「双星」vs「魔神王の左腕」
長くなってしまいました……
読んでいただけるとありがたいです。
少し前。 ⑦番トンネル。
二人は同時にルシファーに飛びかかった。
「光雷!」
「炎玉!」
遊真が雷を、翔一が炎の玉を放った。
ルシファーは右手で剣を持ち、左手を前に出した。
次の瞬間。 遊真と翔一が放った技はルシファーの目の前から消えていた。
(……!?)
遊真は一瞬怯んだが翔一は次の攻撃を繰り出す為に手を合わせており、遊真もあとに続いた。
「樹木束縛!」
「怒神鉄槌!」
翔一が木の魔力を使い、相手の動きを封じた。 その隙に遊真は攻撃を加えようと考えていた。
しかしルシファーは翔一が繰り出した樹木を簡単に剣で切り裂き、遊真の一撃を受け止めてしまった。
「く……!」
ルシファーは少し鼻で笑う様に
「どうしました……この程度ですか? 「奇跡の子」というのは!」
といいルシファーは遊真を蹴飛ばした。
「遊真!」
翔一は遊真を受け止めた。 遊真は壁に激突するのを免れた。
「悪い翔一」
遊真はそう言いながら再び翔一の横に立った。
「二人がかりでこの程度ですか?」
「「そんな訳ないだろ!」」
再び遊真と翔一はルシファーに飛びかかった。
ルシファーは軽く剣を構え、
「ちなみに私は二種類の魔力を使えます。
一つは貴方たちも知っているでしょう」
と言った。 次の瞬間、ルシファーを光が包んだ。
(身体強化か……!)
そう遊真が思った瞬間に横で翔一がルシファーに吹っ飛ばされていた。
「翔一!」
と言った遊真の後ろにはルシファー既にルシファーがいた。
「他人を気にしてる暇があるのですか?」
「な……!」
ルシファーが剣を降り下ろしてきた。
「雷斬!」
遊真はバチバチと激しく雷が迸る雷の剣でルシファーの剣をガードし、そのまま後ろに下がり距離をとった。
「大丈夫か翔一?」
「うん。 大丈夫」
遊真と翔一はゆっくりと立ち上がると再び構えた。
「やはり……この程度ですか……」
ルシファーは再び鼻で笑う様にそう言った。
「こいつ……身体強化を……」
ルシファーは両手を広げ
「えぇ。 私は二種類の魔力を使えます。
一つは貴方達も使える身体強化。 ですがもう一つは……私特有の魔力です」
と語った。
「遊真……おそらくもう一つの魔力は最初に僕らの攻撃を消したものだ」
「俺もそう思う。 もう一度攻撃を仕掛けよう。 それで相手の魔力を見極めるんだ……」
と遊真と翔一は小声でそう作戦を決めた。
「炎玉!」
「落雷!」
翔一が炎の玉をルシファーの正面に。
遊真が雷をルシファーの真上から攻撃を繰り出した。
ルシファーは胸の前当たりで手を剣を手放して、右手を上、左手を前に出した。
そして遊真と翔一の攻撃は再び消えた。 ルシファーは地面に落ちる前に剣をとった。
「遊真……」
翔一はルシファーから目を離さずに遊真に話しかけた。
「翔一何か分かったのか?」
遊真はそう翔一に言った。
「うん……。 あいつは……空間を操っている。 さっき僕達の攻撃が消される前にあいつの手の前の空気、というか……空間がねじ曲がっていた」
ルシファーはフッと笑うと
「えぇ……その通りです」
と言い、話を続けた。
「私の魔力は「空間」私は自由自在に空間を操ることが出来ます」
「つまり俺たちの攻撃を防いだのも……」
「えぇ……異空間に飛ばしました。 貴方達も飛ばして差し上げましょうか?」
とルシファーは悪魔の様に微笑みながら言った。
「遠距離は不利。 触られたら異空間へ。 か……」
「とりあえず……僕の「覚醒魔力」で攻撃を仕掛けてみようか?」
と翔一が身構えながらそう言った。
「いや、まだ出すには早いだろ……。 もうちょい今のままでやろう」
「でも……」
「それに奥の手は最後までとっとくべきだろ」
「……分かった」
翔一は今のやりとりに少し違和感、不思議な感じをおぼえていた。
いつもなら遊真はこんなに自分の意見を言わない。
意志が弱いわけでは無いがもっと自分の意見に賛成し、作戦通りに動くはずだと。
(ミカエルとの戦いで自信をつけたのかな……? 今までよりも戦い方に迷いもないように見える……)
そう翔一は思った。
この時、遊真も自分に違和感を感じていた。
何故、今 翔一の提案を却下したのか……
何故?その答えはとても簡単な理由であった。
勝てる気がするから。 それどころか負ける気がしないから。
という理由であった。
しかし遊真はそこに違和感を感じていた。
(何で……勝てると思ったんだ……? いや、何で……今でも勝てるって思ってるんだ……?)
