第19話 帰還
数ヶ月後。
ヴァルク王国。
城壁。
朝。
遠くの道に
人影が見えた。
騎士が叫ぶ。
「討伐隊だ!!」
城壁がざわめく。
人々が集まる。
街の人が叫ぶ。
「帰ってきた!!」
「生きてる!!」
黒域遠征。
ついに
終わった。
隊列の先頭。
カイトが歩いている。
その横。
俺。
グレン。
完全に痩せた。
腹は引き締まり、
鎧の隙間から筋肉が見える。
いわゆる
細マッチョだ。
みんな驚くぞ。
門が開く。
ギギギギ。
街の人々が
一斉に歓声を上げた。
「おおおおお!!」
「英雄だ!!」
「スタンピードを止めた!!」
そんな大げさな。
俺は頭を掻く。
そのとき。
人混みをかき分けて
走ってくる影。
「グレン!!」
リリアナだ。
勢いよく
走ってくる!
……のに。
素通りした。
「グレン!?グレンいないグレン!!」
「リリアナ!俺!ここ!ここ!」
「グレ……ン?」
「そう!」
沈黙。
俺は頬を横に引き伸ばす。
「どうだ!?」
「グレン!!!」
リリアナが飛びつく。
「生きてた!!」
「そりゃな」
リリアナが言う。
「あとね!」
「グッピーが連れてきた人達!」
「みんな無事!」
「そうか」
安心した。
後ろから
ファイムが歩いてくる。
少し笑っている。
「おかえりなさい」
「おう」
「どなたか存じませんが、お疲れ様でし……」
「グレンです!」
クロエもいる。
腕を組んでいる。
「いい面になったじゃない」
そして言う。
「さ、魔石作るわよ」
「またそれかよ」
レイが
キョロキョロしている。
もう慣れた。
「レイ、俺だ」
「グレンだ」
「え!?グレン!?」
レイが驚く。
「街守ってくれたんだろ」
「ありがとな」
レイが後ずさる。
信じられない顔。
「な……な……」
そして叫んだ。
「なんで痩せちゃったのよーー!!」
激怒。
「なんでって……」
「お前、散々ブタって言ってたじゃねーか!」
「早く太りなさい!」
なんで?
レイが目を潤ませる。
「私の知ってるグレンを返して!」
怒って去っていった。
……。
この娘、
太っているグレンが
好きだったのね。
クロエだけが
わかっていた。
そのとき。
レオンハルトが言う。
「ボス討伐により」
「黒域の拡大は止まった」
人々がざわめく。
「本当か!?」
レオンハルトが続ける。
「さらに」
「黒域が」
「少し縮んでいる」
驚きの声。
「縮むのか?」
レオンハルトが言う。
「皆、よくやってくれた!」
「おおー!!」
歓声が上がる。
俺が言う。
「へえ」
よくわからん。
今度カイトに聞こう。
そのとき。
街の中央。
リリアナが
怪我人の前に立った。
「ヒール」
光。
傷が消える。
討伐隊が驚く。
「治った!」
「聖女様だ!」
リリアナが慌てる。
「せ、聖女じゃないです!」
ファイムが小さく笑う。
「聖女じゃないですか」
その光を見ながら
俺は思う。
もしかしたら。
世界は
少しずつ
変わるのかもしれない。
そのとき。
俺の腹が鳴った。
ぐう。
沈黙。
クロエが言う。
「よし!」
「今日は浴びるほど飲むわよー!」
リリアナが抱きつく。
「ご飯食べよー!」
ファイムも抱きつく。
「帰りましょう!」
空は青い。
ヴァルクは
平和になった。
そのころ。
黒域。
最深部。
深い闇。
「……マナ……」
「食べたい……マナ……」
何かが
目を開けた。
「……無限のマナ」
低い声。
「見つけた」
巨大な影が
ゆっくりと動く。
黒域の奥。
世界の闇は
まだ
終わっていない。
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