 全く覚醒しなければ「想像世界」が目覚めなかった。
しかしゼウスは純粋な女神族。 覚醒はしないのにも関わらず言霊を使えるようになった。
それは当然親のヘラも同じ。 だから最初に覚醒で「想像世界」が目覚めたと聞いた時は少し疑問を感じたわ」
「つまり……まだ遊真は「半覚醒」状態だった……。 そんな感じですか?」
弘行の問いに結菜は頷いた。
「人類と女神族のハーフ。 だからこういう結果が生じたのかも知れないわ。
まさか私の魔力が遺伝するとは思いもしなかったけどね」
結菜はそう言って優しく遊真を見つめて微笑んだ。
「結菜様の……?」
「ええ。 今遊真が使っている魔力は
「時の支配者」。 時を自在に操る魔力よ。
メフィストも気づいているだろうけど遊真は一瞬の内にメフィストを殴り飛ばしている。 それは時を止めてメフィストに接近し、殴り飛ばす瞬間に時間を止めるのを解除しているからよ」
メフィストは立ち上がると目の前に黒い円を作り出し、真優の作り出した防護膜の外側に移動した。
「くっそ……」
「大丈夫かメフィスト!」
ペルセポネが直ぐ様メフィストに駆け寄った。 遊真はゆっくりとメフィスト達に近づいていく。
「どうしたメフィスト。 逃げるのか?」
「遊真……。 いくらお前でもこの防護膜からは出てこれまい……。
この防護膜は内側からも出るのは困難の様だからな」
「そうでもないさ」
遊真はそう言うと剣で簡単に防護膜に穴を開けた。
「は……!?」
「話を聞いていなかったのか? 時を消滅させるんだ。 ここに最初から防護膜は存在しない」
遊真が通った穴は再生せず、そのまま穴が開いている状態のままで特に防護膜が変化する様子はない。
「貴様!」
ペルセポネは遊真に手を向けて巨大な炎の玉を放った。 しかし遊真はそのまま防ぐこともせずに悠々と歩いてくる。
「何故……攻撃が通じない……!」
「別に効いてない訳じゃないさ」
遊真はそう呟くとペルセポネの左胸を貫いた。 ペルセポネは力無く地面に崩れ落ちた。
「遊真……!!」
「傲慢と色欲は効果がない。
暴食も憤怒も攻撃が通じないなら無意味。
怠惰もさほど意味を成さず嫉妬は封じられた。
そして強欲で俺のこの魔力は奪えない」
「ふざけるなよ……!! 女神族のハーフごときが!!」
メフィストは上空に飛び上がった。 そして右手に莫大な衝撃波を作り出していく。
「神族の力を半分しか持たないお前なんぞに……!!
俺が負けるか!!」
メフィストは出来上がった衝撃波を遊真に向けて放った。
「世界滅亡の衝撃波!!」
遊真は小さくため息をつくとゆっくりと手をメフィストに向けた。
「消失する世界」
遊真から放たれた白銀の玉がメフィストの放った衝撃波を打ち破った。
「馬鹿な……魔神族が……こんなところで!!!」
メフィストの叫びと共にメフィストは白銀の玉に包まれていった。
「ふぅ……」
遊真は小さく息を吐くと俯いて小さな声で呟いた。
「終わったよ……。 みんな」
遊真はそう呟いて微笑んだ。 森の中から弘行達がこちらに向かってくる。
「…………硬直する世界」
すると遊真は一瞬の内に弘行達の目の前に移動した。 弘行は一瞬驚いた様だがすぐに笑みを浮かべた。
「遊真! やったな!」
「……悪いな」
「えっ?」
遊真が弘行の体に触れると弘行は地面に崩れ落ちた。
「遊真!?」
みんなが驚いている間にも遊真はアポロンと二人の妖精族にも軽く触れ、三人も地面に崩れ落ちた。
「遊真……?」
大輝は剣に手をかけて身構えた。 横で結菜も少し緊張した顔つきになっている。
「遊真……何故眠らせたの?」
結菜の言う通り弘行達は地面で眠ってしまっていた。
「これからやることを……止められると思ったからだよ」
「これから……やること?」
結菜が首をかしげると遊真は結菜と大輝に背を向けた。
「これから俺の命と存在を引き換えに……みんなを生き返らせる」
「「なっ!!?」」
二人は同時に驚きの声を上げた。 その間にも遊真は結菜と大輝から離れていく。
「待ちなさい遊真!」
「待て遊真! 命をそんな簡単に……!」
次の瞬間大輝は地面に崩れ落ちていた。 結菜が振り返るとそこには遊真が立っていた。
「遊真……」
「……………………」
「もしまたメフィストの様な魔神族が現れたらどうするつもり?」
「それは無い。 今から創る世界には魔神族は存在しない」
「それで貴方は命を落とすの?」
「そう言うことになるね」
遊真の答えに結菜は拳を握りしめた。
「それを私が止めないと思う……?」
「母さんには俺を止めれない。 魔力が上手く使えないんだから」
遊真の言葉に結菜は息を呑んだ。
「どうして……それを……」
「過去視で姉ちゃんの記憶を見た。 だからこの使い方も分かった」
そう言って遊真はポケットから黄色のペンダントを取り出した。
「それは……「謙譲」の……。 まさか……!」
結菜は遊真の体に触れた。 そして結菜の表情には絶望と悲しみの色が浮かんだ。
「遊真……まさかこの体……」
「代償を払って……代償で体が崩れる前に永遠の一瞬で体の時を止めた。
だから俺は魔力が尽きた瞬間に「謙譲」の代償に殺される」
「自分の体はこれ以上壊れたり変化することは無い……。 だから何度も攻撃を受けても傷を負う事がなく、何度も時を止めることが出来たの……?」
「代償を払えば莫大な魔力が生み出されるから」
遊真の問いに結菜は地面に膝を着いた。
「バカ…………! じゃあもう貴方は助からないって言うの!?」
「そう言うことになる」
遊真は結菜の前にしゃがむと結菜の体を優しく抱きしめた。
「遊真……」
「ごめん母さん……。 本当に……ごめん……!」
遊真の目から涙が流れ落ちた。 結菜は優しく遊真の頭を撫でた。
「私が望んだ形では無いけれど……貴方は……良く頑張ったわ。 本当に……よくメフィストを倒してくれた……」
「母さん……」
遊真は結菜の顔を見つめた。 結菜は優しく微笑んで遊真を優しく抱きしめた。
「ありがとう……遊真……」
「……うん」
遊真は笑みを浮かべて小さく頷いた。 そして全ての魔力を解き放った。
「約束された楽園……!」
そう言えば私事ですが昨日(四月二十五日)に某アニメの前売り券をゲットしました。
達成感が凄まじいです。
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そして最終話は本日の夜頃更新致します。