第6話 聖女のたまご
翌朝。
宿の部屋。
リリアナが元気よく起き上がった。
「おはよー!!」
元気すぎる。
「おはよう」
俺はまだ眠い。
セレナが言う。
「今日は契約するんでしょ?」
リリアナが頷く。
「うん!」
ファイムが説明する。
「主従契約は、主のマナと従者のマナを繋ぐ魔法契約です」
「従者は主の保護下に入り、代わりに力を貸します」
リリアナは首を傾げる。
「難しい!」
ワクさんが言う。
「グレン……強い」
「マナ……いっぱい」
「だから……みんな強くなる」
「おお、分かりやすい」
俺が言う。
「嫌だったらやらなくていいぞ」
リリアナは即答した。
「やる!」
早い。
セレナが笑う。
「決断早いわね」
ファイムが言う。
「では、手首を合わせてください」
俺はしゃがむ。
リリアナの小さな手を握る。
あったかい。
「名前を呼んでください」
俺は言う。
「リリアナ」
その瞬間。
バチッ!!
「いたぁぁぁ!!」
リリアナが跳ねた。
「大丈夫か!?」
「ビリビリした!」
「でも平気!」
首の後ろに淡い紋章が浮かぶ。
ワクさんが頷く。
「契約……成功」
ファイムも確認する。
「成立しました」
リリアナが胸を張る。
「今日から私!」
「冒険者!」
「軽いな」
俺は笑った。
ギルド。
受付嬢が紙を書く。
「新規登録ですね」
「名前は?」
「リリアナ!」
受付嬢が顔を上げる。
「……聖女の血?」
リリアナが頷く。
「そう!」
受付嬢は少し驚いた。
「珍しいですね」
「今はほとんどいませんから」
登録はすぐ終わった。
リリアナがカードを見る。
「これ私の?」
「そうだ」
「すごーい!」
*
エルディア郊外。
荒地。
ファイムが腕を組んで立っている。
「では始めましょう」
リリアナが腕を上げる。
「ヒール!」
……。
何も起きない。
沈黙。
「ヒール!!」
何も起きない。
「ヒーーーーール!!」
やっぱり出ない。
セレナが言う。
「うん」
「使えてないわね」
リリアナが言う。
「なんで!?」
ファイムが優しく言う。
「光魔法はとても難しい魔法です」
「特にヒールは、イメージが重要です」
リリアナが聞く。
「どんなイメージ?」
ファイムは少し考える。
「傷を治したい」
「守りたい」
「そういう気持ちです」
リリアナが腕を上げる。
「ヒール!!」
……。
やっぱり出ない。
リリアナが地面に座る。
「むずかしい……」
ワクさんが近づく。
「焦る……だめ」
「ゆっくり」
リリアナが頷く。
「うん」
その様子を
俺は遠くから見ていた。
セレナが言う。
「グレンは?」
「修行しないの?」
「……する」
俺は大剣を構える。
ドン。
振る。
ドン。
振る。
ドン。
振る。
三回で息切れ。
「はあ……」
セレナが呆れる。
「体力なさすぎ」
「マナは無限でも」
「肺は普通ね」
「うるさい」
ファイムが近づく。
「グレン」
「あなたのマナですが」
「やはり異常です」
「知ってる」
「魔法が使えないのが不思議です」
俺は言う。
「適性ゼロだからな」
ファイムは少し考える。
「いえ」
「もしかすると」
「別の使い道があるかもしれません」
「例えば?」
「武器です」
俺は大剣を見る。
ファイムが続ける。
「あなたは剣を振るとき」
「無意識にマナを流しています」
「それは軽い強化魔法と同じ状態です」
「つまり」
「道具を介せば」
「マナを使える可能性があります」
俺は言う。
「なるほど」
「だから俺」
「猿より弱いのか」
「そこは努力です」
ひどい。
そのとき。
ファイムがポケットを探る。
「……あ」
紙が出てきた。
手紙。
ファイムが読む。
目が丸くなる。
俺が聞く。
「どうした?」
ファイムが言う。
「ヴァルク王国の錬金術師」
「クロエからです」
セレナが言う。
「知り合い?」
「はい」
「私は昔」
「彼女の研究を手伝っていました」
ファイムは手紙を読む。
表情が真剣になる。
「……どうやら」
「ヴァルクで」
「大きな問題が起きているようです」
俺が聞く。
「どんな?」
ファイムが言う。
「モンスターが」
「異常に増えているそうです」
セレナが顔を上げる。
「それって」
ファイムが頷く。
「スタンピードの前兆かもしれません」
風が吹く。
遠くで
「ヒーーーーール!!」
リリアナの声。
やっぱり出ない。
俺たちはまだ知らない。
この出来事が
後に
大きな戦いへ
繋がることを。
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