絶技
過去最長に……!
読みにくかったら申し訳ございません。m(._.)m
「何……言ってんだよ翔一!?」
遊真は翔一の言っている事が理解出来ずにいた。
「だから俺は翔一じゃなくてメフィストだっての」
翔一はそう言って話を続けた。
「まぁ簡単に言うと凄い強い女神族がいてそいつに封印されちまってやっと今 目を覚ましたって感じだな」
「何で……翔一に……?」
「ん?あぁ、封印っつっても俺を霊化させただけだ。 充分凄いと思うけどな。 まぁそれで俺は色々とさ迷いながらある日の夜にこいつに取りついた訳だ。 後は眠りについてゆっくり力を戻すだけ。 随分と時間がかかったがな。 それはこいつの精神面の強さが天晴れと言えるべき強さだったからだ」
メフィストはそう言ってベルゼブブの方を見た。
「割りと苦戦してたなベルゼブブ。 俺がやろうか?」
「お前が殺るとすぐに終わっちまうと思うがな」
「いいじゃねぇか。 簡単に終わる方が楽だろう?」
そう言ってメフィストは手を遊真とレノーラに向けた。
「太陽の爆炎」
メフィストの手から百メートルを優に越える炎の玉が放たれた。
「麒麟の雷鳴!」
ウリエルが体全体から雷を放ち、クラーケンの足を痺れさせ、その隙にメイがウリエルを水の鞭でウリエルを引き寄せた。
既に双方ともかなり消耗しており、ウリエルは息を切らし、メイはもう杖にもたれ掛かる様にして立っている。 マリーは右腕がなく、クラーケンも先程の雷でぐったりとしている。 この三人と一匹は戦いに必死で翔一の変貌には気づいていなかった。
「この……役立たずが調子に乗りやがって……!」
マリーは巨大な水の玉を作り上げ、上空に浮かべると
「死の雨!」
体を貫く程の水圧と勢いで雨を降らした。
「お姉ちゃん! 私の近くに!」
ウリエルは頷くと、メイの横に跳ぶと、メイが杖を振り上げ、水の盾を作り出した。
「クラーケン!」
マリーがそう叫ぶと下からクラーケンの触手がメイとウリエルを殴り飛ばした。
「メイ!」
ウリエルはメイを抱きしめるとマリーの降らす雨を多少食らいながらも回避した。
「お姉ちゃん!」
メイはウリエルの傷を治そうとしたがウリエルは首を横に振り、マリーの方を見た。
「メイ、あとどれくらい力は持つ?」
「正直……もうあんまり長くは持たないよ……」
「じゃあ次で決めよう。 私が隙を作るから」
メイは頷くとすぐさま魔力を溜め始めた。 ウリエルはクラーケンとマリーに向かって行った。
「あいつの大技で決めるって!? 無理に決まってるだろ!」
クラーケンがウリエルの道を塞ぎ、マリーは魔力を溜め始めた。
「どけこのデカ烏賊!」
ウリエルは体全体を纏っていた雷を右腕に集中させた。
「雷神鉄槌!」
クラーケンの触手を一撃で全て殴り飛ばし、ウリエルはマリーの目の前に飛び出した。
「痺れる電気」
ウリエルは少量の雷をマリーに流した。
「っ……体が……!」
「メイ!」
そう言ってウリエルが振りかえるとメイの上空に百メートルを優に越える程の巨大な舟の形をした水の塊が出来ていた。
ウリエルは力を振り絞って地面を蹴り、メイより後ろへ着地した。
「ノアの方舟!!」
メイが杖をマリーに向けると巨大な舟の形をした水の塊がマリーに向けて飛んで行った。
「く……そ……が……!!」
巨大な水しぶきをあげながら舟の形をした水の塊が爆発した。湖の水が無くなる程上空に水しぶきがあがった。
「はぁ……はぁ……」
メイは杖にもたれ掛かるとウリエルに笑顔を見せた。 ウリエルも安心した様に笑顔をうかべた。 二人はふらふらしながらもお互いに近寄ろうとした瞬間に水の槍がメイの腹部を貫いた。
「レノーラ!」
遊真はレノーラの手を掴み、瞬間移動でメフィストの攻撃を回避した。
(あんなデカイ炎の玉を……!)
