対峙
七月十一日にテストが終わりました。
夏休みはもう少し早く更新出来るかと思います。
読んでいただけるとありがたいです。
遊真はあくびをしながら大きく伸びをした。
窓を見ると外から光が射し込んでいる。
(割りと眠れたな……)
遊真は起き上がるとみんなのベットを見た。
横のベットでは翔一が寝ているのがカーテン越しに見えた。 もう一つのベットには枕辺りに赤い髪が見えた。 ウリエルもまだ寝ている様だ。 正面のベットの掛け布団も膨らんでいるためミカエルもまだ起きていない様だ。
(まぁそろそろ起きるだろ……)
遊真はそう思いながらベットから出た。
遊真はトイレに行き、洗面所で顔を洗った。
「服はまぁ……これでいいか」
遊真が洗面所から戻ってくると翔一がベットの上で座っていた。 ちょうど起きたところの様だ。
「おはよう遊真」
「おう。 おはよう」
遊真は自分のベットに腰をかけた。
「何してたの?」
「顔洗ってトイレに行っただけだ」
「じゃあ僕も顔洗ってこようかな」
翔一はベットから下りると洗面所に向かった。
(多分ウリエルの方が後に起きるんだろうな)
遊真がそう思っているとミカエルがゆっくりと起き上がった。
(やっぱり)
遊真は笑いながらミカエルに おはよう と言った。
「どうした? 急に笑いだして」
「いや、予想通り過ぎてさ」
「何の予想してたんだ?」
ミカエルはそう言いながらベットから下りた。
「ウリエルが最後に起きるって予想」
遊真の返答にミカエルは笑いながら
「御名答だな。 こいつは起きるの遅いよ。 まぁそろそろ起きるだろうけど」
と言って洗面所に向かった。
入れ替わる様に翔一が戻ってきた。
「あれ……ウリエルまだ寝てるの?」
「ミカエルがもうすぐ起きるだろうってさ」
「そっか。 そういえばこっちのご飯はどういうものを食べるんだろうね」
「まぁ文化は違うだろうな」
「口にあうといいけど……」
翔一はそう呟きながら自分のベットに腰を掛けた。
洗面所の扉が開き、ミカエルが戻ってきた。
「起こすか……」
ミカエルはウリエルに手を伸ばしウリエルの肩を揺らした。
「う~ん……あと五分」
「もうたっぷり寝ただろ? 起きろって」
ミカエルがそう言うとウリエルはまだ眠そうに起き上がった。
「二人ともおはよ」
「おはよう」
「よく寝たか?」
「ほんとはもうちょっと寝たい……」
ウリエルはそんなことを呟きながらベットから下りた。
「洗面所行ってくる」
ウリエルはあくびをしながら洗面所に向かった。
「もしかしてウリエルってミカエルが起こさなかったら起きなかったんじゃ……」
遊真がそう言って笑いながらミカエルは自分のベットにゆっくりと腰を掛けた。
「あいつ一昨日夜更かししてたんじゃないかな。 メイと喋ってたとか」
「あり得るかも」
そう言って翔一は笑った。
「人魚といえば……こちらの大陸には人魚以外の他種族はいなかったりするのか?」
「いや……人魚だけってことは無いんじゃないかな? まぁ根拠はないけど……」
「俺は魔神族の方が気になるな……。 魔神王クラスの奴がいるなら遊真の力が必要になるだろう」
遊真はミカエルの言葉を聞き、自分のペンダントを見つめた。 確かに魔神王の様な奴がいるなら「想像世界」の力が必要になるだろう。
「まぁいなけりゃいいけどな」
遊真がそう言うと扉からノックの音が聞こえた。
三人が扉に向かい、扉を開けると前に人魚がいた。
「お迎えにあがりました。 メイ様はまだおやすみ中なので私が代理を努めさせていただきます」
(まだ寝てんのかい……)
遊真はそう思い笑いそうになった。 あまりにもミカエルの言う通り過ぎる。
「わかりました。 もう少しだけお待ちいただけますか?」
「かしこまりました」
ミカエルは一旦扉を閉め、洗面所に向かった。 ミカエルは洗面所の扉を開けた。
「ウリエル。 行くぞ」
「ふえぇ!? ちょっと待ってよ!」
ウリエルは鏡を見ながら くし で髪を整えていた。
「はやく」
「待って! 待ってってば」
ウリエルは急ぎ目に髪を整えると くし を置いた。
「お待たせ!」
「行くぞ」
ミカエルは扉を開けた。 前では人魚が待っていた。
「皆様お揃いですね。 ではこちらでございます」
四人は人魚の後をついていき、食事が並べてある部屋に着いた。
「お口にあうとよいのですが……」
食事は見たことが無いような料理が多かったが大半は何となく見たことがあるような魚や貝と似ていた。 食べるのには箸を使う様だ。 二本の細い棒がある。
