救出
最近文字数が多くなってしまう……
読んでいただけるとありがたいです。
「オラァッ!」
と遊真は拳を振り抜いた。
ルシファーはそのまま吹っ飛ばされ、壁に激突した。
既にルシファーに意識はなく、吹っ飛ばされた後は全く動かなかった。
「終わったね……」
翔一は息をきらしながらドサリと座り込みそう言った。
「あぁ……。 後は雷が心臓を止めて終わりだ」
そう言って遊真は「雷華」を解除した。
遊真の纏っていた雷が消え、遊真も座り込んだ。
「大丈夫遊真?」
「あぁ……。 体はちょっと痺れるけどな……」
「でもほんとに勝てるなんてね……」
と翔一はルシファーの方を見ながら言った。
「ま、俺は勝つ気だったけどな」
と遊真は笑いながら言った。
翔一も微笑んだ。
「でも大分時間使っちまったな……」
「まぁ……上位の二人の一人だからね……。 僕らが倒したのは大金星じゃない?」
そう言うと翔一は遊真の方を見て言った。
「遊真動ける?」
「あぁ、行けそうだ」
二人はゆっくりと立ち上がった。
「じゃあ……行こう!」
「あぁ! 魔神王を倒しに!」
④番トンネル。
「な……!」
ゼウスはサタンの一言に衝撃を受けていた。
サタンはニヤリと笑うと
「そうだ……。 やっと危機感が出てきたか」
と言った。
サタンは話を続けた。
「俺の「分裂」は便利な魔力でな……ほんとは二人でボコボコにする考えもあったんだがあんたがどんくらい強いかわからんからな」
「だから街を襲うことにしたと。 なるほど。 確かに街は今少し手薄ですね」
「まぁ二人でやらないのは他の理由もあるが……。 一番の理由はそれだな」
「つまり私は貴方をここで食い止めなくてはならないと」
「食い止める?」
サタンは首をかしげた。
「俺はてっきり俺を「瞬殺してやるよ」的なことを言うと思ったんだがな」
「本当はそうしたいところですが貴方をそう簡単に殺せそうにないですからね……」
ゼウスはそう静かに言った。
「ですが」
とゼウスはサタンの方を改めて向き、
「私もここからは本気でやりますから」
と言った。
サタンは一瞬黙り、その後に鼻で笑うと言った。
「ようやく全力か。 最初から来てくれて良かったんだがな」
「まぁ、こちらにも色々と事情がありましてね」
とゼウスは言った。
(本気……か……)
とサタンは思った。
(確かにこいつはまだ「奥義」を使用していない……。 しかし「奥義」と言ってもそこまで温存するものなのか……?
……まさか温存しているのは俺が「幹部達と同じ部屋にいない」事と同じ理由なのか……)
サタンはそう色々と考えをめぐらしたが
(いや、あいつが「奥義」を使えばわかることか……)
と思い、再び戦いに集中した。
二人は再び構えた。
とその時③番トンネルと⑥番トンネルから一人ずつ飛び出してきた。
「ゼウス様! あ! お姉ちゃん!」
「ゼウス様! ウリエルも!」
ウリエルはガブリエルにかけより、抱きついた。
「お姉ちゃん~♪」
「ちょ……! 今はそんなことしてる場合じゃ……!」
ウリエルは焦るガブリエルを気にしている様子はなかった。
「お二人とも無事で何よりです」
ゼウスは少し微笑みながら言った。
「ゼウス様も御無事で何よりです」
ガブリエルはウリエルを撫でながらそう言った。
「ゼウス様。 相手、サタンの魔力は一体どんな効果なんですか?」
とウリエルは言った。
「彼の魔力は「細胞吸収」という魔力。 血をなめた相手の魔力を使うことが出来る魔力です。 つまり五年前に私たちの血はおそらくとられているから全ての基本魔力を使うことが出来る」
「それは厄介ですね……」
ガブリエルはウリエルを撫でながらそう言った。
「もう一つは「分裂」という魔力。 力すらもそのままに二人に分裂出来る魔力。 今私たちがいない間に街が襲われている」
「な……! じゃあこっちを早く倒さないと!」
とガブリエルは言った。
「いえ、貴女達は先に戻って下さい。 ここで私は彼を倒します」
「いけませんゼウス様! 貴方を一人おいていくなど……」
「しかし……!」
「それにおそらくサタンを倒すには貴女の力が必要です。 向こうも同じ力を持っているなら私達だけでは力不足かもしれません」
「ゼウス様! ここは三人で一気に倒してみんなで街に戻ろうよ!」
とウリエルはようやくガブリエルから離れるとそう言った。
「……わかりました。 しかし危なくなったら私は「奥義」を使います。 その時は逃げてくださいね」
そうゼウスが言うと二人は頷いた。
そして三人はサタンの方を向いた。
(話している割には隙がなかったな)
そうサタンは思った。
(アスタロトとアモンを倒しただけのことはあるか……)
そう思いながらサタンは構えた。
最初に飛び出したのはガブリエルだった。
「超・身体強化」
サタンを光輝くオーラが包んだ。
サタンは一瞬にしてガブリエルとの距離を詰めた。
サタンの拳が迫ってきたが、ガブリエルはひらりとかわし、サタンの頭部に手を伸ばした。
(「悪夢」が決まれば……!)
