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第5話 家族が増えた

エルディア郊外。

荒れた平原。

俺たちはそこに立っていた。

ファイムが深呼吸する。

「では……」

「試してみます」

俺とセレナは並んで見守る。

なぜか親の気分だ。

ワクさんは腕を組んでいる。

「ファイム……緊張」

「少しだけです」

ファイムが静かに言う。

「十八年間」

「魔法を研究してきました」

「ですが実際に使うのは」

「これが初めてです」

俺が言う。

「責任重大だな」

セレナが笑う。

「グレンのマナだからね」

ファイムが小さく頷く。

「では」

「詠唱します」

空気が静かになる。

ファイムが詠唱を始めた。

「火よ」

「精霊よ」

「我が呼び声に応え」

「形を成せ」

足元に

魔法陣が浮かび上がる。

淡く光る円。

俺が思わず声を出す。

「おお……」

セレナも目を見開く。

「本物の魔法陣よ」

ファイムの頭上に

小さな火の玉が生まれた。

ゆっくり回る。

少しずつ大きくなる。

……大きくなる。

どんどん大きくなる。

俺が言う。

「……でかくない?」

セレナも言う。

「でかいわね」

ファイムが最後の詠唱を言った。

「ファイヤーボール」

ドゴォォォン!!!

巨大な火球が飛んだ。

岩山に直撃。

爆発。

岩が崩れ落ちる。

静寂。

そして。

ファイムが跳ねた。

「魔法が出たぁぁぁぁぁ!!」

大興奮。

「成功です!」

「成功です!」

「成功です!!」

俺とセレナも跳ねた。

「出た!」

「本物!」

「やべえ!」

三人でぴょんぴょんする。

ワクさんだけ冷静。

「おめでとう」

ファイムの目が潤む。

「十八年……」

「初成功です……」

その言葉の重みが

少しだけ伝わる。

俺は腹を叩いた。

「俺のマナ、役に立ったか?」

ファイムが真顔で頷く。

「ええ」

「あなたのおかげです」

セレナがニヤリと笑う。

「グレン救世主候補ね」

「やめろ照れる」

ファイムが言う。

「ただし」

「問題があります」

俺が聞く。

「なに?」

ファイムが岩山を見る。

「ファイヤーボールは」

「本来20cmです」

……。

俺とセレナが同時に言う。

「え?」

ファイムが続ける。

「グレンのマナ量」

「異常です」

「威力が制御できません」

俺は頭を掻く。

「扱いづらい能力だな」

セレナが言う。

「でも夢はあるわ」

ファイムが静かに言った。

「はい」

「魔法はまだ死んでいません」

「きっと」

「取り戻せます」

俺は空を見上げた。

魔法のない世界。

でも。

少なくとも今

一つの魔法が生まれた。

俺たちは

少しだけ笑った。

その日の夕方。

エルディアの裏通り。

俺たちは宿へ戻る途中だった。

「今日の魔法すごかったな」

俺が言う。

ファイムが照れる。

「まだ制御ができませんが……」

セレナが笑う。

「グレンのマナのせいね」

「お前の言い方ひどくない?」

そのとき。

騒ぎ声が聞こえた。

「やだよおお!!」

少女の声。

俺たちは足を止めた。

路地の奥。

男が少女の腕を掴んでいる。

「離してよ!!」

少女は小さい。

十四歳くらい。

白銀の髪。

顔の半分に大きな火傷の跡。

男が困った顔で言う。

「仕方ないだろ」

「うちも商売だ」

「もう面倒見きれない」

後ろには

奴隷商の馬車。

セレナが小声で言う。

「……奴隷商ね」

この世界では合法だ。

でも。

俺は前に出た。

「あの」

男が振り向く。

「なんだ?」

「その子」

「売るんですか?」

セレナが小声で言う。

「勢いで聞くな」

男はため息をつく。

「この子はな」

「何でもできるっていうから雇った」

「でも」

「物を壊してばかりでな」

少女が叫ぶ。

「ちがう!」

「魔法の練習してただけ!」

男が肩をすくめる。

「見ての通りだ」

「顔もあれだし」

「売れるかどうかも怪しいが」

少女の顔。

火傷。

セレナの目が潤む。

ファイムが言う。

「……白銀の髪」

「あなた」

「聖女の血ですか?」

少女が顔を上げた。

「そう!」

「お母さんも」

「おばあちゃんも聖女!」

「でも……」

「もういない」

ファイムが静かに言う。

「光魔法の一族」

「マナ枯渇で迫害されたと聞きました」

少女が拳を握る。

「魔法が使えないから」

「みんな離れていった」

沈黙。

俺は頭を掻いた。

なんか。

見てられない。

俺は腹を叩いた。

「うち来るか?」

少女が固まる。

「え?」

セレナが言う。

「プロポーズ?」

「違うわ!」

少女が俺に抱きつく。

「行く!」

「絶対行く!!」

男が言う。

「本当か?」

「助かるよ」

男は深く頭を下げて去った。

少女が笑う。

「私リリアナ!」

ワクさんが少女を見る。

静かに頷く。

「よろしく」

セレナが笑う。

「家族が増えたわね」

俺は言う。

「まだ契約してないけどな」

ファイムが言う。

「主従契約を結べば」

「身分証が作れます」

「冒険者登録も可能です」

リリアナが言う。

「契約する!」

「すぐする!」

即答だった。

俺は少し驚く。

「いいのか?」

リリアナは笑う。

「だって」

「グレン優しいから」

……。

セレナが小さく笑った。

こうして。

俺たちのパーティーに

もう一人

仲間が増えた。 




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