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第13話 黒域

数日が過ぎた。

遠征隊は湿地を進んでいた。

全員、疲れ始めている。

ぬかるみ。

腐臭。

黒い草。

冒険者が言う。

「この森」

「嫌な感じだ」

カイトが答える。

「黒域です」

「常に嫌な感じです」

そのとき。

先頭の騎士が止まった。

「……何かある」

地面。

ぬかるみ。

そこに――

足跡。

大きい。

人の体ほどある。

騎士が言う。

「こんなの…」

「聞いてない!」

カイトが静かに言う。

「来ます」

次の瞬間。

地面が爆発した。

ズガン!!

泥が吹き飛ぶ。

巨大な影。

モンスター。

四本足。

岩のような装甲。

頭は牛。

体はトカゲ。

騎士が叫ぶ。

「なんだこれ!!」

モンスターが突進する。

速い。

騎士が弾き飛ばされる。

鎧ごと。

一撃。

血が飛ぶ。

カイトが叫ぶ。

「散開!!」

戦闘。

剣が振られる。

だが――

刃が通らない。

「硬すぎる!」

モンスターが尾を振る。

兵士が吹き飛ぶ。

動かない。

俺の手が震える。

死んだ。

初めて見た。

目の前で。

カイトが叫ぶ。

「目!」

「目を狙ってください!」

騎士が突撃する。

剣が刺さる。

モンスターが暴れる。

その瞬間。

カイトが踏み込んだ。

魔眼。

斬。

剣が目に突き刺さる。

モンスターが倒れる。

ドン。

地面が揺れる。

沈黙。

誰も喋らない。

冒険者が言う。

「……死んだか」

騎士の体。

動かない。

黒域。

ここは戦場だ。

俺は拳を握る。

怖い。

逃げたい。

でも。

逃げたら。

街が終わる。

俺は剣を握る。

カイトが言う。

「グレン」

俺は言う。

「わかってる」

「逃げない」

カイトが少し頷いた。

黒域は

まだ

本気を出していない。

*

*

2ヶ月が経った。 

俺は早朝訓練を続けている。

少し痩せた。

まだメタボだが。

カイトが膝にテーピングをした。

「歩きやすくなりましたか」

そして言う。

「もっと痩せましょう」

シンプルに言われた。

ジワる。

遠征隊は静かに進んでいる。

続くぬかるみ。

腐臭。

黒い草。

遠征が始まったばかりの戦闘で

死者が出て、

それから空気が変わった。

誰も油断しない。

そのとき。

カイトが手を上げた。

「止まってください」

全員が止まる。

カイトが言う。

「前方」

「一体」

騎士が聞く。

「小型ですか?」

カイトが答える。

「狼型」

「一体です」

騎士が言う。

「なら俺が――」

カイトが言う。

「待ってください」

そして。

俺を見る。

「グレン」

嫌な予感がした。

「おう」

カイトが言う。

「行ってください」

騎士たちがざわつく。

「一人で?」

カイトが頷く。

「訓練です」

俺が言う。

「まじか」

カイトが言う。

「できます」

逃げたい。

でも。

ここで逃げたら

一生逃げる。

俺は大剣を握る。

ぬかるみを進む。

森の奥。

狼型モンスター。

黒い毛。

牙。

俺を見る。

低く唸る。

心臓がうるさい。

怖い。

でも。

カイトの声が聞こえる。

「動きを見てください」

俺に魔眼はない。

自分の目だ。

モンスターが飛びかかる。

速い。

俺は横に転がる。

泥まみれ。

訓練のおかげで

少しだけ動けた。

モンスターが振り向く。

もう一度来る。

俺は剣を構える。

呼吸。

踏み込み。

振る。

ザン。

剣が通った。

モンスターが倒れる。

動かない。

静寂。

俺は立っている。

俺が。

倒した。

遠征隊がざわめく。

騎士が言う。

「やったぞ」

カイトが歩いてくる。

俺が言う。

「どうだ」

カイトが言う。

「合格です」

少し沈黙。

遠征隊が言う。

「グレンの」

「初勝利!」

俺は笑う。

そして言う。

「腹減った」

遠征隊が笑った。

少しだけ

空気が軽くなった。

黒域の奥。

湿地のさらに奥。

そこにいる

ボスを倒すまで

遠征は

まだ続く。





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