四人は いただきます と手を合わせそれから食事を食べ始めた。
(あ、美味いじゃん……)
遊真は黙々と食事を口へ運んだ。
約十分後位に遊真は食べ終わった。
「ご馳走さま」
遊真は箸を置いた。
「ご馳走さま。 美味しかったね」
翔一も食べ終わった様で箸を置いた。
「主食はどれだったんだろうな……」
ミカエルもそう言って ご馳走さま と言った。
「確かに貝を茹でた料理とスープみたいなのと魚だったからね。 お刺身って言うんだっけ?」
翔一は食べ終わった皿を見ながらそう言った。
「まぁ美味しかったからいいや」
そう言って遊真は笑った。 正面ではウリエルがゆっくりと食べている。
「みんな食べるのはやいよぉ」
「まぁゆっくり食べなよ。 待ってるから」
そう言って遊真は寝転がった。
「あ、そうだ。 皆何か通信手段は持ってきたの? 僕は大輝様から貰ったけど」
そう翔一が言った。
「あぁ、貰ったよ」
「俺たち二人も持ってきたぜ」
ミカエルの言葉にウリエルも頷いた。
「あ、なら良かった。 みんな持ってるんだね」
そう翔一が言ってる間にウリエルが食事を終えていた。 少しミカエルも食べてあげた様だ。 確かに女の子にはちょっと多かったかもしれない。
「ご馳走さまでした♪」
ウリエルは手を合わせてそう言った。
「じゃあ人魚姫の所に向かうか」
ミカエルがそう言って立ち上がり、他の三人も立ち上がった。
扉を開けると鈴の音が鳴り、人魚が一人泳いできた。
「お食事ありがとうございました。 人魚姫の元へ案内していただけますか?」
「かしこまりました」
四人はミカエルの盾に乗り、人魚の後をついていった。
昨日来た人魚姫の部屋に着くと
「少しお待ちください」
と言って先に人魚が噴水から扉に入っていった。そして扉から顔を出し
「お入りください」
と言った。
ミカエル達は部屋に入った。 中ではマリーがイスに腰を掛けている。
「おはようございますみなさん。 昨夜はよく寝れましたか?」
「はい。 いい部屋をご用意して貰いましたから。 ありがとうございます」
「そうですか。 それは良かった」
マリーはそう言って微笑み、咳払いをして、少し真剣な表情になった。
「では早速なのですが昨日の話の続きをしてもよろしいでしょうか?」
そうマリーは言った。
「はい。 ぜひお願いします」
ミカエルはそう返した。
「確か昨日は獣達と契約を結ぶとその腕輪に契約を交わした獣の一部が入る。 というところでしたかね」
「はい。 確かその辺りまでは説明したかと」
翔一の問いにマリーはそう答えた。
「後その契約を交わした獣の力を使うことが出来ることと少し連絡手段となるってことですね」
「えぇ、その通りです。 遊真殿」
マリーは頷いてそう言った。
「後あなた方に伝えていないのは契約できる獣の数は人それぞれだということです」
マリーはそう言って遊真達を案内した人魚に何かを言うと人魚は頷き、どこかへ泳いでいった。
「つまりある者は色々な獣と契約できるが、またある者は一種類の獣としか契約できないということですか?」
「はい。 ミカエル殿の言う通りです。 しかし大体は皆 一種類の獣としか契約できません」
「一種類が普通なんですか?」
「えぇ。 私とメイもそうですしね」
「でもどうやって調べるんですか?」
「それは……」
マリーが話そうとした時に先程の人魚が戻ってきた。 何かを抱えている。
「ありがとう。 さて。 それはこれを使います」
マリーは人魚から受け取った物を遊真達に見せた。 それはマリーがはめている腕輪と同じ様な物だった。 しかしマリーの物と違う点は動物の一部が入るであろう場所がないことだった。
「これは我々がつけている物と同じものです。 このブレスレットを今から皆さんに付けて貰います。 そうすると契約できる獣の種類の数だけこの獣の一部が入る場所が現れます」
そう言ってマリーは自分のブレスレットを指差した。
「面白い仕組みだね」
ウリエルは早速に手に着けていた。
「どうなるかね……」
遊真もそう呟きながらブレスレットを着けた。
ミカエルと翔一もブレスレットを着けた。
するとブレスレットが少し光だした。 遊真は自分のブレスレットを見ていた。 ブレスレットに二つの透明の部分が出来上がった。 そこでブレスレットが少しずつ光らなくなった。
みんなを見るとミカエルと翔一は一つウリエルには二つ透明の部分が出来上がっていた。
「良かった。 皆さん全員何かの獣と契約出来る可能性はある様ですね」