遊真は一旦自分の手を見た。
(そんなに強くなったのか……? 確かに「奥義」は使えるようにはなった。 というかまぁ、あみだしたんだけど……)
「遊真?」
と翔一が遊真を呼んだ。
「どうかした?」
「ん……いや、何でもない」
遊真も身構えた。
「さあ、どうします?」
ルシファーは余裕そうに構えている。
遊真と翔一は小さな声で少し会話をしたあとに再びルシファーの方を向いた。
「いくぞ翔一!」
「オッケー!」
遊真は再びルシファーに飛びかかった。
「何度やっても無駄ですよ!」
ルシファーは剣を構えた。
「雷斬!」
遊真の手に雷の剣が出来上がる。
遊真の雷の剣とルシファーの剣がぶつかりあった。
「今だ!翔一!」
遊真がそう叫んだ瞬間翔一がルシファーの横に現れた。
「な!?」
ルシファーは予想外の翔一の位置に意表をつかれ、反応が遅れた。
「炎大砲!」
(今両手は塞がってる。 今なら!)
翔一の放った炎がルシファーに直撃した。
遊真は空中でクルッと一回転し、着地した。
「どうだ……」
遊真と翔一が目を向けた先には、ルシファーが立っていた。
「なるほど。 私の魔力は手が空いていないと使えない。 そう踏んでこの作戦を立てた。 いい攻撃だったな。
だが、お遊びはここまでだ……。 殺してやる」
ルシファーはそう静かに言った。
「キャラが変わっちゃうほど怒ってるね……」
「まぁ、そりゃ怒るわな……」
遊真と翔一が会話をしていた次の瞬間にルシファーが消えた。
「? どこへ……」
遊真と翔一がそう思った瞬間にルシファーが目の前に現れた。
「な!?」
ドン という音とともに遊真は回し蹴りをくらい吹っ飛ばされていた。
「っ……!」
翔一は後ろに跳び、手を合わせた。
「樹木束縛!」
樹木がルシファーを縛ろうとルシファーに襲いかかるがルシファーは剣で全て切り裂き距離を詰めた。
ルシファーは翔一に手を伸ばした。
「消えろ!」
(まずい! まさか異空間へ……)
翔一にルシファーの手が触れようとした瞬間に遊真が炎大砲を放った。
「こざかしい!」
ルシファーは違う手で遊真の炎を消した。
しかし
「!?」
ルシファーは驚いた。 目の前から翔一が消えていたからである。
ルシファーが遊真の方へ目を向けると横に翔一が立っている。
「貴様……瞬間移動を……」
「その通り。 それが僕の覚醒魔力さ。
にしてもありがとう遊真。 あの目眩ましがなかったら危なかった」
「気にすんな……。 それよりも……」
と遊真はルシファーの移動スピードに驚いていた。
「私のスピードに驚いているようだな。 なに、空間を操れるならばこの程度何てことはない」
ルシファーはニヤリと笑いながらそう言った。
「つまりあいつは僕と同じワープが出来ると……」
「でも翔一は「瞬間」だから同時に発動したなら翔一の方が速く移動出来るはずだ。 あいつは一回自分を異世界に飛ばし、こちらの世界に出てきてる」
ルシファーは再び鼻で笑うと言った。
「ご名答だ。 「奇跡の子」遊真。 しかし……それが分かったところでお前たちにはなにもできやしない」
翔一は悔しそうに言った。
「ルシファーのいう通りだ。 どうする遊真?」
遊真は拳を握りしめ決意したように言った。
「……俺が一人であいつとやる。 翔一は遠距離から援護を頼む」
翔一は一瞬自分の耳を疑った。
「あいつと一人でやるなんて無理だよ遊真! 無茶だ!」
「分かってるよ。 だから翔一は援護を頼む。」
と遊真は冷静に答えた。
「援護って……ちなみに具体的にはどうすればいいの?」
「まぁ俺がさっきやったようにあいつの魔力のまとになる攻撃をしてくれるだけで充分だ」
「遊真はどうするのさ? あいつには遠距離は不利だよ。 接近戦も危険だし……」
「分かってるよ。 でも接近戦でやる」
遊真はそう力強く言った。
「つまり遊真が接近戦でルシファーの気をそらし僕の攻撃をあてる。
もしくは僕の攻撃を飛ばしている間に遊真が攻撃を叩き込むってことだよね」
「そういうことになるな。 でも翔一もいけそうだったらきていいぜ」
遊真は少し微笑みながら言った。
「でも遊真どうするの? あいつ接近戦も戦い慣れてる」
「大丈夫だ。 俺にはあれがある」
「……! 分かった……」
と翔一は最初は驚き、そのあとに心配そうに言った。
「大丈夫だ翔一。 ちゃんと心臓が止まるまでには決めてみせるさ」
「気を付けてね。 遊真」
ルシファーはふうと息を吐き、
「ご相談は終わったかい?」
と言った。
「あぁ。 お待たせしたな」
と遊真は肩を軽く回しながら答えた。
後ろでは翔一が心配そうな表情をしていたがふうと息を吐き、真剣な顔つきになった。
「まぁ精々頑張って下さいね」
とルシファーは剣を構えた。
「いつまでその余裕がもつかね。」
遊真はそう言いながら足を肩幅程に開き、拳を腰の横辺りで握りしめた。そして少しだけ膝を曲げ、腰を下げた。
「とっておきを見せてやるよ!」
遊真がそう言った次の瞬間に、遊真の体を雷が包み込んだ。