夜空に消えし言葉
読んでいただけるとありがたいです。
「もう随分と体の調子は良さそうね」
「おかげさまで♪」
レノーラとメイは遊真達がいる学校に向かっていた。
「お姉ちゃん何してるかな」
「多分訓練室にいるんじゃないかしら」
そう言ってレノーラとメイは学校に着くと、訓練室に向かった。
「神の衝撃」
遊真の手から衝撃波が放たれ、ウリエルは音を使い軌道を変え、衝撃波は訓練室の壁に激突した。
凄まじい音をたてたが訓練室に穴は空いていなかった。
「何だ……? 今何が……?」
「凄い……! あれが二人の覚醒魔力なの……?」
弘行と真優は呆気にとられていた。 真優と弘行の二人はほぼ同時に瞬きをした。 そして再び目を開けた時にはウリエルは遊真の目の前に移動していた。
「音速の刃」
ウリエルが笛を振り回し、訓練室に刀傷が刻まれていく。 遊真は回避しながら手をウリエルに向けて再び衝撃波を放った。
ウリエルは笛を口につけ曲を演奏した。 遊真の衝撃波は軌道を変え、再び訓練室の壁に激突した。
「千本桜」
遊真は手を合わせてウリエルに向かっていく。 地面から無数の樹木が姿を現し、ウリエルを縛ろうとするがウリエルの周りにバリアでもあるかの様に樹木はウリエルに触れることすら出来ていない。
「心を奪う音色」
ウリエルは自分の周りに音符を作り出し、遊真に向けて放った。
「雷華」
遊真は雷を体に纏いウリエルの攻撃を回避していく。
「雷神鉄槌」
遊真は右手に雷を集中させウリエルに拳を振り下ろした。
床に大きな音と共に遊真の拳は床に激突した。 ウリエルは既に遊真の頭上に移動していた。
「心を奪う音色」
ウリエルは再び遊真に向かって音符を放つが遊真が右手を前に出すと、ウリエルが放った音符は全て消えていった。
「流石だね。 遊真」
「ウリエルもな」
そう言ってお互いに笑みをうかべると再びウリエルは音符を遊真に向かって放ち始め、遊真は全て異空間に飛ばしていく。
「その辺にしときなよ」
そう声をかけられ、遊真とウリエルは同時に声の主の方を見た。 そこにはレノーラとメイが立っていた。
「レノーラ。 メイ。 来てたのか」
「うん。 みんなに会いに来たよ」
そう言ってメイは笑顔で答えた。
「メフィストが来たら戦える位に力は残しといてよ」
「分かってるよ」
遊真はそう言って弘行達の元に戻ると自分用の水を飲んだ。
「なんか……凄かったな……。 あんな本気でやらなくても」
「でも魔力消費が激しいの……?」
弘行と真優はそう言った。
「本気じゃないよ。 俺もウリエルも。 それにあの程度じゃ疲れないから大丈夫だよ」
遊真は床に座りながらそう答えた。
「あれで本気じゃないのかよ」
「二人とも次元が違うね……」
「そんなに萎縮するなよ」
遊真は笑いながらもそう言った。
「脅すわけじゃ無いけど魔神族の一番強い奴は俺より強いよ」
遊真はそう言って立ち上がった。
「え……」
「そんな奴どうやって……」
「だから訓練があるんだよ。 二人もちゃんと強くなってるだろ」
遊真はそう言ったが真優はまだ少し怯えている様だった。
「大丈夫だって真優。 そういう奴等は俺たちがやるから。 真優の役目は他の魔神族からみんなを守る事だ」
遊真がそう言うと真優は顔を上げた。
「死なないでよ」
真優は泣きそうな声で言った。 遊真は笑顔をうかべて答えた。
「もちろん」
ミカエルと翔一は横に並んで座っていた。 二人とも息をきらしている。
「一応出来る様にはなったな」
「でも魔力消耗が激しすぎるね。 前にも言ったけど五分くらいが限界だ」
「でもこの力は必要だな。 絆魔力だけじゃ力不足だ。」
「僕は役に立たないかも……」
翔一がそう言うとミカエルは軽く翔一の頭を叩いた。
「助っ人を呼べるのは凄い魔力だ。 俺なんて攻撃に使えないんだぞ」
「まぁ……そうだけど……」
翔一は自分の頭をさすりながらそう呟いた。
「後は俺はあの林檎を使いこなせるかと、翔一はあいつから魔力を奪えるかだな」
「奪ってみせるよ」
翔一はそう言って立ち上がった。
「みんなの所に戻ろう。 一応僕達は教官だからね」
ミカエルは頷くと立ち上がった。
最後にチーム戦をもう一度行い、今日の訓練は終わった。
「お兄ちゃんと翔一は何の特訓をしてたの? 新しい技?」
「まぁそんなとこだ」
ミカエルはそうあっさり答えた。
「遊真とウリエルも一戦交えたんでしょ?」
「少しだけな」
「僕達も戦闘訓練しないとね……」
翔一はそう言うと振り返ると遊真の肩に手を置いた。 遊真は振り返ると真優がこちらを見つめていた。
「お客様だよ」
「あぁ。 先に帰っててくれ」
そう言うと遊真は足を止め、翔一達は城に向かった。
「どうした真優?」
真優は下を向くと小さな声で呟いた。
「遊真君って……お母さん結菜さんだよ……ね?」
「あぁ……そうだけど。 何で知ってるんだ?」
遊真がそう言うと真優は慌てる様に
「え!? あ……気、気にしないで!」
と言って走り去って行った。
(なんなんだ一体……?)
遊真は疑問に思いながら城に向かった。
真優は近くの木にもたれ掛かり、走って乱れた息を整えた。
(やっぱり記憶が飛んでるのかな……)
真優は再びゆっくりと歩き出した。
(でも小さい頃だったから忘れててもおかしくないよね……)
真優はため息をついて小さな小さな声で呟いた。
「遊真お兄ちゃん……」
真優が見上げた夜空は星が綺麗に輝いていた。
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