全知全能の力
読んでいただけるとありがたいです。
「ついに本気か!」
サタンはニヤリと笑いながら言った。
「いきますよ……!」
ゼウスは右手を前にだした。
「炎大砲!」
その言葉を聞き、一瞬サタンは失望した。
炎大砲。 確かに威力は高いが別に特別な技ではない。 自分でも使える技である。
第一これだけ期待させておいて炎の魔力の強化だとは思ったもいなかった。
しかし、その炎の大きさを見てサタンは考えを改めた。
直径十メートル程の巨大な炎がサタンに襲いかかった。
(でかい!)
サタンは横に跳んで避けたが既にゼウスは手を合わせていた。
「樹木束縛」
幹の太さが五メートル程の巨大な樹木がサタンを縛ろうと襲いかかった。
「な……!?」
サタンは樹木を振りほどこうとしたが太すぎるため振りほどく事が出来なかった。
「何で……木の魔力も威力が……!」
「言ったはずです。 「本気」でやると」
「違う……そうじゃない。 お前の「奥義」は炎の魔力の強化系なんじゃ……」
サタンは先程見たゼウスの炎大砲の威力をみてそう思った。 あれほどの威力ならば確実に「奥義」や「覚醒魔力」級である。
女神族は「覚醒」はしない。 だから「奥義」が存在する。
しかし「奥義」というのは女神族が自分の魔力を極め、それを奥義という。
(だからあいつは……!)
だからゼウスは炎の魔力を極めたのだとサタンは思った。
しかし今自分に放たれている木の魔力も凄まじい強さである。
「何で……木の魔力がここまで……!」
ゼウスは手を上げながら言った。
「残念ながら……私の奥義で威力が上昇しているのは炎の魔力だけではありません」
ゼウスは右手を下ろした。
「落雷!」
またしても巨大な雷がサタンに襲いかかった。
「鋼鉄鎧!」
サタンは自分の体を鎧でおおった。
巨大な雷がサタンに直撃した。
「ぐ……」
とサタンは呻き声をもらした。
(鋼鉄鎧の上からでダメージを受けるだと……!?)
サタンはゼウスの方を見た。
「私の奥義は……」
とゼウスはサタンの目があった後そう語り始めた。
「ただ力を解放するだけのことです」
「……は?」
サタンはゼウスの言っている事が理解出来なかった。
するとゼウスは胸元から光輝くペンダントをゆっくりと取り出した。
「私は普段このペンダントにより力をセーブしています。 つまり私の奥義はこのペンダントの力を0にして力を解き放つ事です」
「力をセーブだと……? 何故そんなことをする必要が……」
「簡単にいうと私の力が強すぎて周りの皆さんが危険だからですね」
「な……!」
サタンは言葉を失っていた。
「まぁちなみにただ単に力を普通に出すだけなので時間制限等もないですから」
そう言ってゼウスは手を前にだした。
「炎大砲」
巨大な炎がサタンに襲いかかった。
「くっ……!」
サタンは右手で何とか自分の体に触り、「空間」を使い、ゼウスとの距離をとった。
(空間を操る魔力も持っている様ですね……)
ゼウスはそう思った。
「どうしました? この程度ではないでしょう?」
そう言いながらゼウスはサタンにゆっくりと歩いて近づいて行った。
対するサタンも立ち上がり、ゼウスに向かって行った。
「貫通拳!」
サタンの拳が降り下ろされるがゼウスは華麗にかわし、サタンの腹部を蹴り飛ばした。
サタンは壁まで吹っ飛んだ。
しかしサタンは何事もなかった様に立ち上がった。
(「再生」がなかったらヤバかったな……)
そうサタンは感じていた。
次はゼウスがサタンに突っ込んだ。
「風刃!」
巨大な風の刃がサタンに襲いかかったがサタンはしゃがんで回避すると後ろの壁を貫通して行った。
(くらったら真っ二つだな……)
「落雷!」
巨大な音をたてながら雷がサタンに襲いかかるが再びサタンは雷を避けた。
(当たらない……?)
