命を賭けて
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「あの林檎は……?」
メフィストは不思議そうに呟いた。
「お姉ちゃん。 あの林檎は?」
ウリエルはガブリエルの方を向いてそう聞いた。
「あの……林檎は……」
「妖精族に伝わる禁断の果実だ」
ラファエルがガブリエルの言葉を継ぐ様にして話を始めた。
「生きている妖精族の三人から魔力を借りる事が出来る。 そう言い伝えられているが使った者はいない。
そして使用した者は……」
ラファエルはそこで言うのを少し躊躇った。
「お兄ちゃんは……どうなるの……?」
ウリエルは不安そうな表情になりながら首をかしげた。
「ミカエルは……死ぬ」
「さあ……来いよ!」
ミカエルは余裕そうに笑みをうかべて言った。
「魔力が爆発的に上昇したな……」
メフィストはそう呟いた。
「どうします? 奴等はどの様にして仕留めますか?」
「まあ落ち着けルシファー。 あの二人なら俺が一人で……」
メフィストが話している最中。 メフィストの背後でゼウスがゆっくりと立ち上がった。
「まだ立ち上がれたか……。 しかし立ち上がって何になる?」
「貴方を……止める!」
次の瞬間ゼウスから魔力が溢れ出すように爆風が巻き起こった。
「これは……「謙譲」!」
「ゼウス様!」
翔一は思わず叫んだ。
(まさか……ゼウス様は自分の命を……!)
次の瞬間ゼウスはメフィストを殴り飛ばした。 それが合図だったかの様にミカエルと翔一も魔神族に襲いかかった。
「貫通拳!」
べリアルはミカエルに殴りかかった。
「リベンジさせてもらうぜ」
ミカエルは華麗にべリアルの拳を回避し、べリアルの肩に手を置いた。
次の瞬間べリアルは地面に倒れていた。
「えっ……!?」
レヴィアタンが驚きの声を漏らした時には既にミカエルはレヴィアタンの目の前に移動していた。
「「色欲」!」
レヴィアタンはミカエルに手を向けて叫んだ。
「無駄だ」
ミカエルは右手をレヴィアタンに向けた。
「消失の光雷!」
ミカエルの手から光が放たれ、レヴィアタンは消え去った。
「この……!」
サタンが衝撃波を翔一とミカエルに向かって放った。
「消えろ」
翔一がそう呟くとサタンが放った衝撃波は消え去った。
「あれは……!?」
「言霊!?」
ルシファーとサタンは翔一が行った事に気を取られている間にミカエルが目の前に移動していた事に気づけていなかった。
「絶対死領域」
ミカエルが葉っぱを口元に当てて音を奏でると、次の瞬間にはサタンとルシファーは地面に崩れ落ちていた。
残っているのはメフィストを除いてもう一人のサタンとベルフェゴール。 そしてペルセポネだけである。
「どうやってここまでの力を……!」
「別に。 命を賭ければこんなもんだろ」
ミカエルはあっさりとそう答えた。
「理解した?」
翔一は一瞬にしてサタンの懐に潜り込み、サタンを殴り飛ばした。
サタンは地面を転がりながら炎に包まれていく。
「これは……!?」
「消えない炎さ」
翔一がそう呟くとサタンはゆっくりと燃え尽きた。
「…………!」
「ふざけた真似を……!」
ベルフェゴールとペルセポネはミカエルと翔一に向かって攻撃を放った。
「この魔力は……!?」
結菜は学校の方から感じ取れる魔力に違和感を感じ、足を止めた。
「結菜様?」
大輝は足を止めた結菜の手を取った。
「結菜様。 止まっている場合では……!」
「……うん。 分かってるわ」
結菜は大輝と共に「女神族の森」に向かい始めた。
(ミカエル君から四人の大天使の魔力を。
翔一君からはメフィストの魔力を感じる。
そしてゼウスからはとてつもない魔力を感じる。
……でも遊真の魔力が感じられない。 少し前にベルゼブブと同時に消えた)
結菜は不安げな表情をしながら自分の胸元を押さえた。
「ふぅ」
ロケスは小さく息を吐いた。 横にはデュークが立っており、前には四人の魔神族が倒れている。
「助かった……」
弘行は緊張の糸が切れたように地面に座り込んだ。
「まだ安心するのは早いぞ。 相手のボスはまだ残っているからな」
「それもそうか……」
ロケスは弘行に手を差し出し、弘行はロケスに引っ張られる様にして立ち上がった。
「次はどこに向かえば……」
デュークは周りを見渡すとこちらに向かってくる一人の女子に気づいた。
「あれは……真優か?」