遊真は少し恐怖を覚えながらもレノーラと共に構えた。
「ん? ベルゼブブ、あいつ「祖の魔力」使えるのか?」
メフィストはベルゼブブの方に振り向いて言った。
「あぁ、「想像」の魔力だ。 使用している時はペンダントが光る」
「ほう。 まぁ一つだけなら問題ないか」
メフィストは再び手を前に出した。
「切り裂け。 風刃」
再び五十メートル程の巨大な風の刃が遊真とレノーラに襲いかかった。周りの木々がまるで豆腐の様に切れていく。
「レノーラ! もう一回……!」
遊真はレノーラに手を伸ばすと目の前にベルゼブブが現れ、遊真を蹴り飛ばした。
「っ……! レノーラ!」
ベルゼブブは遊真の横に瞬間移動し、遊真に拳を突き出した。 遊真は拳をよけ、ベルゼブブを殴り飛ばした。 遊真はレノーラの元へ行こうとしたが既に風の刃はレノーラに当たる寸前だった。 レノーラはもう一本剣を取りだした。
「双斬撃!」
レノーラは自分の目の前の風の刃を自分の斬撃でかき消した。
「レノーラ!」
遊真はレノーラの横に着地した。 レノーラは遊真を見て少し微笑んだがすぐにメフィストを睨み、剣を握りしめた。 するといきなりメフィストが笑い声を上げた。
「レノーラか! なるほど強いわけだ。 まさかまだ生きていたとは思ってなかったぜ」
「レノーラ? あいつを知ってるのか?」
遊真はレノーラを見ながら聞いた。 いつも優しい表情をしているレノーラの表情はうっすら涙を浮かべ、メフィストを睨みつけている。
「あいつが私の弟を殺した魔神族よ」
「……え!?」
メフィストは再び笑い声を上げた。
「そうそう、お前を庇うために犠牲になった奴か。 にしてもお前の弟にしては色が違ったよな。 まさしくお前の劣化版だ」
「黙れ!!」
レノーラは剣を両手に持ち、メフィストに向かって行った。
「レノーラ!」
遊真はレノーラを追おうとしたが再びベルゼブブが目の前に立ちはだかった。
「無駄だ。 メフィストが目覚めた以上お前達に勝ち目はない。
メフィストは三種類の「祖の魔力」を持つ。 正しく魔神族最強の男だ」
「な……!?」
遊真はレノーラの方を見た。 レノーラは剣でメフィストに攻撃しているがメフィストの横からアイモデウスとレヴィアタンの援護攻撃を受け、メフィストに蹴り飛ばされた。 メフィストは右手に風を集中させ、レノーラに向かって行く。
「レノーラ!」
遊真はベルゼブブをかわし、レノーラの元へ向かおうとしたがそう簡単にベルゼブブが行かす訳もなく、遊真は横に蹴り飛ばされた。
レノーラにメフィストの拳が迫り、レノーラは回避しようとするが上からアイモデウスとレヴィアタンが攻撃をくわえている為、上手く動けずにいた。
「死ね」
しかしメフィストの拳が当たる瞬間にメフィストの拳が止まった。
「っ……! この……邪魔すんなよ……」
(うるさい…………出てけ……!)
「黙れ……もう……俺のもんだ……」
(違う……! 僕の体だ……!)
