表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/35

中庭② 好機?

雲が移動し、地表に月明かりが戻る。


「‥手の届かぬ憧れ貴女。今宵こちらに降りたったのは花に誘われたからでしょうか?それとも私の想いに気づいてくれたから?もし後者であるならば‥私は貴女に惜しみなく愛の歌を捧げよう」


普段詩人めいた言葉が思い浮かんだとしても、口にする事はない。

なのに不意に声に出してしまったのは、誰も居ないと思っていた中庭に1人の女性を見つけたからだ。


まさか本当に月女神が?


一瞬そう思ってしまったが、雲が徐々に晴れて、月明かりが元通りになってみれば「あぁ‥」と、違う意味で胸を打たれた。


彼女は女神では無くて、ちゃんと存在する人間。

自分が密かに情を抱いている『想い人』。


はっきり顔が見えなくたって、髪型や今日身につけていたワンピースで彼女だとわかる。

わかってしまうくらいに‥コッソリと見つめていたのだ。


自分はまだ、彼女にとって星にすらなれていない。


今夜、皆の前で演奏をしている時。

今日の主役は自分では無いと分かりながらも、少しくらいは自分に興味を示して、見てやくれないかと期待していた。


演奏中に一瞬。

本当に一瞬だけ、目が合って‥微笑む彼女が拍手を贈ってくれて、それだけで俺は満足だった。


彼女は気づいていない。

俺が本部を訪れる時、いつも貴方を見ていた事も、貴方への恋心を胸に秘めている事も。


彼女を見かける時はいつも誰かと一緒で挨拶するのがせいぜい。


当然だ。

此処は職場であるし、顔を合わせる時は仕事中なのだから。


けれど今は勤務時間外で、そして珍しく彼女は1人。

これは話しかけるチャンスなのでは!?

グッと拳を握った。



それにしてもなんだろうか?

さっきからユラユラと立ち位置が定まらないのは‥酔っているから??


驚かせないよう近づきながら、彼女の動きをよく観察した。


楽しそうに鼻歌を歌って。

そして揺れているのは‥


「もしかして、1人で‥ダンス?」


それも、さっき俺が披露した『月と星のワルツ』の旋律。


どうして此処で?


聞きたい事も話したい事も山程ある。

何より‥自分を知って欲しい。


これを逃せば今度はいつ話しかけられる機会がある!?


そう思うと、焦りから「‥今晩は。1人でダンスですか?」と、後先考えず話しかけてしまった。


「えっ?やだ‥誰もいないと思って‥」


彼女は動きを止め、そして困惑の表情で俺を見上げた。


そんな表情ですら、俺の目には可愛らしく映ってしまう。


あ、やば。失敗した?

でも‥いいか。


はなから自分の想いが叶うとは思っていない。

このままずっと想いを告げられず、もやもやと燻り続けるくらいなら‥玉砕を恐れず行動すべきだ。


ここは兄を見習って、先ずはどうにかして接点を作る。その結果彼女から『兄弟揃って変』と、認知されてしまっても‥仕方ないだろう。


「それ、さっきの曲っすよね?俺でよかったら、お相手しますよ」


今だけでも見てくれないか、俺の月女神よ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