Contract Completion
更新が遅くなってしまい大変申し訳ございません
m(._.)m
読んでいただけるとありがたいです。
「ふざけんなよ……! 俺と同じ「言霊」を……!」
「別に親のヘラが三種類使えたんです。 私が使えても不思議ではないでしょう?」
「しかし「想像」の力は遊真が受け継いだのか」
メフィストはベルゼブブとゼウスの会話を聞き、遊真を見て言った。
「……俺は初めて知ったけどな」
遊真は苦笑いをしながら呟いた。
「ベルゼブブ、絆魔力を使え。 死ぬぞ」
「分かってるよ」
「ではこちらも行こうか」
メフィストは遊真に右手を向けた。
「竜神王衝撃」
遊真はほぼ反射的にレノーラの手を握り、上空へ瞬間移動した。 次の瞬間遊真の遥か後方にあった山が土砂崩れでも起きたかの様に崩れた。
「……は?」
二千メートルはあるであろう山が巨大な音を立てながら崩れていく。
(あんなもん食らったら想像するまでもなく即死じゃねぇか!)
遊真はあまりの威力に背筋が寒くなった。 メフィストは再び遊真とレノーラに手を向けた。
遊真は再び瞬間移動で回避し、先程まで遊真達がいた場所の上空の雲が消し飛び、雲一つない青空へ変わった。
「どうしたレノーラ?」
メフィストはニヤリと笑みをうかべた。
「父の力は超えれないか?」
「父の……?」
遊真はレノーラの顔を見た。 特にレノーラには表情の変化は見られず、無表情だった。
「超えなきゃ貴方は倒せないでしょう」
レノーラは静かに遊真の手を握った。
「こ……の……!」
マリーは浮きながら苦しそうに息をしていた。 下にはウリエルが笛を吹いており、横ではミカエルがウリエルと自分を守る様に盾を近くで待機させている。
(どんなに攻撃しても全て軌道が途中で変わる……!)
マリーは現在遠距離からウリエル達に攻撃をしかけていたが全て攻撃は当たらず、笛の音色を聞けば一巻の終わりなので近づくことも出来ないといった状況であった。
(降りてこないな……音色を警戒しているのか)
ミカエルはウリエルの横でマリーを見上げながらそう思った。
「どうするウリエル? このままじゃこっちも攻撃が当たらないぞ」
ウリエルは笛から口を離し、笑顔を作り、ミカエルの耳元に口を近づけ、小さな声で話した。
ミカエルは一瞬驚いたが、すぐに笑って頷いた。
「それなら簡単に行けるな」
「うん! お兄ちゃんには一切影響は無いようにするよ♪」
「じゃあ行ってくる!」
ミカエルは盾に乗り、マリーに近づいていく。
(こいつが囮で音色の玉をぶつける気か?)
マリーはそう思いウリエルの方を見たが周りに音符の玉が浮いているだけで特に近づいてくる様子は無い。
「妹を狙う暇があるのか?」
ミカエルは自分の足元に最小限のバリアを残し、他の盾を全て槍に変形させた。
(とりあえずはこいつか……!)
マリーは槍を回避すると海洋邪神の力を再び使った。
「水槍!」
マリーが水の槍を打ち出し、ミカエルの槍と激しくぶつかり合う。 ミカエルは移動を始め、マリーの攻撃を建物を盾にする様にして逃げ始めた。 ガラガラと音を立てながら家や建物が壊れていく。 マリーは逃げるミカエルを槍を放ちながら追いかけていく。
「どうした!? 逃げるだけか!?」
「まぁそういうなよ。 もう終わる」
ミカエルがそう言った瞬間マリーは視界が歪み、建物に激突した。
「えっ……!?」
マリーは咄嗟に立ち上がろうとするが体が思うように動かず、その場から動くことすら出来なかった。
「残念だったな」
ミカエルはマリーを見下しながら言った。 マリーはミカエルの反対側を見るとウリエルがこちらに近づいてきていた。
「一体……どうやって……!?」
「簡単だよ。 貴女がお兄ちゃんを攻撃していた時に建物が崩れたりしたでしょ? あの時の建物が壊れる音が私が奏でていた音色だったってこと♪」
マリーは唖然とした。
「馬鹿な……貴女の音はその建物が崩れる本来の音でかき消されるはずじゃ……」
「普通ならね。 だからお兄ちゃんには私の「無音の空間」の中を飛んでもらったの。 貴女の攻撃を防いでいる時に既に準備はしていたの」
「しかし距離があったはず……! 笛の音色や貴女の歌声は届かない……!」
「後を追いかけながら笛を吹いたよ? やっぱり気づいてなかったんだ。 最初に私の方を見てからずっとお兄ちゃんを追いかけるのに必死だったもんね」
ウリエルはゆっくりと笛を口元へ近づけた。
「くっ……!」
マリーは水を使い上へ逃げようとしたがミカエルの樹木に縛られ身動きを封じられた。
「今はまだ殺さない。 でも少しの間眠っててもらう」
ウリエルはそう言って笛を吹き始めた。 マリーは最初は必死に抗っている様だったが、やがて頭がだらんと下を向き、意識を失っていた。
「とりあえずはこれで大丈夫なんだな?」
「うん。 マリーは裏切り者だけどロケスとデュークの意見を聞いてから生死は決めようかなって」
「随分と優しいな」
「いつものことだよん♪」
ウリエルはそう言ってゴーレムが待機しているであろう場所へ向かって行った。
(こいつはメイの姉でもあるが仇でもあるんだよな……。
あいつ何を考えてるんだ……?)
