「双星」vs「魔神王」
サタンはニヤリと笑った。
「何故……!? さっき貴方は……死んだはず……」
ゼウスはゆっくりと立ち上がりながら言った。
サタンはゼウスに歩みよりながら言った。
「「命の復元」。 これが俺が奪った魔力のなかで最強と呼べる魔力だ」
サタンはゼウスの前で止まり、話を続けた。
「この魔力は一生に一度だけ自分が死んだ時に起こったことを全て無かったことに出来る。 つまり俺は一回死んだがよみがえったって事だ」
サタン右手をゼウスに向けるとゼウスが膝をついた。 同時に周りの地面もへこみ、ゼウスの膝も地面にめり込んでいく。
「「重力」。 動けないだろうな。 さっき吹っ飛ばした時に更に「力抑制」の魔力も使ったからな」
サタンはそう言ってゼウスを蹴飛ばした。
ゼウスは壁に激突した。
(体が……動かない……!)
遊真と翔一は城に着地した。
「くそ……」
遊真は舌打ちをしたがら言った。
街は全壊とまでは行かないがひどい有り様だった。
家や学校は全て壊れており、無事なのはこの王達の城だけと言っても過言ではなかった。
(人がいない……)
翔一はそう思い人の姿を探すが一人として見つからなかった。
不気味な程物音や人の気配はなく、ただ風の吹く音だけが聞こえる。
やがて遊真が口を開いた。
「サタンは結界の外から来たはずだ。 だったらこんな中央都市にはいないんじゃないか……?」
翔一は首を横に振り、
「いや……それならこの辺の民家がやられる訳がない……。 奴はここまで来たんだ」
と言った。
「じゃあ他の所にいったんじゃ……どちらにせよここからじゃ結界内全体は見渡せないぞ」
「わかってるよ遊真。 でも一番人が多いのはこの中央都市だ。 奴はこの中央都市にいるだろう」
遊真は再び周りを見渡すがサタンらしき影はない。
「中央都市はこの城から半径三キロメートルの街。 この城は中央都市を見渡すには十分な高さのはずだけど……」
翔一も周りを見渡すがサタンを見つけられていないようだった。
「もしかしたら東にある「女神族の森」にみんなは避難したのかな……?」
そう翔一が呟いた。
「でも……不謹慎な話だが死体が全く無いのは……」
と遊真が呟いた瞬間に目の前に十メートル程の巨人が現れた。
その巨大な男は洞窟で見た男。 間違いなくサタンであった。
「「な……!?」」
遊真と翔一は即座にサタンとの距離をとった。
サタンは遊真と翔一に気づき、遊真と翔一の方を見た。
「来たか……。 そうか……お前達がルシファーを倒した二人か……」
遊真は驚き、
「何で知ってる……?」
と言った。
「簡単な事だ。 俺たち分裂体は「心会話」で少しの会話は出来るからな。 距離があるからあんまり長時間は出来ないが。 まぁそれでお前達のことを知ってるって訳だ」
「ここにいた皆はどこだ?」
そう翔一はサタンを見ながらきいた。
サタン鼻で笑うと答えた。
「異空間だ」
「な……!?」
「異空間に飛ばしたからってすぐに死ぬ訳じゃないさ。 さっきまで俺は異空間で飛ばした奴等と戦っていた訳だ」
(でも出てきたってことは……)
遊真はサタンの出てきた理由を考えたがすぐに答えは出た。
「全員……殺したのか……!」
遊真はサタンを睨みながら言った。
サタンはニヤリと笑うと
「正解だ」
と答えた。
遊真はその答えを聞いた瞬間にサタンに殴りかかった。
「怒神鉄槌!」
遊真がサタンに拳を突き出すがサタンは後ろに下がり、遊真の攻撃をかわした。
「炎大砲!」
続いて翔一の炎がサタンに襲いかかるがサタンは衝撃波で炎をかきけした。
「この程度か?」
そう言ってサタンは遊真に飛びかかった。
「貫通拳!」
遊真にサタンの拳が振り下ろされるが遊真は回避し、サタンの腹部に飛び込んだ。
「怒神脚撃!」
遊真がサタンを蹴りあげた。
しかしサタンが巨体な為かあまり飛ばなかった。
(おかしいな……。 洞窟では吹っ飛ばせたのに……翔一のお陰か……?)
