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「この城は領主さまが逃げ出してしまって、人っ子一人おりません」

 とある城下町に着くと、町の人がそういっていた。

「どうする? ロザミア?」

 おれが聞くと、

「とりあえず、城の様子を見てこよう。異常がなければ、領主を町の中から任命して、占領しよう」

 といった。

 それで、おれたちは無人の城の中に入っていった。

「まあ、おそらく、当然のように怪物が出るのだろうな」

 アイザがいっている。

「ああ、スニーク帝国領内だからな。わらわもそう思う」

 ロザミアが答える。

 結果として、怪物は出なかったものの、城の中の石像が動いて襲ってきた。何十体の巨大な石像が彫ってあったのだ。

「この動く石像、剣が刺さらんぞ」

 ロザミアがわめいた。

 おれは例によって、楽勝だから、動く石像を一体、二体と一撃で倒していったが、少し、様子を見ることにした。

 あることが気になったのだ。

 リーゼのそばに行き、リーゼを守りながら、残り三人の動く石像との戦いを見ていた。

「えいっ、とおっ」

 アイザのかけ声が響く。

 ごつんっと重い動く石像の殴りがアイザに効く。

「ロザミア様、大丈夫ですか」

 アイザが叫ぶが、ロザミアは答える余裕もない。

「アイザ、厳しい」

 ロザミアがひとこと、やっとのことで話す。

 そんな中、生きのいい動きをする者が一人だけいた。

 神さまだ。

 神さまは動く石像の攻撃を全部かわし、剣をずさっ、ずさっと斬りこんでいく。

 おれはこっちに向かってくる動く石像を倒しながら、アイザとロザミアと神さまを見ていた。

 動く石像の攻撃を全部かわす神さま。攻撃を受けてしまうアイザ。とても相手にもならず、後ろに下がるロザミア。

 アイザの剣が斬っても、動く石像は倒れない。

 神さまの剣は、何度か当たると、動く石像が倒れていく。

 あの三人の中で、動く石像を倒せるのは、神さまだけだ。

 おれは近づいてきた動く石像を一体、斬り倒していった。

「リーゼ、神さまはアイザより強くなったね」

「え? そうなのですか、救世主さま?」

 リーゼも聞いて驚いていた。

「ああ、アイザは防御でも攻撃でも、神さまより押されている。神さまの剣の腕は、アイザを超えた」

「はい。確かに、見ていると、そう思えてきます。めかけはいわれるまで、気づきませんでした」

「リーゼも、神さまを軽く見ているね」

 リーゼが驚いて、汗を流していた。

「いえ、救世主さま。めかけにそのようなところがあったら、めかけは破滅です。もう、めかけは心がくじけてしまうそうです。めかけは神さまをあまく見すぎていたのでしょうか」

 リーゼが苦しそうに話す。

「おれも、神さまがあそこまで成長するとは思わなかったよ。やっぱり、神さまは力がなくても神さまなんだなあ」

 神さまとアイザとロザミアが苦戦しながら、ぎりぎりで戦っている。

「見ろ。動く石像を倒せるのは神さまだけだ。アイザもロザミアも、一体も倒していない」

「はい。めかけが見ていてもそうです」

 動く石像の殴りをくらって、神さまがふっ飛んだ。

「大丈夫か、神さま」

 アイザが叫んだが、おれが助けに行くことにした。

「ここは任せろ、アイザ」

 おれが一体、二体と動く石像を倒していく。

 アイザも動く石像と斬り結んでいる。

 神さまは不屈の根性で起き上がった。

「我輩、まだ、この程度では負けないでござる」

 神さまがやってきて、動く石像を斬り倒していった。

 結局、三十体ぐらいいた動く石像を倒した。二十体以上はおれが倒したものであり、残りは神さまが倒したものであった。

「はあ、はあ、今回は苦戦したなあ、まこと」

 アイザがいった。

「ああ、お疲れ、アイザ。よくがんばったよ」

 おれは答えた。

 次の日、朝の剣術の訓練の時、神さまはアイザにいった。

「アイザ殿、剣術の修行は今日で終わりにするでござる」

 それを聞いてアイザは怒った。

「なんだ! 根を上げたか、神さま。この軟弱もの。このアイザに勝てるようになるまで、修行を怠るんじゃない」

「すまぬが、もう、アイザ殿の訓練は終わりにするでござる」

「なにい。貴様、そんなことでロザミア様の直属軍が務まるとでも思っているのか!」

 アイザは怒鳴った。

 しかし、次のひとことでおれは神さまの気持ちがわかった。

「まこと殿。今日から、まこと殿が我輩の剣の指導をしてくれないか」

 神さまはいった。

 なるほど。神さまも気づいているんだな。自分がアイザより強くなったことに。

「いいよ、神さま。おれが剣術の訓練の相手をするよ」

「ありがたいでござる、まことどの」

「でも、おれ、剣術の腕なんて、てんで素人だよ」

「かまわないでござる。思うとおりのことを教えてくだされ」

 神さまは謙虚だった。

「はい、ほい、あそれ、ほれ、ほれ」

 おれは、神さまの剣を軽く受けるだけの練習を始めた。

「まことも神さまもなっておらん。精神がたるんでいるぞ。わたしの修行についてこられずに、本当に強くなれるなどと思うな」

 アイザが怒鳴っている。

「まこと」

 ロザミアが何がいいたそうだったが、

「神さまの好きにさせてあげてよ。お願い、ロザミア」

 おれがいうと、

「うん」

 と、ロザミアが答えた。

 ロザミアは気づいているだろうか。神さまの剣の腕がアイザを超えたことに。

 少なくとも、アイザは気づいていないようだった。

「二人とも、剣の振りがあまいわ」

 アイザは怒鳴っていた。


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