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1章-5

今回は結構短めです。ちょうど区切りが良かったので・・・


 ガタゴトガタゴト・・・一夜明け、あたし達は馬車に揺られて一路首都に向かっています。



 昨夜、何とか貞操の危機を脱した後、シェハラザードに何で馬車に乗っていた聞いてみた。

 すると彼女は緩慢な動作で皮袋の中から一通の手紙を取り出すと「どうぞご覧ください。」とちょっと眉間にしわを寄せながらあたしに手渡した。


 蝋で丁寧に封をされていたその手紙には、とても綺麗な字体で、

 『そろそろ帝都に遊びに来い』

 『2(ラス)ほどしたら闘技場が開かれるからまた手合わせをしたい』

 『もうそろそろ冒険者なんてヤクザな商売は止めて仕官したらどうだ』なんて事がつらつらと綴ってあった。

 

 もう書面から世話焼きっていうか、この人アレクのことがホント気に入ってるんだなーって言うのが伝わってくる暖かい内容で、正直シェハラザードから聞いたアレクの秘密が結構堪えていたあたしにはちょっと読みながら目尻がジンワリしてしまったのだった。


 でもさ、ほんとに内容が異様なぐらい超心配性なの。生水飲むなとか、飯は3食栄養バランスを取ってキチンと食えとか、ちょっとでも怪我をしたら直ぐにシェラハザードに直してもらえとか、早く彼女見つけろとか、お前はどこぞのお母さんかってぐらい事細かに注意事項が書かれていた。ていうか、此処まで心配されるアレクシスの素行と手紙の送り主の関係性が凄く気になるんですけど!


 どんな過保護さんからのお手紙ですがと差出人の氏名を確認すると、リヴォーネ国の首都であるファマグスタにお住まいのロイ・カルヴァートさんと書いてありました。


 あたしはもう一度良く手紙を読んでみてから綺麗に畳んでしまうと、さっきから不機嫌そうにそっぽを向いているシェハラザードに、

「この人とアレクってどんな関係?何かやけにアレクのこと心配してくれてるみたいだけど」とちょっと聞いてみた。


 そのときのシェハラザードは綺麗な眉を思いっきりしかめ、忌々しげに

「アレク様が仰るには好敵手と書いて親友(とも)と呼ぶと。ロイが言うには手の掛かる弟だそうです」

 ・・・あのー、シェハラザードさん、貴女の身に纏うオーラが異様に黒いように見えるのはあたしの気のせいでしょうか??ちょっと引き気味なあたしに、

「だって!!“ワコク”の方以外であんなに親しくされているのロイだけなんです!アレク様の特別はあたしだけで十分なんですーー!!」

 と悔し涙を流していた・・・独占欲ですか、判ります。


 なんでも、アレクシスとロイは元々は3シーク程前に知り合った冒険者仲間だそうだ。お互いの性格と戦い方の相性が良かった為一緒にパーティを組んでいたらしい。だが、今ロイは家業の手伝いとかで冒険者を廃業してファマグスタに居を構えているそうだ。


 そりゃさー、戦友で同じ釜の飯食った仲同士なら、他の人には相容れない阿吽の呼吸とかも在ったりしちゃうだろうさーねー。

 打ち拉がれているシェハラザードに「男子特有の熱い友情だから気にすんな」と、某週間少年誌を思い出しながら励ましておいた。


 でもさ、そんな関係なら当然あたしとアレクが別人格であるというとは簡単に判ってしまうし、何より昔話でもされたらあたしは答えられない。なので、シェハラザードと打ち合わせをして盗賊団に襲われたとき強く頭を打って記憶喪失になったという設定を設けた。取り合えず、何を言われても「覚えていません」と言っとけば大丈夫だろう。


 こうしてある程度の情報を仕入れて、あたし達はドナ〇ナよろしく馬車に揺られながら、これといったトラブルも無くのんびりとした旅路を続けていったのでありました。


 そして馬車での旅が再開してから5リス程が経過し、街道も土から石畳へ姿を変え街道周りも随分と整理された民家が増えてきたと思ってきたところ、それはついに姿を現した。


 背後をシャルナ湖、前面をスプリット山脈という天然の要塞に守られたリヴォーネ国の首都ファマグスタ。

 別名“水の都”とも“神に愛された都”とも謳われるどんな時でも決して水が嗄れることの無い都。


 あたしはおのぼりさん宜しく物珍しい目で城門が開くのを見ていたが、その裏でアレクシスがまた違った目で視ていたのをついに気付くことはなかった。




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