「こ……の……ベルゼブブ! 悪いが離れるぞ!」
メフィストはそう叫ぶと翔一の体から何か黒い影が飛び出した。 ベルゼブブは一旦遊真から離れ、アイモデウスとレヴィアタンもベルゼブブの横に着地した。 影はベルゼブブの横に着地し、翔一はその場に倒れた。
「悪いな三人とも。 剥がされちまった」
影は立ち上がりそう言った。 顔は大体二十代程か、身長はベルゼブブと同じ程の高さ、髪の毛もあまり長くない。
「遊真!翔一に戻ってるわ!」
レノーラがそう言って遊真は急いでレノーラと翔一の元へ移動した。
「翔一!」
「ごめん遊真……迷惑かけたね……ミカエルは?」
遊真は翔一の心配をしながらもミカエルを探した。
「何とか大丈夫だよ。 今んとこな」
そう言ってミカエルが遊真達の横に着地した。
「ミカエル! 腹は?」
「下手くそなりに回復魔力使ったよ。 一応空間で特訓しといたしな。 それより翔一に戻ったのか?」
「うん。 今の僕は翔一だよ……あいつがメフィストだ」
そう言って翔一は先程翔一から飛び出してきた男を指差した。
「あぁ、その通りだ」
メフィストはそう言って遊真達に向かってきた。
「メイ!」
ウリエルは急いでメイに駆け寄り、メイを抱きしめた。 腹部から血が止めもなく流れ出ている。 ウリエルはクラーケンの方を見た。 クラーケンは死に絶えていたが上空にふらふらとマリーが浮いていた。
「何で生きてる!?」
ウリエルはマリーに向かって叫んだ。
「簡単な話だ。 クラーケンを盾にした。 ただそれだけの事よ」
マリーはそう答え、水の槍をウリエル達に向けて放った。 ウリエルはメイを抱え、槍を避けながら遊真の元へ向かった。
(助けて遊真……!)
「貫け。天地創造の槍!」
直径七十メートルを越えるであろう巨大な槍が遊真達に襲いかかった。 周りの木々は全て風圧のみで消し飛ばされていく。
「異空間へ!」
遊真は槍を異空間に飛ばしたがすぐさまベルゼブブが遊真の懐に入り、遊真の殴り飛ばした。 遊真は吹っ飛びながらもベルゼブブへ攻撃したが全てベルゼブブの「言霊」の力により消滅した。
「相手が悪すぎる! 二人とも「祖」の魔力を持っているなんて勝ち目がない!」
レノーラは遊真を受け止めてそう言った。 横ではミカエルが翔一を背負っている。 翔一はミカエルの背中ですっかり疲弊してしまっている。 メフィストと分離したからかも知れない。
「遊真!」
すると横から声が聞こえ、遊真がその声がした方向を向くとウリエルがメイを抱きしめてこちらに向かってくる。 ウリエルの手が血だらけなのを見てメイが重症を負っている事が分かる。
後ろからはマリーが追ってきていた。 メフィストはそれを見て笑うとアイモデウスとレヴィアタンがウリエルに襲いかかった。
「ウリエル!」
遊真はウリエルの元へ向かおうとしたが目の前にメフィストが立ちはだかり、レノーラの前にはベルゼブブが飛び出していた。
(くそ……!)
遊真はメフィストに邪魔をされ、レノーラはベルゼブブに足止めされており、ミカエルは腹部の傷が完治しておらず翔一を背負っている為 グリフォンのスピードを生かしきれない。
「お兄ちゃん!」
唯一助けてくれそうなミカエルの元へウリエルは向かおうとしたがその場に膝をついてしまった。
「幻神獣」の力は消耗が激しく、ウリエルにはもう体力は残っておらず、走ることは出来なかった。 メイを抱っこしているなら余計に移動するのは不可能である。
「「竜神の鉤爪」」
アイモデウスとレヴィアタンの攻撃がウリエル達に襲いかかったがアイモデウスとレヴィアタンが突如吹っ飛び、地面に着地した。
「大丈夫かウリエル?」
「すまない遅くなった」
攻撃を防いだのはロケスとデュークであった。 二人とも息を切らしてはいるが大きな怪我などはなさそうである。 後ろには二体の竜神が地面に倒れており、立ち上がりそうな気配は無い。
「状況は戦いながら少し見ていたから大体理解してる!」
「メイ姫を遊真に!」
ロケスはウリエルを背中に乗せ、遊真の元へ走ろうとしたがマリーが上空から攻撃を仕掛けてきた。
「ロケス先に行け!」
デュークが翼を使って飛び上がり、マリーに襲いかかった。
「メイ!」
ウリエルは必死に回復魔力を使うが体力の限界があり少ししかメイの傷を回復することが出来ていなかった。 ウリエルに抱きしめられながらメイは苦しそうに喘いでいる。
「あいつはもう死ぬ。 クラーケンの毒と呪いを混ぜておいたからな……遊真の力でも助からない!」
「妹を殺すのか? マリー姫!」
デュークはマリーを蹴り飛ばし、マリーは地面に叩きつけられたがすぐに反撃に出た。 水の槍を飛ばしデュークを地面に叩き落とした。
(我々も限界だ……! ロケスも相当体力が……!)
