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第14話 クロエの工房

グレンたち遠征隊を見送ったあと。

クロエ、ファイム、リリアナの三人は

ヴァルク王国のクロエの家――工房へ向かった。

クロエが扉を開ける。

「やっと家に帰って来れたわー!」

「ただいまー!」

沈黙。

ファイムが固まった。

「……これ……は」

リリアナが言う。

「ししょー……」

「どこから入るの?」

家の中は――

足の踏み場もないほど

散らかっていた。

本。

工具。

魔道具。

服。

紙。

酒瓶の山。

全部床にある。

クロエの生活力はゼロだった。

ファイムが言う。

「どうしたら…」

「こんなに散らかるんですか…」

クロエが言う。

「気付いたらこうなってるのよ」

「てへ★」

ファイムがため息をつく。

「リリアナ」

「まずは掃除をしましょう」

「寝床の確保です」

「はーい!」

*

魔道具作りが始まると

ファイムは忙しくなった。

クロエの助手として

毎日工房にこもる。

リリアナはその時間。

一人で魔法の修行をしていた。

結界魔法。

これは上達していた。

街を包めるほど

大きな結界。

小さくて強靭な結界。

どちらも作れる。

でも。

ヒールだけは

できない。

リリアナがつぶやく。

「ししょーが言ってた」

「人を治したいって気持ち」

「弱いのかなあ……」

そのとき。

声がした。

「リリアナ」

振り向く。

「ゆいちゃん!」

この街で知り合った友だち。

宿屋の娘だ。

「今日も魔法の修行?」

「うん」

「でも上達しない……」

ゆいが少し考える。

「ね」

「気分転換に」

「武術教えてあげよっか?」

「ぶじゅつ?」

「そ!」

「素手で戦うの」

「覚えて損はないわよ!」

リリアナの目が輝く。

「やるやる!」

ゆいが笑う。

「私のお父さん」

「結構有名な武道家だったの」

「私も小さい頃から習ってるから」

「それなりに教えられるわ」

それから。

リリアナは

魔法の修行の合間に

ゆいから武術を習うことになった。

*

そして数ヶ月後。

工房。

クロエが叫んだ。

「できたー!!」

ファイムが驚く。

「どうしました!?」

クロエが言う。

「グレンの魔石のおかげで」

「強力な銃がたくさん作れたわ!」

「早く撃ちたい!」

ファイムが引く。

「たまに」

「あなたが本当に怖くなります」

そして言う。

「動力がもったいないので」

「やめてくださいね」

クロエが言う。

「わかってるわよ」

そして聞く。

「そういえば」

「リリアナは?」

ファイムが答える。

「一人で修行しています」

「様子を見てきます」

「行ってらっしゃーい」

街の外。

リリアナが走っていた。

「リリアナ」

「調子はどうですか?」

「ししょー!」

リリアナが走ってくる。

汗だく。

ファイムが首を傾げる。

「……汗?」

リリアナが言う。

「修行の成果」

「見せたい!」

「ししょー」

「あの大きい石」

「投げて!」

ファイムは石を持つ。

重い。

「私に持てるかな」

「よいしょっと」

そして投げる。

「せーの!」

石が空を飛ぶ。

その瞬間。

リリアナが叫ぶ。

「はっ!!」

パァン!!

回し蹴り。

石が砕けた。

粉々。

砂になった。

ファイムが固まる。

「えええーー!?」

「どうやって!?」

リリアナが言う。

「足に強い結界張って」

「蹴った!」

ファイムが呟く。

「なんと……」

すごい攻撃力だ。

実戦でも使える。

しかし。

ファイムが言う。

「リリアナ」

「素晴らしい蹴りです」

「はい!ししょー!」

「しかし私たち魔法使いは」

「後衛です」

「はい!」

「ですから」

「この使い方は」

「もしもの時だけにしましょう」

「わかりました!」

「ししょー!」

元気な返事。

……わかっているといいけど。

そのまま二人は

夕飯の買い出しへ向かう。

街の人たちが声をかける。

「リリアナ!」

「今日も元気だね!」

「こんにちは!」

ファイムが微笑む。

「リリアナ」

「街の人と仲良くなりましたね」

「うん!」

「この街の人好き!」

ファイムが言う。

「とてもいいことです」

そして静かに続ける。

「その気持ち」

「忘れないでください」

「はい!」

「ししょー!」

遠く。

ヴァルクの城壁。

その外には

黒域。

そしてその奥には

遠征隊。

嵐は

まだ始まっていなかった。





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