弘行が目を凝らすとこちらに手を振りながら真優がこちらに向かってくる。
「みんな! 生きてて良かった」
「それはこっちの台詞だ。 心配したぜ」
真優は少し服が汚れていたが特に大きな怪我は負っていなかった。
「随分とオーガの数は減った。 我々は翔一達の元に向かおう」
「了解だ。 君達はどうする?」
弘行達は顔を見合わせた。 遊真達が来る前の最初の戦いで自分達の実力では敵わない事は充分にわかっていた。
「悔しいですけど……今の俺たちじゃ無駄に死ぬ。 寧ろ邪魔になります。
それに言われたんです。 自分達に出来る事をしろって。
だから俺達は引き続き住民の避難を全力でやります」
「そうか。 分かった」
ロケスは弘行に拳を差し出した。 弘行は微笑みながら拳をロケスの拳に合わせた。
「頼みます」
「任せとけ」
ロケスとデュークは翔一達の元に向かった。
「想像以上だ。 ゼウスよ」
メフィストは口元の血を指で拭い、そう言った。
ゼウスは苦しそうに息を切らし、左手で左胸を押さえている。
「寿命を犠牲に魔力を生み出すとは……。 だがそこまでしても俺には届かない」
「それは……残念ですね……」
ゼウスは右手をメフィストに向けた。
「無駄だゼウス。 いくら魔力量が多くても体力が残りわずかでボロボロの体では技をいかしきれない」
ゼウスはメフィストに向かって炎の玉を放ったがメフィストに届くこと無く炎の玉は消え去った。
「去らばだ。 ヘラの娘よ」
ミカエルの指の動きに合わせて無数の青い欠片がペルセポネとベルフェゴールを貫いていく。
「ここまで絶対防御の盾を分解出来るなんて……!」
「今までは最高で四つだったが……。 今は軽く百を越えているな」
ガブリエルとラファエルは驚きながらそう呟いた。
「メイちゃんはどう?」
ガブリエルはウリエルの腕の中で苦しそうに喘いでいるメイを見て言った。
「今は「慈愛」の魔力で癒してるから少し落ち着いてるよ」
「そう……。 なら今のうちにここから退避しましょう。 私達ではここに居ては邪魔になるかも……」
「嫌だよ! お兄ちゃんを置いていくなんて……!」
「ウリエル。 さっきも言ったが……ミカエルは……もう……」
ラファエルの言葉を聞いてウリエルの目に涙がうかんだ。
「お兄ちゃん……」
ウリエルはミカエルを見つめて呟いた。 ミカエルは翔一と共にペルセポネとベルフェゴールを圧倒している。
「行こう! ウリエル!」
ガブリエルがウリエルの手を掴んだ時、爆風が発生し、ガブリエル達は思わず目を閉じた。
「ゼウス様!?」
翔一が叫ぶとそこには大量の血を流して倒れているゼウス。 その横にはメフィストが立っていた。
「なるほど……。 このペンダントに魔力が詰まっていたと」
メフィストの手には黄色に輝くペンダントが握られていた。
「メフィスト……!」
「そう睨むなよ。 敗者は命を落とす。 ごく自然な事だ」
メフィストはそう言ってペンダントを足元に捨てた。
「異論はねえよ」
ミカエルはそう言ってベルフェゴールに向けて光を放ち、ベルフェゴールは消滅した。
「なら話は早い」
ミカエルがペルセポネに向けて光を放ったときには既にペルセポネはメフィストの横に移動していた。 メフィストがペルセポネを自分の横に移動させたのである。
「ペルセポネ。 お前は後ろの妖精族を殺れ。 この二人は俺が殺る」
「承知した」
メフィストは二人に向けて衝撃波を放ち、ミカエルは巨大な盾を作り出して攻撃を防いだ。
翔一はメフィストに向かっていき肉弾戦を開始し、ミカエルもそれに参戦する。
「妖精神と「祖の魔力」を使う人類か……。 厄介な相手だ」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
翔一はそう言ってメフィストを殴り飛ばし、ミカエルが光を乱射する。 しかしメフィストの目の前に現れた黒い円に全て阻まれてしまった。
「ガンガン行くぞ! 翔一!」
「オッケー! ミカエル!」
二人はメフィストに向かって行った。
正直日曜日に更新しようとか思っていたのですが、流石に間が空きすぎていると思ったので更新しました。
最近 黒と白の暗殺者 の方に力を入れてしまっているので中々こちらの執筆が……。
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