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第12話 早朝訓練

黒域。

遠征初日の夜。

森が揺れた。

ざわざわざわ。

次の瞬間。

モンスターが飛び出した。

狼型。

数十匹。

騎士が叫ぶ。

「夜襲だ!!」

剣が抜かれる。

焚き火が散る。

戦闘が始まった。

狼が飛びかかる。

騎士が斬る。

しかし数が多い。

冒険者が押される。

そのとき。

カイトが言う。

「右!」

騎士が反応する。

狼の爪を防ぐ。

カイトが踏み込む。

斬。

一体。

斬。

二体。

斬。

三体。

速い。

俺が言う。

「見えてるのか?」

カイトが答える。

「魔眼です」

「動きが読めます」

便利すぎる。

俺も大剣を振る。

重い。

でも。

ザン!

一体倒れる。

狼が飛びかかる。

もう一振り。

ドン。

腹で止めた。

エアバッグだ。

冒険者の戦士が笑う。

「頑丈だな」

嬉しくない。

次第に息が上がる。

モンスターに追いつけない。

騎士が怒鳴る。

「お前下がれ!!」

完全に足手まとい。

戦闘は続いた。

そして。

十分後。

最後の一体が倒れた。

静寂。

騎士が息を吐く。

「初日からこれか」

遠征は厳しい。

そのとき。

カイトが俺を見ていた。

じっと。

俺が言う。

「どうした」

カイトが言う。

「グレン」

「少し」

「いいですか」

俺は頷く。

カイトが近づく。

注意されるのか?

カイトが小さく言った。

「……やっぱり」

俺が聞く。

「何が」

カイトが言う。

「君は」

「マナが異常です」

俺が言う。

「知ってる」

カイトが首を振る。

「量だけじゃない」

沈黙。

カイトが言う。

「流れが」

「普通じゃない」

俺は腹を掻く。

「デブだから?」

カイトが言う。

「そんな理由ではありません」

そして小さく言う。

「まるで」

「泉みたいだ」

俺が言う。

「泉?」

カイトが答える。

「マナが」

「湧いている」

焚き火が揺れる。

遠くでモンスターの声。

黒域の夜は深い。

カイトが言う。

「グレン」

「君は」

「何者ですか」

俺は答える。

「ただのデブ」

カイトが少し笑った。

「……そうですか」

でも。

カイトの目は

まだ俺を見ていた。

そして言う。

「でも」

「このままでは死にます」

俺が言う。

「まじか」

カイトが言う。

「モンスターの速さについていけないと」

「斬れない」

「逃げられない」

黒域の奥。

湿地のさらに奥。

そこにいる。

ボス。

モンスターの装甲は

年々硬くなってきている。

カイトが言う。

「でも」

「ボス戦で」

「君の力が必要になる」

少し沈黙。

そしてカイトは言った。

「明日から」

「早朝訓練を始めます」

俺が言う。

「……え?」

*

遠征二日目。

まだ夜が明ける前。

誰かに肩を揺さぶられた。

「起きてください」

カイトだった。

俺は言う。

「まだ暗いぞ」

カイトが言う。

「早朝訓練です」

思い出した。

昨日の会話。

俺は言う。

「本当にやるのか」

カイトが言う。

「死にたくなければ」

「やります」

言い方が物騒だ。

俺は立ち上がる。

湿地の朝は冷たい。

カイトが言う。

「まず走ります」

嫌な予感しかしない。

カイトは袋を持っていた。

中から石を出す。

俺の背中に縛り付ける。

肩。

腰。

足。

重い。

「何これ」

カイトが言う。

「黒域では」

「これくらいの負荷が普通です」

普通じゃない。

カイトが歩き出す。

「ダッシュ10本です」

走る。

ぬかるみ。

足が沈む。

重り。

息が上がる。

カイトは軽い。

水の上みたいに走る。

ずるい。

十分後。

俺は倒れた。

泥の中。

「無理」

カイトが言う。

「立ってください」

「モンスターは待ってくれません」

俺は立つ。

もう一度走る。

転ぶ。

また走る。

また転ぶ。

太ももが悲鳴を上げる。

肺が焼ける。

一時間後。

俺は地面に倒れた。

動けない。

カイトが言う。

「次」

まだあるのか。

カイトが剣を抜く。

「避けてください」

嫌な予感がする。

カイトが踏み込む。

速い。

俺は転ぶ。

剣が頭の上を通る。

「殺す気か!」

カイトが言う。

「本気なら当たっています」

怖い。

カイトが言う。

「モンスターは」

「もっと速い」

「避けないと死にます」

俺は言う。

「やってやる」

立ち上がる。

カイトが動く。

斬。

ギリギリで避ける。

転ぶ。

泥まみれ。

カイトが言う。

「いいです」

「昨日より速い」

本当か?

そのとき。

遠くで角笛が鳴った。

ブオオオオ。

遠征隊の朝の合図。

俺は地面に倒れる。

空を見る。

黒い空。

カイトが言う。

「グレン」

俺が言う。

「なんだ」

カイトが言う。

「君は」

「強くなります」

俺は言う。

「そうか」

カイトが言う。

「はい」

少し沈黙。

俺は言う。

「でも今は」

「死にそう」

そして腹をさする。

「腹減った」

カイトが笑った。

「川で魚を取ってきます」

遠征は続く。

黒域はまだ

俺たちを

歓迎していない。





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