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第8話 エルディア旅立ち

魔法省。

研究室。

俺はまだ柱に縛られていた。

「そろそろ解いてくれない?」

クロエは机に座り、

ノートに何かを書いている。

「もう少し」

「大事なデータ取ってるの」

「人を実験動物みたいに言うな」

クロエが振り向く。

「実験動物じゃないわ」

「研究素材」

余計ひどい。

ファイムが心配そうに言う。

「クロエさん」

「ほどほどにしてください」

クロエはペンをくるくる回す。

「でもね」

「面白いのよこの人」

クロエが俺の腹を指で突く。

ぷに。

「やめろ」

クロエが言う。

「マナって普通はね」

「体の中を循環してるの」

「血液みたいに」

セレナが聞く。

「魔法はその一部を使うのよね?」

クロエが頷く。

「そう」

「でも今の世界は違う」

クロエは窓の外を見る。

エルディアの街。

昔は

魔法使いの都だった。

「今は」

「マナがほとんど流れてない」

ファイムが静かに言う。

「魔法使いが減った理由です」

クロエが机に地図を広げる。

「マナはね」

「昔は世界を巡ってた」

「自然の循環」

「海」

「森」

「大地」

「全部」

クロエが指で線を描く。

「でも今は」

「どこかに吸われてる」

俺が言う。

「吸われてる?」

クロエが頷く。

「そう」

「巨大な何かに」

研究室が静かになる。

そのとき。

リリアナが聞く。

「それと」

「モンスター増えてるの関係ある?」

クロエが言う。

「ある」

「モンスターは」

「マナがないと増殖する」

セレナの顔が変わる。

「じゃあ」

「今の世界って」

クロエが答える。

「モンスターに有利」

ファイムが言う。

「だから」

「スタンピードが増えている」

クロエが頷く。

「そして」

「今」

「ヴァルク王国が危ない」

クロエが机に別の紙を出す。

報告書。

「モンスター増加」

「異常個体」

「群れ行動」

俺が言う。

「スタンピード?」

クロエが頷く。

「ほぼ確定」

セレナが聞く。

「どれくらい危険?」

クロエが答える。

「そうねー、国一つ、消えるくらい?」

沈黙。

リリアナが小さく言う。

「……助けないの?」

クロエが肩をすくめる。

「普通は」

「王国騎士団がやる」

そして。

クロエが俺を見る。

「でも」

「今回は面白い材料もあるし」

指を指す。

俺。

「やめろ」

クロエが笑う。

「あなたのマナ」

「もしかしたら」

「世界を救うかも」

「そんな大げさな」

クロエが言う。

「大げさじゃない」

そして。

クロエは言った。

「ヴァルク行くわよ」

俺が言う。

「俺も?」

クロエが答える。

「研究!」

ファイムが言う。

「私も行きます」

リリアナも言う。

「私も!」

セレナが笑う。

「決まりね」

こうして。

俺たちは

ヴァルク王国へ

向かうことになった。

そのとき俺たちは

まだ知らない。

この旅が

世界を変える戦いに

繋がることを。

*

エルディアの朝。

魔法省の前。

俺たちは出発の準備をしていた。

荷物。

食料。

武器。

そして――

「……これで行くの?」

セレナが言う。

目の前には

巨大な車。

装甲付き。

タイヤも普通じゃない。

明らかに

この世界の技術じゃない。

「クロエ」

「これ何?」

クロエが胸を張る。

「錬金術装甲車」

「正式名称はまだない」

「長いから」

「とりあえず」

「クロエ号」

俺は言う。

「ネーミング雑だな」

クロエが運転席に座る。

「モンスターの牙でも壊れない」

「燃料はグレン」

「最高速度」

「たぶんこの世界最速」

「たぶんってなんだ」

ファイムが感心している。

「さすがです」

「クロエさん」

リリアナが聞く。

「すごいの?」

セレナが答える。

「すごい」

クロエが笑う。

「もっと褒めていいわよ」

俺たちは荷物を積み込む。

そのとき。

ワクさんが森の方を見ていた。

俺が聞く。

「どうした」

ワクさんが言う。

「……友達」

「探す」

俺は首をかしげる。

「モンスター?」

ワクさんが頷く。

「うん」

「この森」

「いっぱい」

「仲間」

セレナが言う。

「一緒に来ないの?」

ワクさんが少し考える。

そして言う。

「……グレン」

「強い」

「大丈夫」

俺は少し笑う。

「まだ猿より弱いぞ」

ワクさんが首を振る。

「違う」

そして言った。

「オレ」

「友達」

「集める」

沈黙。

俺は頭を掻く。

「そうか」

「好きにしろ」

ワクさんが頷く。

そして。

俺に手を差し出した。

握手。

俺はその手を握る。

「またな」

ワクさんが言う。

「また」

リリアナが泣きそうになる。

「また会える?」

ワクさんが笑う。

「会える」

そして。

森へ歩いていった。

静かに。

大きな背中が

少しずつ遠くなる。

セレナが言う。

「寂しくなるわね」

俺は言う。

「猿だけどな」

クロエが言う。

「さ」

「行くわよ」

クロエ号のエンジンが唸る。

ゴオオオオ!!

車が動く。

そのとき。

地面の土が

もこっと盛り上がった。

グッピーの尾びれ。

どうやら

ついてくるらしい。

「……」

俺は何も言わなかった。

エルディアの街を出る。

道の先。

遠くに見える

ヴァルク王国。

そして――

空。

黒い雲のような影。

モンスターの気配。

まだ遠い。

だが確実に――

スタンピードは近づいていた。





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