ゼウスは少し違和感を覚え、距離をとった。
「これはアスタロトの魔力「予知(フォーサイト」だ」
そうサタンは言った。
「なるほど。 予知能力ですか……」
そう言いながらゼウスは再びサタンに突っ込んだ。
「無駄だ……!」
そう言ってサタンは言うと拳を振り上げた。
「破壊衝撃波!」
衝撃波が放たれるがゼウスはシールドで受けながら距離を詰めた。
ゼウスは手を合わせた。
「樹木束縛」
樹木がサタンの足を縛った。
続いてサタンの手と体を縛った。
「避けれなければ意味がないでしょう?」
ゼウスは手をサタンにむけた。
「炎大砲!」
「無駄だ」
そう言ってサタンは再びワープしてゼウスの攻撃をかわそうとしたが手がしっかりと固定されていた。
しかしサタンは自分の手を縛っている部分の樹木を異空間に飛ばし、ゼウスの炎に手をむけ、ゼウスの炎を異空間に飛ばした。
(やはり……あの空間を操れる魔力が厄介ですね……)
「どうした……? 全知全能はこんなもんじゃないはずだろう……?」
そうサタンは言った。
「勿論ですよ!」
ゼウスはサタンに突っ込むと十本ほど雷の槍をつくり出した。
「雷槍!」
雷の槍がサタンに襲いかかるがサタンは全て回避した。
しかしサタンの右足を氷の槍が突き刺していた。
(な……!?)
「氷槍」
この時サタンはゼウスの作戦に気づいた。
(こいつ俺が回避出来ないぐらいの攻撃密度で……!)
つまりゼウスはサタンが予知しても避けれない数で攻撃を仕掛けていた。
「炎槍」
続いて炎の槍も放たれた。 サタンは全て回避出来ず、鋼鉄鎧で防いだ。
サタンはゼウスに近づき、
「炎爆発!」
と周りに爆炎を発生させたが、
「水玉」
とゼウスの巨大な水の玉に爆炎ごと包まれた。
「力解放!」
とサタンは身体強化のオーラで水の玉を吹き飛ばした。
サタンは息をきらすがゼウスは特に疲れている様子はなかった。
「どうした……? まだ本気ではないだろう……?」
とサタンは言った。
「じゃあ見せましょうか……?」
ゼウスは手を合わせた。
(また木か……?)
と思い、サタンは少しがっかりした。
さすがに三度目は芸がないと感じたからである。
しかしその考えは次の瞬間消えて無くなった。
「千本桜」
そうゼウスが呟くと一瞬のうちに無数の樹木がサタンに襲いかかった。
(数が違う……!)
さすがのサタンでも千本の樹木を同時にさばくのは無理があった。
「炎大砲!」
サタンは片っ端から樹木を消そうとするが既に足を縛られていた。
そして既にゼウスがサタンに突っ込んでいた。
右手には直径五十メートル程の巨大な炎の玉が出来上がっている。
巨大な炎の玉は既に洞窟の天井を溶かし、空が見えていた。
(あれはヤバイ……!)
サタンは「空間」を使おうと手を上げようとしたがやはり手は封じられていた。
(だから……無駄なんだよ……!)
サタンは手を縛っている樹木を再び異空間に飛ばした。 だが飛ばした瞬間に新たな樹木がサタンの手を封じた。
(な……! やはり数が……)
そうサタンが樹木に苦戦している内にゼウスは既にサタンの目の前にいた。
「貴方の再生の魔力……。 確かに回復力は素晴らしいレベルです。
ですが細胞一つ残らず消滅したらさすがに再生は出来ないでしょう」
そうゼウスはサタンを見ながら言った。
「まだだ……俺は……」
そう言ってサタンは何とか逃れようとするが縛り上げている樹木があまりにも多すぎた。
ゼウスは上に飛び、巨大な炎の玉が洞窟の天井を全て溶かしていく。
そしてゼウスはその炎をサタンに放った。
「太陽の爆炎」
巨大な炎がサタンを包み、地面には溶かされたように穴が空いていた。
ゼウスは地面に着地するとサタンの姿はなかった。
「さすがに再生は不可能でしょう……」
そうゼウスは呟いた。
「そうだな」
「……!?」
ゼウスは正体不明の攻撃をうけ、壁に激突した。
さっきまでゼウスが立っていた場所にいたのは魔神王だった。
長くなったり短くなったりと申し訳ございません……