決着
更新が遅くなって申し訳ございませんm(._.)m
読んでいただけるとありがたいです。
ガブリエルは額の汗を拭うと肩の力を抜いた。
「ふぅ……これでとりあえず大丈夫」
ガブリエルの前には大輝とミカエル、ラファエルが横たわっている。
周りにいる人類は大輝の治療にあたっていた。
大輝は顔色も良く、上手くいけば直ぐに目を覚ますだろう。
ウリエルは今、椅子の上で寝息をたてている。
ガブリエル達は今「魔王の洞窟」から少し離れた所に木の魔力を使い、木の小さな家の様なものを作り、その中で治療を行っていた。
ラファエルの容態は安定してきたがミカエル未だ一命をとりとめたと言える程度だった。
ガブリエルはミカエルの頭を撫で、お願いします と一言 大輝の治療を行っている人類に言い、それから外に出た。
「大丈夫ですか?」
木の小さな家の周りを囲う様に守っている女神族と天使族に話しかけた。
「ガブリエル様!」
天使族がガブリエルに駆け寄った。
「ミカエル様とラファエル様は!?」
と天使族達はガブリエルに質問した。
「容態は安定しています。 ただミカエルが目をさますには時間がかかるでしょう。 ダメージを食らい過ぎています」
「ウリエル様は?」
「ウリエルは疲れて寝ているだけです。 問題はありません」
ガブリエルはそう言って「魔王の洞窟」の方向を見た。
(先程一度巨大な炎の玉が見えた。 しかしあれで戦いが終わったならもうゼウス様がこちらに到着してもおかしくないはず……。
……まさかさっきの炎はサタンの……? ……いや、ゼウス様なら魔神王相手でも関係なく勝利する。 私はそう信じる)
周りの女神族も心配そうな表情で「魔王の洞窟」の方向を見ていた。
すると突如再び巨大な炎の玉が見えた。
「あれは……!?」
巨大な炎が消えた直後に女神族の数人がガブリエルに駆け寄った。
「ガブリエル殿。 どうか我々にゼウス様の安否を確認する許可をいただきたい」
女神族は片膝を地面につけ、頭を下げた。
ガブリエルは少し考えたが
「……わかりました。 五人程でゼウス様の元へ向かって下さい。
しかし戦闘が続いている場合はその場から離脱して下さい」
と言った。
「かしこまりました」
そう言って女神族は五人で「魔王の洞窟」へ向かった。
ガブリエルは心配そうな表情だったが ふぅ と息を吐いた。
(私は……今出来ることをやる!)
そう決意し、再び小さな家の中へ入った。
「俺を倒す……か……」
サタンはそう少し残念そうに言いながら立ち上がった。
「やはり、お前たち人類や女神族と魔神族は上手くいかないようだな……。 共存という道はないと言うことか」
遊真はため息をはいた。
「望んでも無いこと言うなよ。 共存なんて元々する気ないだろ」
サタンは鼻で笑うと
「そうだ。 我々魔神族はこの大陸の独占にしか興味はない」
と言った。
「だろうな」
そう言って遊真は手を前に出した。
サタンは次の瞬間吹っ飛び、倒れる様に着地した。
サタンは今、遊真と戦っている内に一つの事を悟り始めていた。
「勝てない」と。
サタンは頭を振り、その考えを頭から追い出した。
(ふざけるな……俺は魔神王だぞ……!)
サタンは睨み付ける様に遊真を見た。
遊真はサタンを見下すように見て、平然と立っていた。
サタンはかつてない屈辱を覚え、怒りに身を任せるように遊真に襲いかかった。
「破壊衝撃波!」
地面を抉りながら巨大な衝撃波が遊真に迫るが衝撃波は遊真に届くことはなかった。
「「何でこんな子供が殺せない」って疑問か?」
そう遊真はサタンに小さな声で言った。
「あぁ!?」
サタンは頭に血がのぼっており、遊真を睨んだ。
「それは俺がゼウスの弟だからだ」
「な……!?」
サタンは驚いた。
それは城の上で聞いている翔一も同じだった。
「さっきかすかに聞こえた 姉ちゃん っていうのはゼウス様のことだったのか……」
「だから」
と遊真は言いながらサタンを指差した。
「あんたには俺は殺せない」
「黙れ!!!」
サタンはそうほえると体を光輝くオーラで纏い、更に鋼鉄鎧で纏い、鋼鉄鎧の魔力で剣を作り出した。
「関係ねぇ……殺す」
遊真は小さくため息を着き、サタンの方を見た。
「来いよ」
サタンは遊真に襲いかかった。
元・魔王の洞窟。
そこは既に洞窟と呼べるような場所ではなかった。
洞窟 というと暗いところを想像するだろうが今、魔王の洞窟の天井は存在していなかった。
ゼウスの「|太陽の爆炎
(サンシャインインフェルノ)」により、天井は消滅したからである。
今、この場所に立っているのは……一人だけだった。
立っている者は美しい金色の髪をもつ、美しい女性だった。
女性は ふぅ と軽く息をはくと、その場で伸びをした。
「流石に手こずりましたね。 流石は魔神王といったところですか」
ゼウスの周りにはサタンの姿は無く、元 洞窟にはゼウスしかいなかった。
既に勝負は着いていた。
「それにしても……」
と再びゼウスは口を開いた。
「もうちょっと考えて欲しかったですね……。 私が分身で稼いだ時間で溜めた力を炎だけに使うはずがないでしょう……」
ゼウスは天井のない壁の上に跳び移った。
「「千本桜」で捕えて大技を放って終わりだなんて前と同じ状況……。 いくら何でもあっけなさすぎる終わり方でしたね……。
まさか向こうのサタンに何かをするために隙が出来たのか……?
