妖精女王
更新が遅くなり申し訳ございません。m(._.)m
読んでいただけるとありがたいです。
「夢の……中……?」
アモンはガブリエルが言った言葉を理解することが出来なかった。
「現実世界では貴方は横たわっていて、私が貴方の額に手を置いている状態よ」
「な……!?」
アモンはブンブンと首を振った。
「無駄よ。 夢の中で首を振って何になるの?」
「く……」
アモンは悔しそうに言った。
しかしアモンは次の瞬間ニヤリと笑った。
「だが夢の中なら自分の思い通りに動ける! 違わないかガブリエル!?」
とアモンはガブリエルに飛びかかった。
ガブリエルは特に構える様子はない。
「えぇ……思い通りよ。
私のね」
と次の瞬間にアモンが地面にめり込んだ。
(……な!?)
「重力で押し潰した。 ただそれだけよ」
アモンにかけられた重力がアモンの体の自由を奪っていた。
「つまり……今は我はお主の思うがままか……?」
「えぇ……その通りよ」
(マズイ……!)
そうアモンは思った。 ここは夢の中。 しかも相手の思い通りになってしまう。 ここでは勝ち目がない。
何とかここから、つまり現実世界に意識を戻す方法をアモンは考えていた。 しかしガブリエルの魔力はそう簡単に破れるものではなかった。
「一体……どうやって……」
アモンのこの質問はアモンの疑問をストレートに表現したものだった。
「一体どうやって我に技を……」
「簡単よ。 貴方に触れた。 ただそれだけよ」
「ふざけるな……。 我は鋼鉄鎧で全身を覆っていた……。 触れたところで我の鎧がシャットアウトする」
「相変わらず自分の魔力を過信しているわね。 私の魔力はシャットアウト出来なかった。
つまり貴方の鎧は「攻撃的魔力」はシャットアウトすることは出来る。 しかし私の様な「精神系魔力」な魔力はシャットアウト出来ないということよ」
アモンは拳を握りしめ、
「そんな……馬鹿な……!」
と悔しそうに呟いた。
そしてガブリエル
「貴方は……」
と口を開いた。
「私の大切な物を奪った」
アモンはよく分からず
「はて……? なんのことかな……」
と首をかしげた。
ガブリエルはアモンにかけていた重力を解除した。
「貴方は……十三年前。 そう、封印から復活した時に……魔神族の攻撃により多くの者が亡くなった」
ガブリエルは悲しげにそう語り続けた。
「私はその時はまだ弱かったからな……。 戦うことはせずに身を潜めていた……。 その時に見ていた……
貴方が私の両親を殺した瞬間を」
「つまり……今お主は……敵討ちをしていると……」
「えぇ……。 まぁそういうことにもなりますね」
アモンは少し笑いながら
「ではお主は今仇がとれて嬉しいのか?」
ガブリエルは少し返答に困りながらも
「別に嬉しくない……。 と言ったら嘘になりますが。 どちらかというと今は貴方を倒し、魔神王を倒し、平和を取り戻したい。 その気持ちの方が強いですね」
「そうか……。 だが魔神王様を倒す前に!」
と言いながらアモンは剣を振り上げた。
「我を倒さないとな!!」
とアモンが剣を振り下ろした。
しかし振り下ろした位置にガブリエルはいなかった。
「なに!?」
「言ったはずです。 「思い通り」だって。」
次の瞬間に下から現れた樹木がアモンの動きを封じた。
「貴方は自分の魔力を過信し過ぎた。 それが貴方の敗因です」
とガブリエルは静かに言った。
「ふ……見誤ったわ……。 まさかこれ程までとはな……」
「では……そろそろ終わりにしましょう」
そう言ってガブリエルが手を前に出すとアモンの下に沼の様な物が出来上がった。
「これは……」
アモンがそう呟くとガブリエルが静かに
「これに貴方を沈める。 沈められた貴方は段々と意識が無くなるでしょう。 痛みなどはありません。 そして貴方の意識が消えると貴方は夢の中で死んだことになり、貴方の精神面が死ぬことになる。 精神を失った体はやがて生きるということを止め、貴方は肉体、精神共に死ぬ」
「なるほど……恐ろしい技だな……」
アモンは既に 生きる ことを諦めていた。
それほどまでにガブリエルの技は絶望的に助かりそうになかった。
ガブリエルはゆっくりと手を下げていく。 それに合わせてアモンの体もゆっくりと沼の様なものにのみ込まれていく。
「ふ……一人でよくここまで強くなったものだな……」
とアモンが言った。
「それはどうも。 今はもう二位ですけど」
「二位……。 ふ……通りで……強いわけだ……」
「まぁミカエルとラファエルはわかりませんけど、ウリエルでも貴方には勝てたでしょうね」
アモンは笑いながら
「上には……上がいるという訳か」
と悔しそうに言った。
「いえ、ウリエルは私よりはランキングは下ですよ。 それにまだまだ私にとって可愛い妹の様なものですから」
「ふっ、恐ろしい小娘だな」
アモンは再びふっと笑い、言った。
「……さらばだ」
「えぇ」
ガブリエルは手をだらんと下まで下げるとアモンは沼の中に消えていった。
ぱちっとガブリエルは目を開けた。
前にはアモンが横たわっている。
「仇……とったよ……!」
ガブリエルはそう呟いた。
「元「妖精女王」をなめすぎね」
ガブリエルはゆっくりと立ち上がると魔神王のいる方へ走り出した。
次は水曜日位に更新いたします。