「炎爆発」
サタンの周りが爆炎に包まれた。
「お姉ちゃん!」
ウリエルがそう叫ぶと後ろにスタッとガブリエルが着地した。
「お姉ちゃん! 大丈夫?」
「うん。 大丈夫だよ。 ありがとうございますゼウス様。 あのバリアがなかったら……」
「バリア?」
ウリエルは首をかしげた。
「ゼウス様が爆発する瞬間に私にバリアをはってくれたのよ」
「……全然気づかなかった」
ゼウスは二人よりも三十メートル程前に出た。
「さあ、二人とも!気を抜かないで下さい!」
ゼウスはそう言った。
「「はい!」」
そう二人が言った次の瞬間。
ゼウスが横から衝撃波をくらった。
「「「!?」」」
三人は何が起きたか理解出来ずにいた。
ウリエルは衝撃波が飛んできた方向を見た。
そこには血だらけの三メートル近い大男がたっていた。
「……お兄ちゃん?」
ウリエルの頭の中を様々な想像が溢れでたが最悪の事がミカエルに起こったのだと本能的に理解した。
「……ミカエル?」
ガブリエルもウリエルと同じ事を考えた。
しかしミカエルの事を気にしている場合ではなかった。
サタンのパンチがゼウスに放たれていた。
「っ……! ゼウス様!」
ゼウスは間一髪衝撃波はバリアで防いでいたがバランスを崩していた。
サタンはベリアルがいることに気がついていた。
だから爆炎で一旦視界を封じ、ベリアルにゼウスを狙うように「心会話」の魔力で命じた。
サタンは完璧なタイミングで拳を繰り出していた。
「嫌だ……!」
「……ウリエル!?」
ガブリエルはウリエルの方を見たがウリエルは動かなかった。
「嫌だ……! お兄ちゃん…………!」
ウリエルは頭を抱えて涙を流していた。
ゼウスはサタンの拳をバリアで防いだが既にもう一発ベリアルが衝撃波を放っていた。
「ウリエル! ゼウス様を!」
ガブリエルは叫んだがウリエルには聞こえている様子はない。
「お兄ちゃんを返せ!!」
ウリエルはベリアルの方へ走り出した。
「ウリエル!」
ガブリエルはウリエルの動きに戸惑い、止まった。
止まってしまった。 その瞬間ガブリエルは気づいた。
(間に合わない!)