ミカエルはウリエルの後ろ姿を見つめながら少し考えた後、ウリエルの後を追った。
既に何度も大爆発が起こったかの様な爆風が巻き起こっている。 遊真達の横の遠方でゼウスとベルゼブブが戦っている余波だろう。 先程から雷やら隕石等が落ち続けている。
それに比べてこちらはまだ随分と静かだった。
「レノーラ?」
遊真はいきなりレノーラに手を握られ、少し驚いていた。遊真とレノーラの後ろには翔一がおり、メフィストの後ろにはアイモデウスが待機していた。 メフィストは視線をレノーラに向けたまま話を続けた。
「父を超えるか……。 人化の魔力を使ったまま勝てるとでも? 第一遊真の力では俺は倒せんぞ」
「貴方のいう通りこの姿では勝てないでしょうね。 だから今からこの魔力を解く。 力はもう溜まったから」
メフィストは少し驚いた様な反応を見せた。
「なるほど……。 魔力を解くか……確かに時間は十分にたったな」
「えぇ。 それと遊真、貴方に言っておかなくちゃいけない事があるの」
「俺に……?」
遊真が首をかしげるとレノーラは頷いた。
「まず私は貴方を騙していたという事。 もう一つは貴方に力を貸すのが本当に遅くなってしまった事」
「騙していた……?」
レノーラは再び頷いた。
「正確にはみんなを騙していた。 私の口元には牙があるのは知ってた?」
「あぁ、だからレノーラは吸血鬼なんじゃ……」
レノーラは今度は首を横に振った。
「違うの。 私はヴァンパイアじゃない。 私は竜神族よ」
「ドラ……ゴン……?」
レノーラは無言で頷いた。 その目を見れば嘘を言っているのではないと分かる。 遊真はメフィストがいいかけていた事を思い出した。
「一人の名はルーク。 もう一人は……」
「私よ。 ルークは私の弟だから」
遊真は自分の予想よりも遥か斜め上の事実に驚愕していた。
「そして遊真。 私の力を今、貴方に与える」
レノーラの言葉を聞き、遊真は理解した。
「俺に資格があるのか?」
「勿論」
レノーラは笑顔で再び遊真の手を握った。 二人はメフィストの方へ向き直った。
「メフィスト。 貴方のもう一つの問いに答えるわ」
「問い……? 遊真の力では勝てんと言ったことか? 別に事実を言っただけだ。 問いではない」
「いいえ。 貴方は理解していない。 ベルゼブブもそう。 貴方たち二人は「絆魔力」のパートナーを洗脳したり、力を奪い取る様な形でパートナーの力を使っている」
「そうだな。 俺はお前の父を殺す直前に力を奪い取った。 ベルゼブブもレヴィアタンの魔力を使い洗脳したんだろう」
「それでは力は十分に発揮出来ないのよ。 心を通わせた、ちゃんと同意して譲渡した「絆魔力」はもっと強い!」
レノーラがそう言うとメフィストは鼻で笑い、遊真とレノーラに手を向けた。
「ならば証明してみろよ」
メフィストの手から衝撃波が放たれた。
「遊真」
「あぁ」
二人は目を閉じると光に包まれた。
(僕は逃げよう!)
翔一は上空へ瞬間移動した。 その直後巨大な音が聞こえ、風が起こった。 翔一はおそるおそる下を見た。 そこで翔一は違和感を覚えた。
(どこの地面も……抉れていない……?)
メフィストが今放った衝撃波による破壊痕はいっさい無かった。 翔一は遊真達がいた場所を見て息をのんだ。 砂ぼこりのなかで光を反射してキラキラと光る巨大な生物がいた。
それは先程ロケスとデュークが倒した竜よりもずっと美しく、体も大きく、翼も大きかった。 キラキラと光を乱反射している鱗は正にダイヤモンドの輝きだった。
そして横にはその金剛石の鱗を纏った、一人の男が右手をメフィストに向けていた。
(相殺した……か……)
メフィストは面白くなさそうな表情をしながらそう思った。
竜神が一回翼を開くと砂ぼこりが晴れ、翔一はそのまま落下し、地面に着地した。
遊真は笑顔を浮かべ、メフィストの方を真っ直ぐに見ながら言った。
「契約完了」
まだしばらくは更新が遅くなりそうです……