第3話 幼なじみ
朝。
ワクさんが木から降りる音で目が覚めた。
ガサッ。
「おはようワクさ――」
「オハヨウ」
……。
目の前に、全裸の男が立っていた。
身長はほぼ俺と同じ。
胸板厚い。
腹筋バキバキ。
顔は阿部ひ〇し似。
ただし。
毛色と尻尾だけ昨日の猿。
「誰だーーーーーー!!」
「オレ……ワクさん……」
進化していた。
「方向性どうなってんだよ!!」
「成功」
成功じゃねえ。
セレナが寝返りを打つ。
「んー……朝から騒がし……」
「起きるなあああ!!」
俺は慌てて葉っぱを装着させた。
三秒で落ちた。
意味がない。
結局、
俺の服を着せた。
……。
俺より似合ってるのが腹立つ。
森がざわつく。
ガサガサッ。
華奢ウルフ五体。
昨日より速い。
俺が剣を構えるより早く、
ワクさんが棒を構えた。
ヒュッ。
ゴッ。
ドゴン。
バキッ。
三十秒。
終了。
……。
俺、何もしてない。
セレナが腕を組んで分析する。
「中級冒険者レベルね」
「俺より強い?」
「ええ」
無限マナ持ち。
適性ゼロ。
デブ。
猿以下。
人生ハードモード。
*
コンクリ狸が現れた。
「グレン出番よ」
「やっとか」
俺は大剣を振り下ろす。
ガキン!!
硬い。
だが――
ザン!!
真っ二つ。
コンクリートみたいに硬い狸が倒れた。
「……よし」
まだワクさんより役に立たない。
でも。
威力は成長してきた。
気がする。
戦士適性ある。
そう思わないとやってられない。
そのとき。
川の中で、石が光った。
拾う。
石の中。
影がひらひら泳いでいる。
グッピーみたいな小さな魚。
「かわいいな」
セレナが覗き込む。
「ロックフィッシュね。地面を泳ぐモンスター。水が苦手だから川で動けなくなってたのね」
「害は?」
セレナ即答。
「捨てなさい」
「ですよね」
川へ投げようとした瞬間。
石が滑る。
俺も滑る。
ドボン!!
「何やってんの!?」
「流されるかと思った!」
石を握ったまま岸へ戻る。
……なんか守ったみたいになってる。
セレナが呆れる。
「持ってく気?」
「置いて帰ります!」
そっと地面に置く。
「じゃあな、グッピー」
石の中の魚が、
こちらを見た気がした。
気のせいだ。
*
その日の夜。
経由地の街に着いた。
俺たちは
魔法都市エルディアを目指している。
かつて
魔法省
魔法学園
巨大図書館
世界中の魔法使いが集まった街。
俺の無限マナの使い道が
分かるかもしれない。
その途中の街だ。
「ちょっと、そこのブタ」
声がした。
振り向く。
双剣の女剣士。
短髪。
鋭い目。
「あ?」
「止まりなさい」
「……レイ?」
女剣士が眉を上げる。
「久しぶりねブタ」
「ブタじゃねえ」
レイが俺の大剣を見る。
「……あんた冒険者になったの?」
「そうだよ」
「ブタって冒険者になれるんだ」
「そこ驚くところ?」
セレナが聞く。
「そちらの方は?」
レイが胸を張る。
「私はレイ」
「こいつの幼なじみ」
「最近、上級冒険者になったわ」
この歳で上級。
普通じゃない。
レイは昔から運動神経がおかしかった。
親父さん曰く
「2歳でバク転した」
意味がわからない。
レイが俺を見て言う。
「あんたすぐ死ぬわ」
「やるだけやる」
「ふん」
レイが腕を組む。
「忠告はしたわよ」
そして背を向ける。
「私この街で討伐してるから」
「分からないことあったら」
「教えてやらないこともないわ」
「感謝しなさい」
レイは去った。
相変わらずだ。
*
翌朝。
路銀を稼ぐため
ギルドへ行く。
受付嬢が顔を上げる。
「いらっしゃいま――」
固まった。
視線の先。
ワクさん。
俺の服を着た
イケメン猿。
受付嬢が赤くなる。
「お、お名前を……」
「グレンだ」
「あなたじゃない」
え?
受付嬢はワクさんを見ている。
ワクさんが胸を張る。
「オレ……ワクさん」
受付嬢が頷く。
「ワクさん……」
うっとりしている。
俺は横で立っている。
完全に背景。
「俺の扱い雑じゃない?」
セレナが肩を叩く。
「まあまあ」
受付嬢が紙を出す。
「初心者向け依頼です」
紙の山。
初心者でもこの量。
レイが必要とされるわけだ。
「華奢ウルフ10匹」
「コンクリ狸10匹」
これにした。
*
討伐は順調だった。
華奢ウルフは
ワクさんとセレナが倒した。
俺は息を切らしながら
コンクリ狸を斬る。
そのとき。
地面が盛り上がった。
もこ…
もこもこ…
もこもこもこ!!
「グレン後ろ!」
地面から飛び出した。
岩の魚。
しかも
車サイズ。
「逃げろ!!」
俺が言う。
そのとき。
ワクさんが止めた。
「グレン」
「これ」
「友達」
「……は?」
ワクさんが高い声で言う。
「グレンー!」
「友達のグッピーだよー!」
「やっと会えたねー!」
「って言ってる」
……。
昨日の石?
「まじか」
もう少しのことでは驚かない。
セレナが呆れる。
「また手懐けたのね」
グッピーは
コンクリ狸を
ガブガブ食べて
一掃した。
そのとき。
「邪魔よ!そこのブタ!」
レイが飛び込んできた。
後ろにモンスター。
ハリマンボン。
空飛ぶハリセンボン。
速い。
レイは
アクロバットで避けながら
トゲを斬っていく。
残り一本。
そのとき。
セレナが叫ぶ。
「だめ!!」
「そのモンスター!」
「トゲ無くなると爆発する!!」
「え?」
レイは
斬っていた。
ドオオオオオン!!!
突風。
崖。
レイが吹き飛ばされる。
俺がマントを掴む。
「つかまえた!」
レイが叫ぶ。
「離しなさい!」
そして
マントを斬った。
レイが落ちる。
その瞬間。
上から
グレンが平泳ぎで落ちてきた。
「うおおおおお!!」
「グッピーーーー!!!」
巨大な口。
グッピー。
二人をキャッチ。
崖に張り付く。
「い……生きてる」
レイが泣く。
「ふえええええ!!」
「泣くな」
「もう大丈夫」
グッピーが崖を登る。
レイが小声で言う。
「……私」
「汚い」
「俺もチビった」
「お互い様」
*
翌日。
俺たちは
エルディアへ出発する。
街を出るとき。
レイが呼んだ。
「グレン!」
「……少しは認めてあげる」
「感謝しなさい」
「ありがとうございます」
レイがさらに赤くなる。
「死んだら承知しないんだからね!!」
「……またね」
レイは去った。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
面白かったら★評価・フォロー・感想いただけるととても励みになります!




