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 ちなみに、神さまはあれから、毎日、剣術の訓練をしている。アイザが具合が悪い時は一人で剣を振っている。アイザいわく、見どころがない、らしいのだが、がんばってもらいたい。

 ゴブリンの群れが襲ってきた。三十匹くらいいる。

 やれやれ。戦闘はできれば、さけたいのだけど。一度は、回復魔法があるから、何が起きても大丈夫だと思ったけど、おれが上手に正確に的確に毎回、回復魔法を使える自信がない。回復魔法を使ったつもりが、ゾンビのようになったらどうするのだ。

 そう思うと、やはり、仲間が死ぬのは怖い。

「ゴブリンごときに負けるわけにはいかんぞ。返り討ちにするぞ」

 ロザミアが剣を抜く。

「ゴブリンって、弱いのか?」

 おれが聞くと、

「油断ならない怪物にはちがいないが、弱い方であろうな」

 とアイザが答えた。

 おれは、一匹、二匹と、次々と斬り殺していったけど、ゴブリンが弱いのはよくわかった。

 おれは安心して、七匹、八匹と倒したが、その時、信じられないことが起きた。

 神さまがゴブリンを斬り殺したのだ。

 おれは驚いた。神さまは、おれと入れ替わって、おれと同じ体をしている。その凡人であるおれの体を使って、どうやって、この異世界の怪物を倒すことができるというのだろう。

「や、やった。我輩は勝利したである」

 神さまも勝利を誇っている。これは、元の世界のおれの体がこの世界の怪物を倒せるほどに経験値を積んだことを意味する。

 超意外なできごとだった。

「やったな、神さま」

「うむ。我輩、嬉しいである」

 といってると、神さまは二匹目のゴブリンに殴り倒されていた。二匹目にはまだ勝てないらしい。

 おれはリーゼと神さまの周りのゴブリンを剣を旋回させて、一掃した。

「無理するな。神さま、今日はよくやったよ」

「ひええ、痛いでござる」

 神さまは半泣きだ。

「どうしたんだ、まこと」

 ロザミアが話しかけてきた。

「それが、神さまがとうとう、一匹目の怪物を倒したんだ」

 おれが答えると、

「何! それは本当か。すごいじゃないか」

 と、ロザミアも喜んだ。

「めかけが思うに、これはめかけの危機なのです」

「ん? どうしてだ、リーゼ」

 おれが聞くと、

「それはまだいえません、救世主さま」

 と不思議なことを口にした。

 どうやら、アイザが最後のゴブリンを倒したところのようだ。

「どうした、どうした」

 アイザが駆け寄ってきた。

「それが、神さまがとうとう怪物を一匹やっつけたんだ」

 おれが説明すると、

「本当か! やったじゃないか、神さま。これで剣術を教えていたわたしにも、教えがいがあったというものだ」

 と答えた。

「我輩は成長したである」

「うん、うん、偉いよ、神さま」

 おれはしきりに神さまを褒めた。

「神さまはめかけの想像を遥かに超えてすごいのです」

 リーゼがいった。

「今日はちょっとした記念日だな。神さまの初勝利を祝って、祝杯をあげるか?」

「我輩はケーキの方が嬉しいでござる」

「それじゃあ、ケーキだ」

 師匠のアイザの喜びも大きかった。

 その日の晩は、宿場でケーキを買って食べた。美味しかった。

 神さまの初勝利。

 おれは考えた。おれがリーゼによって謎の力を与えられなかったら、ゴブリンに勝てただろうか。

 無理だろう。

 神さまは、おれには不可能なことをやってのけたのだ。


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