禁断の果実と魔力
読んでいただけるとありがたいです。
メフィストはゆっくりと手を向けた。
「舐めんな……!」
ミカエルはメフィストに殴りかかった。
「ほう。 まだ動けるか」
メフィストは一旦距離を取るように後ろに下がった。
「翔一立てるか!?」
「もちろん!」
ミカエルの問いに答えると同時に翔一は立ち上がった。
「みんなは……?」
翔一が周りを見渡すとウリエルとメイはペルセポネとベルフェゴールに襲われており、ラファエルとガブリエルはルシファー達に追い詰められていた。
「もう魔力が……!」
「みんなを助けに行くぞ!」
ミカエルはそう言ってガブリエルとラファエルの元に向かって行く。
「行かすと思うか?」
メフィストはミカエルに手を向けた。
「頼みます……!」
翔一がそう言ってウリエルとメイの元に向かって行き、メフィストの前にはレノーラとゼウスが立ちはだかった。
「比較的魔力が一番残っている様だが……お前達では俺を止めることは出来んぞ」
怯むことなくゼウスはメフィストに手を向け、レノーラは剣を構えた。
「死ぬ覚悟は出来ているな?」
メフィストは二人に襲いかかった。
ガブリエルとラファエルはべリアルの攻撃を必死に回避していた。 二人を包んでいた光は既に消えていた。
「究極魔力も消えて魔力もほぼ無いぞ」
「戦況は……絶望的ね」
それに対して魔神族達は絆魔力を発動しており、べリアルの後ろではレヴィアタンとルシファーが余裕そうに構えている。
「こっちにミカエルが来てくれるみたいね」
ガブリエルは攻撃を回避しながら、こちらに向かって来るミカエルに気づいた。
「でもミカエルも魔力が……」
ラファエルはべリアルを蹴り飛ばしながらそう言った。
実際ラファエルの言う通りであり、ミカエル達の魔力は底をついていた。 まだ余裕があるのはレノーラ、ゼウス、そしてメイの三人位であった。
「まだ蹴り飛ばせる程度の力はある様だな」
べリアルはそう言いながら立ち上がった。
「べリアル。 ミカエルがこちらに来ますが……」
「任せるさ」
「分かりました。 私が対処します」
そう言ってルシファーはミカエルの方向へ向かって行った。
「さあ……どこまで粘るかな?」
べリアルは拳を振りかざし、二人に襲いかかった。
「メイ下がって!」
巨大な炎の玉がウリエルとメイに向かって放たれ、ウリエルは懐から笛を取り出した。
ウリエルが曲を吹き始めると炎の玉は軌道を変え、ウリエルとメイには当たらなかった。
「防戦一方じゃな」
後ろにペルセポネが回り込み、前からはベルフェゴールがこちらに向かって来た。
「やばっ……!」
ウリエルがメイを庇おうとした時にはウリエルはベルフェゴールに蹴り飛ばされ、メイはペルセポネに首を掴まれていた。
「メイ!」
ウリエルはメイの元に向かおうとするが、ベルフェゴールが立ちはだかり上空から隕石をまるで雨の様に降らし始めた。
ウリエルは必死に音で隕石の軌道を変えていくがメイの所へは進めそうに無い。
ベルフェゴールの横でペルセポネは微笑んだ。
「これを入れるんじゃな」
ペルセポネは懐から注射器の様な物を取り出した。
ペルセポネから逃れようとメイはもがくがペルセポネはメイの首をしっかりと掴んでいる。
「どんな声で鳴くのやら……」
ペルセポネはメイの首に自分の指の隙間から注射器を乱暴に刺した。 ペルセポネはそのまま中の液体をメイの体内に注入した。
次の瞬間メイは絶叫した。
「素晴らしい。 良い声じゃ」
ペルセポネはそう言ってメイを降ろした。 メイは地面にのたうち回り、首筋を押さえて叫んでいる。
ペルセポネはメイを見て頬を赤く染めながら、手を顔に添える様にして微笑んだ。
「本当に素晴らしい。 至高の声じゃな」
メイは苦しそうに喘ぎながら地面に這いつくばっている。
「私に……何したの……!?」
「別に大した事では無い。 少し血を入れただけの事」
「血……? 一体……誰の血を……」
ペルセポネは笑いながらメイの顔を覗き込む様にして屈んだ。
「海洋邪神じゃ。 特別製のな。 そなたを海洋邪神の後釜にする。 海洋神の力も使えるなら一石二鳥じゃ」
「クラーケンの……血……」
「そうじゃ。 そなたは今からクラーケンへと姿を変える。 クラーケンになると美しく無いからの。 今のうちにそなたの苦痛の叫びを聞いておこう」
ペルセポネはそう言って懐から注射器を取り出した。