デュークがロケス達の方を見るとアイモデウスとレヴィアタンに襲われているところだった。
「ロケス!」
デュークはロケスの元へ向かおうとするが足に水の鞭が絡まり、デュークの動きを止めた。
「行かす訳ないでしょう!」
マリーはデュークを引き寄せ、再び攻防が始まった。
「竜神の風!」
アイモデウスが強烈な突風を巻き起こし、ロケスは木に激突した。 ウリエルとメイもロケスの背中から落ちてしまった。
「邪魔すんじゃねぇよ!!」
ミカエルがいきなり現れ、アイモデウスを殴り飛ばした。背中に翔一はおらず上空で投げ飛ばされたかの様に浮いている。 ミカエルは翔一を受け止め、ロケスに預けた。
「三人行けるか!?」
「出来るだけ走るさ!」
ロケスは翔一を抱き抱え、ウリエルとメイを再び背中に乗せ、遊真の元へ走った。
「邪魔はそちらだ!」
アイモデウスはミカエルを羽交い締めにし、レヴィアタンがロケスの後を追った。
「そっちだろ!」
ミカエルは無理矢理アイモデウスの羽交い締めから抜け出し、レヴィアタンを殴り飛ばした。
「燃え尽きろ。 太陽の爆炎」
超巨大な炎の玉が放たれ、遊真は必死に回避した。
(何とかメイを治さないと……!)
「遊真後ろ!」
レノーラがベルゼブブと戦いながら叫んだ。 遊真が後ろを向いた時には既にメフィストの蹴りが当たる瞬間だった。
「がはっ……!」
遊真は勢いよく地面に激突し、レノーラも蹴り飛ばされ、遊真と激突した。 遊真は顔を上げ、周りを見渡した。
デュークはマリーと戦っており、デュークはふらふらでマリーは傷だらけでどちらが勝ってもおかしくはない。
ロケスはこちらに向かって来ているがデュークと同様にふらふらである。 背中に遊真が手当てしたいメイがいるがメフィストとベルゼブブを掻い潜りメイを回復させるのは無理があった。 何よりこちらに来たら弱っている翔一とふらふらになっているロケスとウリエルがメフィスト達に殺される危険も充分にあった。
ミカエルはアイモデウスとレヴィアタンを食い止めているが腹部を殴られたりでもしたら一気にミカエルは不利になるだろう。
(メフィストには勝てない……! ベルゼブブは俺一人じゃ止められない……! 何よりさっき微かに聞こえたマリーの話が本当なら俺ではメイを救えない……! それにこのままじゃ全員メフィストとベルゼブブに殺される!)
