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第9話 ヴァルク王国

ヴァルクへ向かう途中。

クロエ号は森の中の空き地で止まっていた。

俺は岩の上に座らされている。

「動かないで」

クロエが言う。

「もう十分動けない」

俺の体には石がいくつも縛り付けられていた。

肩。

腕。

背中。

腰。

「これ何?」

クロエが答える。

「実験」

「嫌な予感しかしない」

ファイムが隣でメモを取っている。

「クロエさん」

「反応が出始めました」

クロエの目が光る。

「きた!」

石が淡く光る。

リリアナが言う。

「光ってる!」

クロエが石を外す。

表面が変わっていた。

透明。

中に淡い光。

クロエが息を飲む。

「……成功」

ファイムが驚く。

「魔石です」

セレナが言う。

「え?」

クロエが笑う。

「やっぱりね」

クロエが石を掲げる。

「グレンのマナ」

「魔石に変換できる」

俺が言う。

「つまり?」

クロエが答える。

「新しい魔道具が作れる!」

「修理屋卒業!」

セレナが言う。

「それって」

クロエが言う。

「スタンピード対策になる」

クロエの目が輝く。

「面白くなってきた」

*

それから数日。

クロエは

魔道銃、

結界装置、

次々と作っていく。

ファイムとセレナは、

完全に助手。

リリアナは、

俺の隣で魔法の練習。

俺は

「運転手兼、石製造機?」

セレナが笑う。

「便利ね」

そのとき。

空に影が走った。

クロエが顔をしかめる。

「飛竜?」

珍しい。

飛竜が降りる。

甲冑。

ルクシア王国の紋章。

隊長が言う。

「セレスティーナ様」

空気が止まる。

リリアナが言う。

「え?」

俺が言う。

「セレナ?」

セレナが目を閉じる。

小さく息を吐く。

「……見つかっちゃったか」

隊長が言う。

「ルクシア城にお戻りください」

「王命です」

沈黙。

セレナが俺を見る。

少し笑う。

「ごめん」

「隠してた」

俺は言う。

「王女だったんだろ」

セレナが頷く。

「もう逃げられないね」

隊長が続ける。

「ヴァルクはスタンピードが迫っています」

「国へお戻りを」

俺の腹が鳴る。

ぐう。

空気が壊れる。

セレナが笑う。

「最後までグレンね」

少し沈黙。

セレナが言う。

「グレン」

「死なないでね」

俺は答える。

「お前もな」

セレナは飛竜に乗る。

空へ。

遠くなる。

小さくなる。

やがて見えなくなった。

リリアナが言う。

「行っちゃった」

クロエが言う。

「感傷はあと」

「もう少しでヴァルクに着くわ」

*

クロエ号は山道を抜けた。

森が途切れる。

その先に――

巨大な城壁。

ヴァルク王国だった。

リリアナが身を乗り出す。

「わぁ……!」

高い石の城壁。

見張り塔。

門の前には長い列。

荷車。

冒険者。

兵士。

街に入るだけで検査を受けている。

クロエが小さく言う。

「もう始まってるわね」

「何が?」

「戦争準備」

門の前。

兵士がクロエ号を止めた。

鎧。

ヴァルク王国紋章。

兵士が車を見て驚く。

「……これは?」

クロエが言う。

「魔道具工房のクロエよ」

「王太子殿下御用達」

兵士が姿勢を正す。

「お疲れ様です!」

兵士が車をもう一度見る。

「あの……これは?」

クロエが答える。

「錬金術装甲車」

兵士が困る。

「いや」

「そういう意味ではなくて」

クロエが胸を張る。

「安心して」

「暴走はしない」

「当たり前だ」

門を通る。

街の中。

空気が重い。

店は開いている。

だが。

人が少ない。

武器屋。

防具屋。

冒険者ギルド。

どこも人が溢れている。

兵士の数も多い。

リリアナが言う。

「なんか……」

「怖い」

ファイムが答える。

「スタンピードの影響でしょう」

俺は空を見る。

北の空。

暗い。

クロエが言う。

「まだ時間はある」

リリアナが聞く。

「どうしたらいいの?」

クロエが言う。

「ボスを倒す」

俺が聞く。

「ボス?」

ファイムが説明する。

「モンスターの群れは」

「強い個体が統率しています」

「それを倒せば」

「群れは崩れます」

俺が言う。

「じゃあ」

「倒せばいいじゃん」

クロエが首を振る。

「簡単じゃない」

クロエが北を指す。

「黒域」

王国の北。

巨大な湿地帯。

モンスターの巣。

クロエが言う。

「ボスは」

「その奥にいる」

沈黙。

リリアナが言う。

「遠いの?」

クロエが答える。

「遠い」

「下手したら一年」

「一年!?」

クロエが言う。

「黒域は迷宮みたいなもの」

「簡単には辿り着けない」

俺は腹を掻く。

「つまり」

「遠征か」

クロエが頷く。

「そう」

「ボス討伐遠征」

そのとき。

遠くで角笛が鳴った。

ブオオオオオ!!

街がざわめく。

兵士が走る。

冒険者が振り向く。

ファイムが言う。

「王国会議ですね」

クロエが笑う。

「ちょうどいい」

「情報集めましょう」

俺はもう一度空を見る。

黒域。

湿地帯。

その奥。

巨大な影が

ゆっくりと動いていた。





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