「まだまだある。 先程ルシファー達から預かったのでな。 使わせて貰うぞ」
「いや……もう止めて……お願い……」
メイは苦しそうに喘ぎながら後退りをするようにペルセポネから離れようとするがペルセポネは笑みをうかべながらメイの髪を掴んだ。
「良いのう。 その表情」
ペルセポネはメイの腹部に注射器を刺した。
「ああああああああ!」
メイは腹部を押さえて絶叫した。
「素晴らしい」
ペルセポネは更に背中に注射器を刺した。 そしてクラーケンの血をメイの体に注入していく。
「くる……し……い……!」
メイは地面にのたうち回り、頭を押さえて絶叫している。
「ああ……至高の悲鳴じゃ」
ペルセポネは微笑みながら更に懐から注射器を取り出した。
「さあ……もっとじゃ!」
ペルセポネはメイに注射器をまるで剣を刺すかの様に振り降ろした。
「怒神鉄槌!」
ペルセポネの目の前に翔一が現れ、ペルセポネを殴り飛ばした。
「ごめん! サタンに邪魔をされて……」
翔一が振り返るとサタンは既に翔一に向けて衝撃波を放っていた。
(ウリエルの所に行かないと……!)
翔一はメイを抱きかかえるとベルフェゴールの元に瞬間移動した。
「…………!」
ベルフェゴールは翔一に気づき、ウリエルへの攻撃を止めて翔一の方を見た。
(一瞬だけなら……!)
次の瞬間 翔一は光に包まれ、メイはウリエルの元に瞬間移動していた。
「メイ!」
ウリエルはメイを抱きしめた。 それを見てベルフェゴールは不思議そうに首をかしげている。
「究極魔力か……。 もう時間切れかと思うたが……」
そう呟きながらペルセポネは立ち上がった。
「まだ一瞬だけなら出来そうだったからね」
翔一はそう言いながらペルセポネに向かって行った。
「まだ希望を捨てておらぬとはな」
ペルセポネはそう言って手を翔一に向けた。 次の瞬間に巨大な炎の玉が翔一に向けて放たれた。
翔一は黙って手を胸に押し当てた。
(大丈夫。 覚悟は決まった……!)
翔一は黒い光に包まれた。
サタンはミカエルを殴り飛ばした。 ミカエルは地面を転がり、咳き込みながら立ち上がった。
「一人は翔一の方に向かって。 もう一人はこちらに来られたのですか。
魔力は大丈夫なのですか?」
「確かに先程の繋技で魔力は消耗したがそれは向こうの個体だ。 俺は問題ない」
ルシファーの問いにサタンはそう答えた。
「さて妖精王ミカエルよ。 お前はここで死ぬ事になるが心配はするな」
サタンはミカエルに再び拳を振りかざした。
「全員またすぐに会える。 あの世でな」
サタンは拳を振り下ろし、ミカエルは攻撃を回避したがルシファーの剣でミカエルは突き飛ばされた。
「こ……の……!」
ミカエルはゆっくりと立ち上がった。 サタン達の後ろではガブリエルとラファエルがべリアルとレヴィアタンに打ちのめされている。
「滅びろ。 神に逆らった愚かな種族よ」
ルシファーはミカエルに向けて竜神の炎を放とうとしたがある異変に気づき、攻撃を中止した。
「これは……!?」
ルシファーは目線を翔一達の方へ向けた。 サタンも異変に気づいている様で既に翔一達の方を見ていた。
「何故……首領の魔力が……?」
「何……じゃと……?」
ペルセポネは目の前にいる敵。 黒く光る球体に困惑した。
「何故そなたから……メフィストの魔力を感じる……!?」
ペルセポネは翔一に向けてそう叫んだ。
「うるさいな」
黒く光る球体の中から雷が放たれ、ペルセポネの体を貫いた。
「なっ……!?」
ペルセポネは腹部を押さえて地面に膝をついた。 横にいたベルフェゴールがペルセポネの傷を癒やしていく。
「ただ魔力を奪い取っただけだよ」
光の玉の中から翔一が姿を現した。 今までと見た目は特に変わってはいないが黒いマントを身に纏っていた。
そして何よりも禍々しい魔力を発していた。
「絆魔力とでも言うのか……!」
「そうだね」
翔一がそう呟いてペルセポネとベルフェゴールを睨み付けると二人は暴風で吹き飛ばされた。
「翔一……? それは……?」
「心配しないで。 ウリエル。 ちゃんと自我は保ててる」
そう言って翔一は優しく微笑んだ。
「ウリエルはガブリエル様とラファエル様と一緒に逃げて。 ここは僕と……多分ミカエルと二人でやる」
翔一の言葉にウリエルは困惑した。
「お兄ちゃんと二人だけで魔神族達と殺り合うの!?