いや、考えすぎですかね……」
勝負が着いたのは約十分程前。
「貫通拳!」
サタンはゼウスよりも早く一撃を食らわす為にゼウスに殴りかかった。
しかし突如現れた樹木に縛られ、サタンは動きを封じられた。
ゼウスは真上に前と同じ様に跳んだ。
「「千本桜」。 前から仕掛けておきました。 そして」
ゼウスは巨大な炎の玉をサタンにむけた。
「終わりです」
サタンは歯ぎしりをし、ゼウスを睨みつけた。
「また……! また貴様ら女神族なのか……! 俺達の野望を……打ち砕くのは!!」
ゼウスは少し黙ると、再びサタンの方を見た。
「また というのは封印のことですか?」
「あぁ、そうだ。 人類はかなり減り、妖精族も絶滅位まで追い込んだ。
だが……そこにお前ら女神族が森の奥から現れた。
俺達魔神族よりも強かったお前らは俺達魔神族を退け、更に俺たちを封印した。
封印を壊し、やっと出てこれたと思ったら女神族は数が少なくて、やっとお前ら三種族を絶滅させれるかと思ったら今度は結界。
お前ら……どんだけ魔神族の邪魔をしたいんだ……!」
とサタンは言い、話を続けた。
「何故だ……? 何故女神族は人類や妖精族と共存している……?」
「それは……」
とゼウスが口を開いた。
「女神族の女王と人類の王と妖精族の王の仲が良かったからです。 実際今でも種族間の争いはありませんし、これからも無いでしょう」
「女神族ほどの実力があれば! 人類等いつでも絶滅させれるだろう! 何故共存なんだ!?」
「仮に我々女神族だけになったとしても……それは本当に楽しい物でしょうか? 他種族と共存する方が色々な人に会えるでしょう。
私はまだ長くは生きていませんのでうまく言えませんがね」
巨大な炎がサタンに襲いかかり、サタンは避けようとするも、身動きがとれなかった。
「太陽の爆炎」
巨大な炎がサタンを包み込み、炎が消えた時には、サタンの姿はそこにはなかった。
戦いを終えたゼウスが洞窟の壁の上で伸びをし、ガブリエル達を探そうと辺りを見渡そうとした。
「ゼウス様!」
そこに三人の女神族が息を切らしながらやって来た。
「ご無事でしたか」
三人は頭を下げた。
「えぇ、私は大丈夫です。 それより負傷者の方々の状態は……?」
「はい、ミカエル様が未だダメージが大きく、回復にまだ時間がかかる模様。 ラファエル様は容態が安定してきており、大輝様はもうすぐ目を覚ますかと思われます」
「なるほど。 わかりました。 私も回復に駆けつけます」
女神族の一人が申し訳無さそうにゼウスに言った。
「ゼウス様……あの……遊真様は……?」
ゼウスは一瞬不安げな表情になったが
「……心配と言えば心配ですが、遊真にはペンダントを渡しました。 ペンダントの力を使い、遊真の力をフルに使えば簡単にはやられはしないでしょう」
と言い、そして少し微笑むと、
「それに私の「弟」ですから。」
と言った。
ゼウスは女神族にはあらかじめ遊真が弟だと伝えておいた。
「一応二人とも行く前に回復はしましたので体力は万全ですが……やはり相手が魔神王では……」
「わかっています」
ゼウスはそう言うと壁から飛び降りた。 ゼウスは地面に軽やかに着地し、三人の女神族も続いた。
「案内をお願いします。 ガブリエル殿の元へ」
「了解」
三人の女神族が前を走り、ゼウスが後を追うように走った。
(遊真……。 出来るだけ速く助けに行ければ良いのだけれど……)
激しい火花が散った。
遊真が鉄を生み出しそれを槍状に形を変え、サタンに撃ち出し、サタンがそれを剣で弾いた際に散った火花であった。
サタンが距離を詰め、遊真に手を伸ばす。
遊真は後ろへ一瞬で移動し、周りに複数の炎の玉を作り出した。