ゼウスは二発目の衝撃波を防いだがサタンは再び拳を再び振り上げていた。
「貫通拳」
ゼウスはバリアをはったがサタンの拳はゼウスのバリアを貫通した。
「な!?」
「死ね」
サタンの拳がゼウスに迫った。
「ゼウス様!」
ガブリエルは叫んだが離れた場所からゼウスを助けられるすべはなかった。
拳が当たる瞬間にガブリエルはサタンの腹部に突然二つの影が見えた気がした。
「「怒神鉄槌!!」」
サタンは後方に吹っ飛ばされた。
「え……!?」
ガブリエルは何が起こったのか理解出来ていなかった。
サタンを吹っ飛ばした二人がゼウスの前に着地した。
ゼウスは二人の正体を確認し、ふぅ と息をはくと言った。
「……素晴らしいタイミングです。 助かりました。
遊真。 翔一」
「遅くなりました。 ゼウス様」
「間に合って良かったです」
ガブリエルも二人の元に駆け寄った。
「翔一! 遊真! 無事で良かった……」
「ガブリエル様も御無事で何よりです」
翔一はそう言った。
「ゼウス様。 ガブリエル様。 他のみんなは?」
遊真は二人にそうきいた。
「ここへ来たのはあとウリエルだけよ。 でも②番トンネルから出てきた魔神族を追いかけていってしまったわ」
そうガブリエルは答えた。
「②番トンネル……?」
(……ミカエル……)
遊真はミカエルの事が気になったがサタンが立ち上がったので思考を中断した。
「……貴様ら……! ルシファーを……!」
サタンはそう遊真と翔一の方を見ながら言った。
「え!? ルシファー!?」
ガブリエルは驚いた。
「ルシファーって二強の一人じゃない……よく勝てたわね……」
「まぁ苦戦はしましたよ?」
「遊真の「奥義」のお陰です」
二人はそう言った。
「え、「奥義」って……」
「三人とも。 お喋りはそこまでです」
そう言うとゼウスは三人の方を見た。
「これから貴方達は街へ戻ってください。」
「え……何で……」
遊真は予想外の一言に戸惑いながら言った。
「簡単に言うとサタンが二人に分裂していてもう一人が街を襲っています」
「え! じゃあ……」
翔一が言葉をいう前に
「えぇ。 貴方達がもう片方のサタンを倒して下さい」
とゼウスが言った。
「しかしゼウス様! 私達では……!」
ガブリエルが自分の胸に手を当てながら言った。
「大丈夫です。 ガブリエル。 私達が思っているよりも遊真と翔一は強い。
遊真。 翔一。 貴方達がサタンを倒すのです」
ガブリエルは驚くと言った。
「な……! ゼウス様! それはいくら何でも……。 遊真は確かに強くなりましたし、翔一の実力も高い。 ですがさすがにサタン相手では……!」
「わかっています。 しかしこの二人が適任です。
翔一の「瞬間移動」があればすぐに街へ帰れる。 そして翔一と共闘するなら遊真が一番連携が上手いはずです」
(俺と翔一で魔神王と……)
(僕と遊真で魔神王と……)
遊真と翔一は少し不安になりながらも
「「わかりました」」
と答えた。
ゼウスは少し微笑むと
「お願いします」
と言い、話を続けた。
「まずこれからまだここへ来ていない人たちの救助へ行ってください。
その後別れ道の前の方々 洞窟の前の方々と合流して街へ向かってその時に翔一は遊真と共に街へ飛んで下さい」
「「「了解!」」」
そう言って三人はゼウスの方を見た。
「「「御武運を!!」」」
三人はそれぞれ走り出した。
「ちょっと待って。 遊真」
とゼウスは優しく遊真を呼び止めた。
待って下さいといつもの口調で言われなかったのに少し違和感を覚えながらも遊真はゼウスの元へ駆け寄った。
「なんでしょうゼウス様?」
「これを」
そう言うとゼウスは懐からペンダントを取り出し、遊真の首にかけ、それからペンダントを遊真の胸元へ押し付けた。
「これで戦闘中でもペンダントがブラブラ揺れて動くことはないでしょう。 邪魔にはならないはずです。 そしてこれは女神族に伝わる不思議なペンダントです」
「な……何で俺に……」
「これが必要になる。 そう私は思うから」
そう言うとゼウスは遊真に背をむけ、再びサタンの方を見た。
「さ、行って下さい。 遊真。 頼みましたよ」
遊真は少し戸惑いながらも
「はい!」
と答え再び遊真は走り出した。
(何で途中まではいつもしゃべり方じゃなかったんだろう……)
そう思いながら。
洞窟の前では翔一とガブリエルが遊真を待っていた。
「翔一。 貴方は①番を。
遊真。 貴方は②番を。
私は⑤番へ向かいます」
そうガブリエルは言った。
「②番って確かウリエルが向かった所ですよね?」
と遊真が言った。
「えぇ……。 でもミカエルを上回る実力を持っているなら手負いとはいえウリエルじゃ危ないかもしれないわ……。 さっき抱き締めた時、ウリエル結構疲れてたから……」
(抱き締めてたんだ……)
遊真は少し面白く感じながらそう思った。
「もしも戦闘が続いていた場合大輝様とは翔一が。 ラファエルとは私が一番上手く連携出来るはずです」
「遊真はまだ上層部に来てから日が浅いからね」
「……なんかすみません」
「気にすることないわよ」
ガブリエルはそう微笑みながら言った後少し真剣な表情になり、遊真に言った。
「遊真。 ウリエルをお願い」
「了解です」
「じゃあ……後程!」
そう言うと翔一はスピードをあげた。
大輝が心配なのだろうと遊真は思った。
(死んでないよな……ミカエル……!)
不安になりながらも遊真は②番トンネルへ入った。
過去最長になってしまいました。