そんなの無茶だよ!」
「でもこのままじゃ全滅だ。 それは出来る限り避けないとね」
翔一はそう言ってウリエルとメイの手を掴み、ペルセポネとベルフェゴールの方を見た後にミカエル達の方を見た。
次の瞬間には翔一はミカエル達の目の前に現れ、サタンとルシファーを蹴り飛ばした。
「翔一……!」
ミカエルは少し驚いた様な顔をしている。
「ミカエルは皆を連れて逃げて。 ここは僕が」
「待てよ翔一。 使う時は俺も使うって言っただろ」
「ミカエルのはリスクが大きすぎる。 まだ大丈夫でしょ」
翔一はそう言ってウリエルとメイの腕を掴んだままミカエルに自分の肩を持たせた。
「行くよ」
翔一はガブリエルとラファエルの元に瞬間移動した。
「吹き飛べ」
翔一がそう呟くとべリアルとレヴィアタンは暴風に吹き飛ばされた。
「さあ、メフィストが来る前に早く逃げて」
「翔一……その魔力は……!?」
「また今度説明します」
翔一は優しく微笑みながらそう言った。
「さあ、早……」
次の瞬間何かが翔一の言葉を遮るかの様に爆音と共に爆発した。
「なっ……!?」
誰かが爆炎の中から姿を現し、こちらに向かって歩いてくる。
「メフィスト……」
こちらに歩いてくるのは間違いなくメフィストだった。 後ろではゼウスとレノーラが血を流して倒れている。
「翔一。 俺も使う。 使うには十分過ぎる状況だ」
「じゃあ……頼ろうかな」
翔一は悲しそうに微笑むとそう言った。 ミカエルも微笑みながらウリエルの方を向くとウリエルの頭を優しく撫でた。
「お兄ちゃん?」
「なあウリエル。 お前の夢は立派な妖精女王になること。だったよな」
「う……うん。 まだまだ遠い夢だけど……」
ミカエルは少し笑い、ウリエルの目を見つめた。
「俺は一応妖精王だったけど……。 まあ姉ちゃんと比べたら何も出来て無かった。 だからこんな綺麗事言える立場でも無いけど……」
ミカエルはウリエルを優しく抱きしめ、ゆっくりと離れた。
「追い続けた夢に向かって諦めずに頑張れよ」
ミカエルはそう言って翔一の横に並び立った。
「本当にいいの? ミカエルは別に逃げていいんだよ?」
翔一は笑いながらそう言った。
「冗談だろ。 あんなセリフ言って逃げるか馬鹿」
ミカエルも笑いながら懐から林檎の様な果実を取り出した。
「ミカエル!?」
「それは……!」
ラファエルとガブリエルは目を見開いた。 まるで信じられない様な物を見たかの様である。
「禁断の果実よ。 我の願いを聞き入れよ。
妖精族のガブリエル、ラファエル、ウリエルの力をこの身に借り受ける!」
ミカエルは果実をかじり、呑み込んだ。
テスト勉強する
とか言いながら全くせずに書きました(笑)
来週は流石に無理……かな……
もう一つの作品
黒と白の暗殺者~剣に誓いし絆~
もよろしくお願いいたします。
まだ話数少ないですけどw