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第15話 スタンピード

黒域。

遠征が始まって

八ヶ月が過ぎていた。

湿地は終わらない。

ぬかるみ。

腐臭。

黒い草。

空は常に灰色。

遠征隊は黙って歩いていた。

誰も無駄口を叩かない。

毎日戦闘がある。

毎日疲れる。

そして。

毎日少しずつ

前に進む。

俺は息を吐く。

「はぁ……」

カイトが言う。

「ペース落ちてます」

「わかってる」

足が重い。

でも。

最初よりは

ずっと動ける。

騎士が言う。

「グレン」

「痩せたな」

早朝訓練を続けているから

実際かなり痩せた。

ファイム一人分くらいは

肉が無くなった気がする。

カイトも

手合わせをしてくれるようになった。

でも。

俺は腹をつまむ。

「まだ肉は摘める」

騎士が笑う。

少しだけ

空気が軽くなる。

そのとき。

カイトが止まった。

手を上げる。

「停止」

遠征隊が止まる。

カイトの目が光る。

魔眼。

カイトが言う。

「……前方」

騎士が聞く。

「モンスター?」

カイトが首を振る。

「違います」

沈黙。

カイトが言う。

「静かすぎる」

確かに。

虫もいない。

鳥もいない。

風の音だけ。

騎士が言う。

「嫌な感じだ」

カイトが小さく言う。

「近いですね」

俺が聞く。

「何が?」

カイトが北を見る。

黒い森。

その奥。

「ボスです」

空気が凍る。

騎士が言う。

「もう?」

カイトが答える。

「まだ遠い」

「でも」

「縄張りに入っています」

つまり。

ここから先は

もっと危険。

俺は剣を握る。

手が少し震える。

カイトが言う。

「怖いですか?」

俺は答える。

「めちゃくちゃ怖い」

カイトが少し笑う。

「正直でいいですね」

俺は言う。

「でも」

「逃げない」

カイトが頷く。

そのとき。

ズズン。

遠くで

地面が揺れた。

騎士が言う。

「今の……」

カイトが静かに言う。

「歩いています」

沈黙。

俺が聞く。

「誰が」

カイトが答える。

「ボスです」

黒域の奥。

巨大な影が

ゆっくりと

動いていた。

森が

静かすぎる。

風の音しかない。

騎士が小さく言う。

「……気配がない」

カイトが答える。

「います」

そのとき。

ズズン。

また地面が揺れた。

黒い森の奥。

何かが動いている。

騎士が言う。

「見えるか?」

カイトが目を細める。

魔眼。

未来を読む。

その表情が

変わった。

「……まずい」

俺が聞く。

「何が」

その瞬間。

森の奥から

巨大な影が

立ち上がった。

遠い。

だが。

それでも分かる。

デカい。

とてつもなく。

そして。

次の瞬間。

空気が震えた。

「――――――――――!!」

雄叫び。

言葉にならない。

地面が震える。

木が揺れる。

湿地の水面が

波打つ。

遠征隊が固まる。

騎士が言う。

「なんだ今の……」

カイトが叫ぶ。

「まずい!!」

「散開!!」

そのとき。

森が動いた。

ざわざわざわ。

ざわざわざわ。

黒い森が

揺れている。

騎士が言う。

「……風?」

違う。

カイトが言う。

「違います」

「来ます」

次の瞬間。

森から

モンスターが飛び出した。

狼。

牛。

虫。

トカゲ。

数十。

いや。

数百。

騎士が叫ぶ。

「群れだ!!」

その瞬間。

さらに奥の森が動いた。

もっと多い。

もっと。

もっと。

カイトが叫ぶ。

「スタンピードです!!」

遠征隊が凍る。

誰かが言う。

「まだ一年経ってないぞ」

騎士が叫ぶ。

「早すぎる!」

モンスターの波が

押し寄せる。

地面が揺れる。

黒域全体が

動いている。

俺が言う。

「……おい」

「これ」

「やばくないか」

カイトが答える。

「はい」

そして静かに続ける。

「最悪です」

遠征隊は

ボスを目指していた。

だが。

ボスが

先に動いた。

黒域の奥。

巨大な影が

再び咆哮する。

スタンピードが

始まった。





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