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二日間は強行日程だった。
まだ、バッシュ帝国の政治を担う家臣たちも決まっていないのに、ロザミアは戴冠の儀と婚礼の儀を続けざまに行った。
ロザミアは、少ない時間をつくって、信用できる人物に、帝国の家臣になってくれるように頼んでいたようだ。
家臣になる志願者は大勢いるのだが、その中から、有能な善人、少なくとも、無能な善人を選ぶのがロザミアの仕事だった。
アイザは近衛兵長になるものと思っていたが、ロザミアがそれに反対し、皇帝直属軍というものが新設され、おれとリーゼとアイザと神さまの四人だけで編成された。おれたちの地位はそこに落ち着いたらしい。
ロザミア戴冠の儀。
大観衆の前で、神官に冠をのせてもらい、後はパレードをして、表向きの儀式は終わった。裏の儀式というものがあり、神官がロザミアの背中の文字を見ることだった。
「おお、あなたはまさしくまちがいなく、皇帝の血を引くものだ」
神官は涙を流して感動していた。
ちなみに、おれたち直属軍も付き添っていたのである。
おれは、リーゼに話かけた。
「おれたちの役目は終わったと思うんだ」
「どうしたんですか、救世主さま」
「その何だ。このままいくと、おれとロザミアは婚礼の儀を行うことになるじゃない。それで、リーゼとアイザは、ロザミアの女娼として囲われることになるんだけど、それっておれが望んでたハーレムをロザミアの後宮につくろうという計画なんだよね」
「そうだったんですか、救世主さま」
「でも、それって、ロザミアが可哀相だと思うんだ」
「はい、救世主さま」
「リーゼ、このまま、ロザミアに別れを告げて、おれと高位の魔道士を探す旅に出ないか。リーゼとは離れたくないんだ」
リーゼは、恥ずかしげに微笑んだ。
「救世主さまがそうおっしゃるならどこへでも」
「ありがとう。リーゼ」
おれは心の底からほっとした。それが誰かを別の形で傷つけてしまうということのも気づかずに。
「めかけは、救世主さまのものですから」
リーゼはそういって嬉しそうに再び微笑んだ。
翌日、戴冠したロザミアに、おれとリーゼの二人で旅に出ることを告げると、ロザミアはぼろぼろと大粒の涙を流した。
「行ってしまうのか、まこと」
「うん、ごめんな、ロザミア」
「行ってしまうのか、まこと」
おれは慌てて弁解した。
「何も一生の別れってわけでもないんだよ。時々、帝都に帰ってくるよ」
だが、ロザミアは涙を流しつづけた。
「行ってしまうのか、まこと」
「ロザミア様」
アイザがロザミアを支えた。
「わらわは、戦いばかりしていて何も見えておらんかったのじゃろうか」
おれとリーゼは、ロザミアのもとを離れ、旅に出発した。
「皇帝になろうと、悲しいものじゃ。わらわは振られてしまった」
ロザミアの声が後ろから聞こえてきた。
ありがとうございまーす。
作者が初めて挑んだ本格異世界ファンタジー
これで完結です。
連載して公開するの、初めてだったんですよね。
この後書き書いてる今は17日ですけど、毎日更新を
果たして、なんとか、電撃大賞に応募できるくらいの量で
完成しました。
とりあえず、続編の予定はないですが、いろいろと、
続編を書いて書けないわけでもない終わらせ方にしてあります。
高位の魔道士とか、残ったままですしね。
何にせよ、非常に連載は疲れました。締め切りの重圧がすごくて。
時々、精神不安になってましたよ。
でも、それを乗りこえないと、長編は完成しないんですよね。
最後に、この作品を読んでくれる人すべてに感謝を。
特に、作品の構想に困った時に相談にのってくれた名無しさんには、
特別の感謝を捧げます。
ありがとうございました。