炎の玉がサタンに襲いかかるが、サタンは衝撃波を放つと全て相殺した。
サタンは足に力をいれるとサタンは一気に遊真の目の前に移動した。
「風刃」
サタンは剣を水平に振り抜いた。
否。 振り抜くつもりだった。
しかし剣は遊真の目の前で止まっていた。
遊真は右手に雷を剣を持ち、その剣でサタンの剣を受けていた。
「別に想像することだけが攻撃じゃないさ。 むしろこの状態で戦った方がさっきより強いかもな」
遊真は雷を纏っていた。
サタンは一旦後ろへ跳び、距離を取った。
「奥義「雷華」。 覚醒魔力「想像世界」ver」
そう言って遊真はサタンに歩み寄っていく。
「自分の奥義を想像したのか……」
サタンはそう呟き、再び遊真に襲いかかった。
サタンが剣を振り下ろし、遊真を切りつけようとするがサタンは遊真のスピードを捕らえることが出来ていなかった。
遊真は感じはじめていた。
こいつは勝とうとしていない。
と。
(こいつのこの攻撃力といい、サタンは今 全ての能力を魔力で高めている。 これほど多種多様な魔力を同時に使えば体力消耗が激しいはず……。 これでは例え俺を倒したとしても翔一に殺される。 一体何が狙いなんだ……?)
サタンが衝撃波を放ち、遊真はシールドを使いながら後ろへ下がった。
「どうした……? 攻撃と防御に想像が追いついてないんじゃないのか……?」
「余計なお世話だ!」
遊真はそう言うと手を合わせた。
「動作不可能束縛!」
地面から巨大な樹木と水柱が現れ、サタンの体を縛り、更にサタンに重力をかけた。
サタンは膝を着き、手足は封じられた状態になった。
「お前のその魔力を同時に使う量と種類。 いくら何でも体力消耗が激しすぎる。 短期決戦に持ち込もうとしたのか?」
サタンは顔を上げると
「ペース配分なんて考える場合じゃねぇからな。 もたもたしてたらどちらにせよ殺されるだろう」
と言った。
「まぁそうだな。 でもどちらにせよこれで終わりだ」
遊真は後ろへ跳び、距離を取った。
遊真は右手を上げると何か赤い物が上空で光った。
「ま……まさかね……」
翔一は上空を見上げると何が落ちてくるかは分かっていた。
「そのまさかですか!?」
翔一の予想通り上空から落ちてきたのは隕石だった。
直径二十メートル程は有りそうな隕石が音をたてながらサタン目掛けて落ちてくる。
「あれ……? これ街危ないんじゃ……」
「あの隕石を直撃させて終わりか……」
サタンは呟いた。
「どうした……? もがく力も無いのか?」
と遊真は言った。
「まぁ……俺の時代が終わるのかって位だ。 第一俺が死ぬ訳じゃないしな」
「な……!?どういうことだ!?」
「ゼウスから聞いたはずだろう。 俺の魔力は分裂することだと。
誰が分裂出来るのが一回だと言った?」
「ま……まさか……」
遊真は顔に絶望の色を浮かべたが、それを見るとサタンは高笑いした。
「いや、冗談だ。 だがこれで魔神族が終わると思うなよ……! 」
「……これから終わらすさ」
そう遊真が言うと、隕石が街のすぐ上まで来ていた。
(サタン……お前は……。 本当に独占なんて望んでいたのか……?)
遊真がそう思った瞬間に隕石がサタンに直撃した。
隕石の直撃で周りの家が壊れる様な爆風が巻き起こったが遊真の「想像通り」家が壊れる事はなく、遊真自身は前にシールドをはった。
やがて遊真が目を開けると、前には巨大な穴が空き、サタンの姿はなかった。
遊真は ふぅ と息をはくと城の方を見た。
城は爆風で壊れていなかった。 そしてその城の上に翔一がシールドをはっていた。
目が会うと翔一は遊真の横へ瞬間移動した。
「お疲れ様。 遊真」
「あぁ」
二人は拳を合わせた。