遊真が違和感を覚えている間にサタンが拳を振り下ろしてきた。
翔一が空中にいる遊真を水鞭で引き寄せた。
「大丈夫遊真?」
「あぁ。 サンキュー翔一」
サタンは着地すると再び遊真と翔一に飛びかかった。
遊真は右、翔一は左に避け、二人は両手を前に出した。
「「炎大砲!」」
双手から同時に炎がサタンに襲いかかるがサタンは両手を広げ炎を消した。
(「空間」か……!)
遊真は舌打ちをしながらサタンとの距離を詰めていく。
サタンは遊真を迎え撃とうとしたが突如下から樹木が現れた。
後ろでは翔一が手を合わせている。
(「樹木束縛」か……!)
その瞬間サタンに隙が出来た。
「雷斬!」
遊真がサタンの腹部に雷の剣を突き刺した。
「ぐ……!」
サタンは少し呻きながら少し腰を下げ、
「炎爆発!」
周りに爆炎を発生させた。
遊真はサタンから離れて距離をとり、サタンの爆炎をかわした。
しかし爆炎が消え、サタンの姿が見えた時にはサタンの腹部のキズは消えていた。
(回復の魔力も持っているのか……)
そう遊真は思い、翔一に小声で話しかけた。
「翔一……「雷華」を使う。 ルシファーの時みたいに援護頼んでいいか?」
翔一は心配そうな顔で遊真を見た。
「大丈夫なの遊真? 今回で「雷華」は三回目だよ?」
「わかってるよ。 でも二回目は短時間だったし、女神族に体力も回復してもらったからな」
少しの沈黙が流れたあと、翔一が口を開いた。
「無理はしないでね……」
「……出来るだけな」
そう言って遊真一歩前に出た。
「奥義・「雷華」」
遊真の体を雷が包み込んでいく。
「奥義か……それでルシファーを……」
そうサタンは呟いた。
「その通りだ!」
そう言って遊真はサタンの懐に潜り込んだ。
遊真の拳がサタンの腹部に放たれ、サタンは呻き声をもらした。
遊真はサタンの後方に回り込み、雷の剣で背中を斬りつけていった。
「超・身体強化!」
サタンは光輝くオーラを纏った。
雷の剣が一瞬刺さらなくなり遊真は焦ったが、すぐに雷の威力を上げ、サタンの体を斬りつけていく。
「炎玉!」
翔一もサタンの気が遊真だけにいかないように攻撃を仕掛けていた。
(こいつ……斬ってもすぐにキズが……!)
遊真はサタンの体を斬り続けていたが斬っても斬ってもサタンのキズはすぐに治っていった。
(大技で決めてやる……!)
遊真は右手に雷を集中させながらサタンの体を斬り続けた。
(速いな……)
そうサタンは感じていた。
サタンは今「予知」の魔力を使用していたが遊真の今のスピードは「分かっていても回避出来ない」レベルであった。
遊真がサタンの腹部に潜り込んだ。
「雷神鉄槌!!」
雷が迸る遊真の拳がサタンの腹部に放たれた。
サタンは後方に吹っ飛んだ。
(大した威力だ……。 だが俺を倒すにはもう一押し必要足りないな)
サタンは吹っ飛びながらそう思った瞬間に背中に衝撃を受けた。
後ろを見ると翔一が蹴った様な構えをしていた。 足には巨大なオーラが纏わされていた。
(なるほど……瞬間移動で……!)
サタンは遊真がいる方向へ吹っ飛んだ。
(もう一発か……!)
そう危険を感じサタンが前を見た時には遊真の姿はそこには無かった。
遊真は上に跳んでおり、八メートル程の巨大な斧を持っていた。
「雷斧!!」
振り下ろされた巨大な雷の斧がサタンを一刀両断した。