「獣の種類はさすがに分からないんですか?」
「いえ……調べるものは無いわけではないんですが……。 今ここには無いものでして……」
「まぁ自分で探すのも面白そうじゃないか?」
ミカエルは自分のブレスレット見ながらそう言った。
「ちなみに遺伝子的に契約出来る獣の近くにいくとブレスレットが少し輝きます」
「じゃあ街の外に行こうよ♪ 契約出来る動物さんを探しにさ♪」
「ちなみにここは「水の都市」。 人魚が住む都市です。 西へ進むと「草原の都市」があります。 南西に進むと「暗闇の都市」。 それぞれ人馬と吸血鬼が住んでいます」
「つまり三種の生物が共存していると」
ミカエルの言葉にマリーは頷いた。
「はい。 そして三つの都市の中央に「中央都市」があります。 そこにはその「どの獣と契約出来るか」が分かる物が有りますが……」
「そうですね……」
ミカエルが話を続けようとした時に部屋にメイが入ってきた。
「お姉ちゃん みんな おはよ♪」
「メイおはよ~♪」
ウリエルがメイに抱きついた。
「おはようウリエル♪ ちなみに服は私たちのだから濡れないよ」
「あ、ほんとだ……あんまり濡れてない……」
ウリエルは自分の服を触りながら言った。
「遅かったわねメイ」
「ごめんお姉ちゃん。 明日からは気を付けるよ」
メイはウリエルの腕についているブレスレットをみて、二つ透明な部分があるのに気がついた。
「あ、ウリエルは二つ出たんだ」
「うん♪ これから私にあった動物さん達をいっぱい探してくるよ♪」
「では……」
とマリーが口を開いた。
「北西にある森や草原に向かうといいでしょう。 丁度我々の都市と人馬の都市の境界線上辺りです」
「分かりました。 ご説明ありがとうございます」
そう言ってミカエルは頭を下げた。
「でも……」
マリーはそう呟きながら下を向いた。
「気を付けて欲しい奴がいます」
「う~ん……中々会えないねぇ……」
ウリエルは少し しょんぼり した声で呟いた。
「まぁそんな簡単には適合しないってことか……」
遊真は近くにいた耳の長い ぴょんぴょん と跳び跳ねている動物にブレスレットをつけている左腕を近づけた。 ブレスレットに反応はない。
遊真達は森を歩きながら様々な動物にブレスレットを近づけていた。 しかしみんなブレスレットに反応はなく、ウリエルは少し落ち込んでいた。
ウリエルを先頭に森の中を進んでいるとある一人の男に出会った。
男は見た目は大代二十後半といったところか。
髪は黒く、割りと短め。身長は180㎝ほどで太ってはおらず、寧ろ細身な方だった。
足は二本あり、牙もない。
一見遊真達と同じただの人間である。
遊真達は男に出会った瞬間に相手に警戒心を持たせない様にゆっくりと戦闘体勢をとった。
男は遊真達の方を見た。
目はとても冷たい目をしていた。
とても「思いやり」等の優しい心が無い様な目だった。
目が合ったのかウリエルは びくっ と体を震わせた。
(睨みだけでウリエルを威嚇出来るなんて……まさかこいつが……!)
「奴とは?」
ミカエルがそうマリーに尋ねた。
マリーは小さくため息を吐くとイスに座り直し、喋り始めた。
「まずこの大陸にも「魔神族」はいます。 あなた方の大陸と同じ様に」
(魔神族……!)
遊真は少なからず恐怖を覚えた。
今の遊真ならば大抵の魔神族は簡単に倒せるだろうがやはり問題は数である。 いくら遊真の「覚醒魔力」が強力でも大量の魔神族に囲まれればピンチになる。
「しかしあなた方の大陸の様に沢山いるわけではなく、いるのはたったの一人です。 名前はベルゼブブ」
「え……一人?」
遊真の驚きの声にマリーは頷いた。
「しかしその強さは桁違いです。 この大陸で間違いなく最強の者です」
「だから会ったら気を付けろということですね」
「いえ……恐らく出会ってしまったら命は無いでしょう」
「え!?」
「戦いを好む性格故に会ったらいきなり襲いかかってくる可能性が有ります」
皆がマリーの言葉に不安を覚え、何も言えない中、
「大丈夫ですよ♪ 私たちはそんな簡単に負ける程弱くないですから♪」
とウリエルが笑顔で言った。
ウリエルの言葉にみんなは笑うと、一気に気が抜けた。 もう完全に 大丈夫大丈夫 というノリであった。
…………少なくとも本人に会うまでは。
(こいつが……ベルゼブブ!!)
男はニヤリと笑った。
2話続けて長くなりました……
これからこのくらいの長さになってしまうことが多くなりそうです……