遊真vsベルゼブブ
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「怒神鉄槌!」
遊真の一撃がベルゼブブに向かって放たれるがベルゼブブも同じ技を使って威力を相殺し、遊真の腕を掴み投げ飛ばした。
「貫け!」
ベルゼブブの言葉に呼応して地面から槍が遊真目掛けて放たれ、遊真が右手を前に向けると槍は全て遊真に届くこと無く消え去った。
二人は息を切らしながら再び構えた。
(魔神族が作り出した結界のせいで自分の魔力以外は使えない……。 レノーラの力があればこんなに苦戦しなかったのにな……)
遊真は小さくため息をついた。
「切り裂け!」
ベルゼブブから巨大な風の刃が放たれ、遊真は思考を中断した。
「雷華!」
遊真の体が雷に包まれベルゼブブの攻撃を回避し、そのままベルゼブブに反撃する。
「生意気なんだよ……!」
ベルゼブブの拳と遊真の拳がぶつかり合って周りの木々が衝撃で凪ぎ払われていく。
「確かに強くなったが……俺には及ばない」
ベルゼブブは遊真の腹部に回し蹴りを叩き込み、遊真は吹っ飛ばされて地面を転がった。
「まだ「祖の魔力」の熟練度に差がある。 俺の方が上だ」
「だからと言って諦めるとでも?」
遊真のそう言って立ち上がった。
「お前をさっさと倒してミカエル達を助けに行く」
遊真はベルゼブブを指差してそう言った。 遊真の言葉を聞いてベルゼブブは笑みをうかべた。
「ここから出れたらな。 お前は俺を殺さない限りはここから出れないという事を忘れていないか?」
「忘れてねえよ!」
遊真はそう言った時にはベルゼブブの目の前に移動していた。
遊真はベルゼブブに向けて拳を突き出すがベルゼブブは遊真の一撃を右に動いて回避し、蹴りを遊真の顔に向けて放った。
遊真はベルゼブブの足を受けとめてベルゼブブを投げ飛ばす。 遊真はすかさず追撃を行うようにベルゼブブの四方八方から雷を放った。
「消えろ」
ベルゼブブがそう呟くと雷は全てベルゼブブの口にした通りに消えていく。
「しつこいな……!」
「お互い様だ!」
ベルゼブブは地面に着地すると遊真に向かって行く。
再び肉弾戦が始まりお互いの拳がぶつかり合う。
「祖の魔力は俺の方が上。 それは肉弾戦も同じだ!」
ベルゼブブは遊真を殴り飛ばした。 遊真は空中で回転し、地面に着地した。
「くっそ……!」
「お前が俺に勝てるわけが無いだろう!」
ベルゼブブは炎や雷といった様々な種類の玉を遊真に向けて乱射する。
「舐めんな!」
遊真はそう叫ぶと攻撃を全て回避しながらベルゼブブに近づいていく。
「それは俺のセリフだ」
ベルゼブブは自分の周りに炎を発生させ、遊真が一瞬怯んで動きが止まったところを槍で貫いた。
「ぐっ……!」
遊真は即座に槍を体から抜くと傷を修復した。
「お前はメフィストと少しやりあってからここに来た。
その点俺はメフィストに体力を完璧に回復してもらってからここに来た。
魔力の量の差は明らかだ。 お前の方が先に魔力が尽きる」
ベルゼブブはそう言って遊真の方に向かってくる。
遊真はベルゼブブに拳を突き出し、ベルゼブブはそれを回避しながら遊真に蹴りを繰り出した。
「黙れ!」
遊真はベルゼブブの蹴りを防ぐとベルゼブブの足を掴んで地面に叩きつけ、そして次の瞬間には遊真はベルゼブブを蹴り飛ばしていた。
「まだまだ余裕だ!」
遊真は様々な種類の玉を作り出し、ベルゼブブに向けて乱射する。
「笑わせるな!」
ベルゼブブは遊真の攻撃を全て消滅させると遊真との距離を詰めていく。
「燃え尽きろ!」
「太陽の爆炎!」
巨大な炎がぶつかり合い、相殺して消えていく。
その段々と消えていく炎の中で二人はお互いに拳をぶつけ合う。
「お前を絶対にここから出さねえ!」
ベルゼブブはそう叫ぶと遊真を殴り飛ばした。
「メフィストが全員殺すまでお前をここに止めておく。 それが俺の使命だ」
「そんな茶番に付き合うとでも?」
「付き合うかどうかはお前が決めることじゃない。 お前は俺を殺すまでここから出られないからな」
そう言ってベルゼブブは笑うと遊真を指差した。
「遊真。 お前の方が圧倒的に不利なんだよ。
お前は俺を殺してここから出てメフィストを殺さなくては勝ちとは言えない。
それも長引けば仲間は死んで、お前の勝率は低くなる。
その点俺は最悪お前を止めておくだけで良い」
「ベルゼブブ。 それはお前達魔神族が勝つためにやることか?」
遊真の言葉にベルゼブブは首をかしげた。 そして次の瞬間にはベルゼブブはにやりと笑った。
「確かにそうとも言えるな。 だが俺自身の目的としては遊真。 お前を殺せればそれで良い」
「そうかよ……!」
遊真はベルゼブブに殴りかかった。
「吹き飛べ」
ベルゼブブの手から爆風が発生し、遊真の体は宙を舞った。
「落ちろ!」
上空から隕石が落下し、隕石は難なく結界を通って遊真の体を抉りながら地面に激突した。
