相性
読んでいただけるとありがたいです。
「「覚醒魔力」ですって……?」
アスタロトはウリエルが口にしたことが信じられずにいた。
「だって貴女の「覚醒魔力」は回復系だったんじゃ……」
「嘘だもん♪」
ウリエルは笑顔でそう答えた。
「な……!」
アスタロトは唖然とした。
(ついていい嘘と悪い嘘があるでしょ……)
アスタロトはそう思いながら立ち上がった。
「どうやらその笛でさらに自分を可愛くみせる幻術系の魔力みたいね」
「うん。 そうだよ」
ウリエルはそう答えた。
「じゃあ今は攻撃出来るわよね!」
アスタロトはウリエルに向かっていった。
「もう。 わかってないな~」
ウリエルはそう言って特に構える様子はない。
「強がりを……!」
しかしまたしてもアスタロトはウリエルの前でまたナイフを振り下ろすことが出来なかった。
「!? ……何で……」
アスタロトは困惑した。
「残念ながら一度笛の音色を聞くとしばらくは私には攻撃出来ないよ♪ 段々時間と共に効果は薄れていくけどね」
「つ……つまり聞き続けたら効果は切れないと……」
「うん。 そういうこと♪」
ウリエルは再び笛を吹き始めた。
(これ以上聞いたらヤバイ!)
アスタロトは後ろに跳び耳をふさいだ。
ウリエルは一旦笛から口を離し
「耳をふさがないでよ!」
と言った。
「ふん。 何を言っても……」
と言いながらアスタロトは手を下げた。
(……な!? 体が勝手に……)
アスタロトはそう困惑している内にすでにウリエルは笛を吹き始めていた。
(ま……まさか……今の私はあの子のいう通りに動いてしまうの……?)
ウリエルは笛を吹きながらアスタロトにゆっくりと近づいて行く。
アスタロトは下がろうとしたが後ろはもう壁だった。
「貴女の魔力……音色を聞いた者は攻撃出来ず、貴女の意のままに操れる訳ね……」
アスタロトはそう言った。
ウリエルは笛から口を離し
「正解~。 まぁ操れるって言ってもそんなに何かをしろみたいには出来ないけどね」
と言った。
「これで終わりよ」
ウリエルは再び笛を吹き始めた。
しかし今回は……少し音色が違った。 今までは可愛い曲だったが、今回は少し……悲しい感じの曲だった。
(こんな……お嬢ちゃんに……)
アスタロトはドサリと倒れ、ゆっくりと目を閉じた。
それから約一分程、ウリエルは笛を吹き続け、笛から口を離した。
「魅了最強技。 超魅了。 音色を聞いた者の命を奪う……」
そしてウリエルは笛を懐にしまった。
「音は予知では防げないよね。 相性が良くて助かったな……」
ウリエルは魔神王がいる方をみた。
(後ろも気になるけど……やっぱりゼウス様に加勢しないと……)
ウリエルは最後に、アスタロトの方をみて言った。
「可愛すぎちゃったかな♪」
ウリエルは魔神王がいる方へ走り出した。