表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/34

「アイザ、このまことという男は、かなりの剣の達人なのだ。ひとつ腕を見てやってくれないか」

 ロザミアがそう命じた。面白い。おれも、凄腕の女剣士というアイザの腕に期待していた。

「はい、かしこまりました、ロザミア様。よし、まこと、試し試合をするぞ」

 アイザが二本の木刀をもってきた。

「アイザ、手を抜くなよ。まことは本当に強いぞ」

「それは楽しみですね、ロザミア様」

 おれは剣をリーゼに預け、木刀をもった。

「ああ、危ないです。救世主さまに適うわけありません」

「うん? 救世主とは、この男のことか? それほどの腕なのか」

「はい。救世主さまは世界一強いはずです」

「面白い。斬りあえば、その腕はすぐにわかる。さあ、かかってこい、まこと」

 アイザが木刀をかまえた。

 面白い。おれも、真剣になって、木刀を構える。

「なんだ、それは。構えがなっておらん」

 アイザから、さっそく叱責が飛んだ。そんなこといったって、おれは怪物退治はできるけど、剣の腕なんて素人だよ。

 試しにアイザに向かって振り下ろしてみる。

 木刀がアイザの頭上に落ちる。

 まずい。このままでは、当たる。殺してしまうかもしれない。

 慌てて、おれは木刀を止めた。それから、ゆっくり動く。

 一方、アイザも木刀で斬りこんできた。

 だが、おれは困ってしまった。いったい、どうしたらいいんだ。遅い。アイザの動きが遅すぎる。まるで、止まっているかのように見える。このままでは、勝ってしまうではないか。

 帝位継承者に凄腕の剣士として信頼される女の誇りを傷つけることはできない。

 おれは、ゆっくりと動き、木刀をわざと当たらないように振りまわし、アイザの木刀が当たるのを待った。

 バキンッ。アイザの木刀がおれの頭に当たって、大きな音がした。だが、まったく痛くはなかった。

「とったあ」

 アイザが叫んだ。

「うむ。勝負ありだ。やはり、アイザの勝ちだな」

 ロザミアが満足そうにしている。

「まこととやら、貴様、動きは素早いが、形が定まっておらん。隙だらけだ。そんなことでは、帝国の剣士として、やっていくことはできんぞ」

 ああ、おれはどうしたらいいんだ。

 あきらめて、リーゼを見た。

「救世主さまはお優しいのです」

 うん、いいなあ。リーゼはわかってくれている。

「おれの負けだよ。帝国の凄腕剣士に勝てるわけないよ」

 そういって、おれは木刀を放り投げた。リーゼから、剣を受けとる。

 アイザは、声高々にロザミアに語りかけた。

「ロザミア様、正直、この男では、たいした戦力になりませんが、その代わりにわたしが二倍も三倍も頑張ります。必ずや、帝国を再建いたしましょう」

「うむ。ありがたい。がんばってくれ。わらわも、力の限り、剣を振らしてもらう。それといっておくが、再建というのは正しくない。まだ、帝国は滅んでおらんからだ。帝国を本来あるべき姿に正すだけだ」

「申し訳ありません、ロザミア様」

 やれやれ。帝国の再建か。だが、おれも約束したからには、バッシュ帝国の正常化に力を貸すことにしよう。

 いったい何をやっているんだろう、おれは。

 帝都を目指すことになり、山小屋を旅立った。帝都に行けば、有能な魔道士がいるだろうか。

 アイザの山小屋を旅立って、その日のうちに、ガイコツ剣士の群れに襲われた。

「くっ、敵は手強いぞ。ロザミア様は後ろへお下がりください。おい、まこととリーゼ、ロザミア様をお守りしろ」

 アイザが怒鳴ったが、ロザミアが制した。

「いや、アイザ、わらわを特別扱いする必要はない。わらわも最前線に出て戦おう。むしろ、リーゼを守ってやれ」

 アイザはしばし、戸惑っていたが、ロザミアの決断を不意にすることはできなかった。アイザが先頭に立ち、おれとロザミアが左右を固め、リーゼを後ろに配置して、ガイコツ剣士の群れに突撃した。

「いやああ」

 アイザは斬るたびに掛け声をあげるらしい。かわいい声が響く。

 ガイコツ剣士は八体ほどいたが、おれが五体、アイザが二体、ロザミアが一体を倒した。

「はあ、はあ、はあ、はあ。さすが、見事な太刀捌きです、ロザミア様」

「よい、お世辞などいわなくてもよい。わらわの腕がどれくらいかは、わらわがいちばんよく知っておる。アイザやまことには遠く及ばぬ」

「しかし、驚きましたな。まこととやら、実戦に強いタイプのようですね」

「だから、まことはアイザと同じくらい強いといっておろう」

 おれたちは、そのまま、旅をつづけた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