目の前にメフィストが放った雷が現れ、遊真は前に岩の壁を作り出した。
「突き上げろ」
ベルゼブブがそう言うと遊真とレノーラの下から岩が現れ、二人を上空へ打ち上げた。
「「落ちろ隕石」」
メフィストとベルゼブブがそう言うと二つの隕石が遊真のレノーラに襲いかかった。 レノーラと遊真は地面にめり込む程に激突し、その場に倒れた。
「遊真!」
ロケスが遊真達の方へ走ってくるがベルゼブブがそれに気づき、ロケスの方へ向かった。
「止めろ!」
遊真は自分とレノーラの体の傷を治し、ベルゼブブの元へ向かおうとするがメフィストが当然の様に立ちはだかった。 既に向こうではロケス達が吹っ飛ばされいた。
ミカエルもアイモデウスに殴り飛ばされ、木に激突し、レヴィアタンの追い打ちを食らっている。
(このままじゃマジで全滅だ…………)
遊真は拳を握りしめ、皆に向かって叫んだ。
「みんな逃げろ! 俺が一人でこいつらを食い止めるから!」
遊真はペンダントにもう一度触れた。 するとペンダントが更に輝きを放ち始めた。 遊真が手を地面につくとマリーとアイモデウスとレヴィアタン。 ベルゼブブとメフィストを巨大な樹木が縛り上げた。
メフィスト達も含め全員遊真の発言に驚いたが一番早く行動をとったのはロケスとデュークだった。 デュークはミカエルの元へ向かい、レヴィアタンとアイモデウスを蹴り飛ばし、ミカエルを抱き抱えた。
「ちょ……! デュークさん! おい遊真!」
ロケスもベルゼブブが驚いた隙に既に再び翔一とウリエルとメイを背負い、街の方向へ走り出していた。
「え……!? 遊真!?」
「無茶だ遊真!」
二人は叫んだがロケスは歯をくいしばり走りを止めずに街へ向かって行く。
「レノーラ!」
「私は残る! 貴方を一人にするなんて出来ない!」
「駄目だ! 逃げろレノーラ!」
「嫌だ! また弟の様に仲間を失いたくない!」
そう言っているうちにメフィストが樹木を千切り、遊真へ向かってきた。
「何のつもりか知らんが逃げれると思うのか!?」
「ゴーレム!!」
遊真が叫ぶと地面からゴーレムが現れた。
(何!? まさか前もって呼んでいたのか!?)
(……とか思ってんだろうな! 呼んでたけど来たのはたった今だよ!)
「速かったなゴーレム! 頼むみんなを街へ!」
ゴーレムは頷くとレノーラを掴み、デューク達を肩に乗せた。
「遊真!」
「おい! 遊真!」
ゴーレムは地面を隆起させ、移動するとロケス達を肩に乗せた。
「遊真……」
「遊真!」
レノーラ、ミカエル、翔一、ウリエルは口々に遊真の名を叫んだが遊真は決して振り返らなかった。
ベルゼブブがアイモデウスとレヴィアタンとマリーの樹木を切り、メフィストと共に遊真に襲いかかった。 遊真は手を上げると上空に雲が出来上がり、雪の様な物が降り始めた。
「光輝く白銀の雪」
突如雪が光を放ち、メフィスト達の目を眩ませた。
「こ……の……」
メフィストは何とかゴーレム達に狙いを定め、巨大な炎を放った。
「万物融解」
遊真の手から溶岩が出現し、メフィストの攻撃を蒸発させた。
「ウリエル。 メイ姫は今 毒に侵されている。 それは遊真でも治せないらしいが我々の都市に行けば解毒剤があるはずだ。 そこに急ごう」
「……うん」
ウリエルはそう言って前を向いた。 メイは苦しそうに喘いでいる。 腹部からの出血は止まりそうになかった。
「遊真……!メイ……!」
ミカエルと翔一は不安な表情をしていた。 レノーラはゴーレムの手から脱出しようとしていた。
「レノーラ! 遊真が必死に足止めしてくれてるんだ! 戻るのは絶対に駄目だ!」
ロケスはそう言った。
「でも……」
レノーラは目に涙を浮かべながらゴーレムの指を握りしめた。
(遊真……!)
「どういうつもりだ……?」
メフィストは遊真に向かって言った。既に雪は止んでいる。
「あのままだと全滅すると思ったからな。 俺があんた達を足止めしてる間にみんなを逃がしたってだけだ」
「……死ぬ気か?」
「どうだろうな」
遊真はそう答えた。
「すぐに殺してやる」
メフィストとベルゼブブは一瞬で遊真との距離を詰め、拳を突き出した。 しかし吹っ飛ばされたのはメフィストの方だった。
「えっ……!?」
次の瞬間にベルゼブブも蹴り飛ばされ、木に激突した。
「ベルゼ! メフィスト!」
アイモデウスが叫ぶと二人は立ち上がった。 それほどダメージは受けていなさそうだったが顔には驚きの色がうかんでいる。
「貴様……」
「明らかに魔力が上昇してるな」
遊真は笑うとメフィスト達を睨みながら言った。
「「絶技・能力全開放 」!」