「どうした遊真? もう終わりか?」
ベルゼブブはそう言って隕石の落下地点にゆっくりと歩いて行く。
「そんな訳無いだろう……!」
遊真の声が聞こえ、ベルゼブブは莫大な魔力を感じて思わず後ろに下がった。
「ここから出して貰うぞ……。 ベルゼブブ!」
「能力全解放か……!」
「そこを退け!」
遊真は一瞬のうちにベルゼブブの目の前に移動しベルゼブブの腹部を殴り飛ばした。
「この……!」
ベルゼブブは遊真に反撃をしようと手を向けるが遊真はベルゼブブが攻撃を放つ前に後ろに回り込んだ。
遊真はベルゼブブを殴り飛ばし、ベルゼブブが吹き飛んだ方向に回り込み、再び殴り飛ばす攻撃を繰り返した。
(速い……! だが……)
ベルゼブブは自分を中心に全方位に衝撃波を放った。
「ちっ……!」
遊真は舌打ちをしながら一旦止まった。
「雷神鉄槌!」
遊真は右手に雷を纏わせるとベルゼブブに殴りかかった。
しかしベルゼブブは遊真の一撃を当たる寸前で回避した。雷の余波でベルゼブブの頬に傷が入る。
「光雷!」
遊真の手から雷が放たれベルゼブブは当たる寸前に小さな盾を作り出し、遊真の雷を防いだ。
その隙に遊真はベルゼブブの背後に回り込んでいたがベルゼブブは分かっていたかの様に遊真の拳を回避する。
(確か今の状態の遊真はとてつもなく速い。 だが全神経を「防御・回避」に集中すれば攻撃を完璧に防ぐことは難しくてもダメージを最小限にする事は容易だ)
ベルゼブブは遊真の攻撃を回避し、遊真の表情には少し焦りの色が見え始めた。
(防御と回避に専念するから反撃は出来ないがお前に攻撃をする必要はない。
お前はその状態だと魔力の消費が激しい。 魔力が尽きたところを殺れば良いからな)
遊真の拳がベルゼブブの腹部に叩き込まれるがベルゼブブは自ら後ろに飛んで衝撃を和らげた。
(ベルゼブブの動きが変わった……)
遊真は息を切らしながらそう感じた。
(もうあいつは時間稼ぎだけで良いと考えているんだろうな。
だから俺に攻撃をしてこない。 ダメージを抑える事に全神経を注いでる。
だったら……!)
遊真は再び右手に雷を纏わせるとベルゼブブに向かっていく。
(手数を増やしてベルゼブブの魔力を削る! 手数を増やせば当たり易くもなる!)
遊真は右手をベルゼブブに突き出した。 ベルゼブブは遊真の拳を回避し、続けて放たれた回し蹴りを防御した。
「落雷!」
遊真は手を振り下ろすと結界内の上空から雷が落下し、ベルゼブブは言霊の力で雷を消滅させた。
「光輝く白銀の雪」
遊真がそう呟くと遊真の周りに白い雪の様な物がちらつき始めた。 そして次の瞬間に遊真の周りの雪の様な物が光輝き始め、ベルゼブブは思わず目を閉じた。
「万物融解!」
遊真の手から溶岩が放たれ、ベルゼブブの右腕を一瞬にして消滅させた。
「この……!」
ベルゼブブは腕を再生させ、遊真と距離を取ろうと後ろに下がるが遊真はここぞとばかりにベルゼブブに怒濤のラッシュをお見舞いする。
遊真の一撃一撃は全て雷を纏っており、ベルゼブブが作り出した盾は一瞬でひび割れ、一発毎に作り直している様な状況だである。
(こいつ! 魔力が尽きても構わないって位のペースで……!)
想像を越える遊真の猛攻撃にベルゼブブは少し焦り始めた。
絶対魔力量では有利だと思っていたベルゼブブだが遊真の一撃一撃が重く、ベルゼブブは盾の生成が間に合わず少しずつだが攻撃を食らいつつあった。
(だが遊真はさっきから俺を殴る度に手と脚を再生している。
再生は消耗が大きい。 そろそろ終わりだろ!)
ベルゼブブがそう思った刹那。 僅かに遊真の攻撃の手が緩んだ。 ベルゼブブはその一瞬を見逃さず、遊真の腹部に蹴りを叩き込んだ。
「がはっ!」
遊真は地面を転がり、仰向けに倒れた。 胸元のペンダントからはゆっくりと輝きが失われていく。
「残念だったな遊真。 俺の勝ちだ」
ベルゼブブはゆっくりと遊真に歩み寄ると地面に倒れた遊真に手を向けた。
「死ね!!」
「……死ぬかバカ」
遊真がそう呟くとベルゼブブは背中を切り裂かれた。
「は……!?」
ベルゼブブが後ろを見るとそこには遊真が立っていた。 手には雷で型どられた剣が握られている。 遊真は更に雷の剣をベルゼブブに突き刺した。
「てめえ……!」
ベルゼブブは背後の遊真に槍を放つと遊真は樹木へと姿を変えた。
「分……身……?」
ベルゼブブが呟くと地面に倒れていた遊真が立ち上がっていた。 胸元のペンダントは輝きを取り戻している。
「じゃあなベルゼブブ」
遊真の右手には雷で出来た玉が握られていた。
「黙れ! まだ勝負は……!」
ベルゼブブは遊真に殴り掛かろうとしたが自分の体の違和感に気づいた。
(体が……痺れて……!)
「全てを切り裂く雷の虎!!!」
遊真はベルゼブブの腹部へ渾身の一撃を叩き込んだ。
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