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とある休日

久しい2連休。


ミリーは空を見上げ「うーん‥」と悩んだ。


場所は自宅の玄関先。

手には大きな洗濯籠。


彼女が悩んでいる理由。

それは今から洗濯しにいって大丈夫か?である。


家から共同洗濯場まで、徒歩で約5分。

そう遠い場所では無い。


但し、あいにくの空模様で、空は一面灰色の厚い雲に覆われていた。


けれど希望もある。

雲の流れから予測して、おそらくこの後晴れるんじゃ‥ないか?と。


毎日毎日行けるわけでは無いから、今日を逃すと、今度いつに行けるかわからない。

もし当てが外れたら、その時はその時だ。


ミリーは意を決して家を出た。



ーー


洗濯場は空いていた。


おそらく皆、天気に不安を覚え避けたのだろう。

失敗したかなぁ?と、私は早くも後悔していた。


「はぁ〜。まぁいいわ、空いてる分ササっと終わらせよう」


天候の良い日は、どうしても混み合う。

順番待ちで1時間くらいはザラだ。


それでも皆が此処に来る理由は、一回一回水を汲み上げ無くていいからだ。


数年前。

一本の水路が街に引かれた。

工事期間は10年強と、大変大掛かりなものであったが、その甲斐あって住民の暮らしは随分と楽になったのだ。


なんせそれまで地下水をポンプで一回一回汲み上げるか、川まで汲みに行っていたのだから。



その事業を主に行なったのは、この街に居を置くペリット子爵家。

そして私の雇用主であるウルグ伯爵家。


両家の仲は正直微妙‥と言わざるを得ないが、それは一般市民にまで影響するものでは無い。



「とにかく、終わらせましょ」


スカートの裾を1箇所にギュッとまとめ、膝まで足を出した。


そして先ずは洗濯物を水につけ、足で踏み洗う。


「あ〜っ!冷たいっ!」


季節は秋。

水温が低いのは当然の事。


それでも天気が良ければ日差しの助けがあって、多少水温が上がっただろう。


まぁでも仕方ないわね。

人にやって貰うとお金がかかるし‥。


そんな事を考えながら、足を動かしていると


「あれ?ミリーさん?」


と、よく知った声で名を呼ばれた。

足を止め振り返ると、そこにはノアが。


手に籠を抱えている。

どうやら彼も洗濯に来たようだ。


何という偶然だろう。

胸がほわっと暖かくなった。


「おはよう〜」


「おはよ!奇遇ですねぇ」


ノアはこの偶然が余程嬉しかったのか、喜色満面。それはわたしも同じで自然と口角が上がる。


「ここまで来て何ですけど。洗い終わるまで天気保つと思います?」


ノアは靴脱いで、私の隣に並んだ

そして「冷たっ!」と、身震いしている。


「もっと着込まないと、そんな薄着じゃ風邪ひくわよ?」


ノアの服装は動きやすさ重視らしい。

今日は暗い赤色の上衣と、黒色のブレー。


靴なんてサンダルだった。


「‥それは今から洗うの。乾いたら着る」


その返事に私は驚いた。


乾いたらって‥。

真夏じゃ無いんだから、そんな直ぐに乾くわけないじゃ無い。


それは多分彼も充分分かっているだろうから、わざわざ言わないけどね。


意外と抜けてる所あるんだなぁ‥と。

いっそ可愛く思えてきた。


「しょうがないなぁ、私の肩掛け貸してあげる」


背伸びをして、彼の首元に巻き付けた。



ーーー


2人でやれば早く終わる。

私達は作業を分担して洗濯を進めた。


洗濯粉をつけ、脚で揉み洗いするのは

ノア。


水で濯ぐのは私。


そして絞るのはノアだ。


「今日ね、天気微妙だから、結構悩んだんですよ。でもいよいよ着替えが無くなっちゃったからどうしようもなくて」


彼が布を絞ると水がバシャーッと勢い良く落ちた。


「!」


すごい。

細身に見えるけど、やっぱり腕力?握力は男性ね。


私ではこうはいかない。

何だかんだで、絞る作業が一番苦手だもの。


私の視線に気づいたノアは「何?」と、不思議そうに首を傾げた。


「いいえ、何も」


ふふふっ。

口元を手で覆い笑っていると、ノアは居心地悪そうに私の腕を自分の肘でトンっと突いてきた。


そして「もしかして、口に出せないような想像でもした?」と。


私だけに聞こえるよう、耳元でひそり呟いた。


落ち着いた低い声と含みを持たせた言葉に、私の心臓は早鐘を打った。


「く、口出せないって‥何よ。そっちこそ何を考えて‥」


頬が熱い。


私の方が歳上なのに、付き合い始めてからずっと翻弄されっぱなし。


きっと今も、私がどういう気持ちでいるかなんて、お見通しなんだわ。


照れくささと悔しさから「ぽすっ!」とノアの胸に拳を置いた。


「俺?俺は‥アレですよ。ミリーさんの足が眩し過ぎて、ずっと困ってるよ」


手についた水をピッと振払い、余裕綽綽で答えた。


「〜〜っ!?」


羞恥心で顔が一気に熱くなった。


そして思わず足を隠したくなったけれど、そうすればスカートが濡れてしまうし‥と思い悩む。


「もうっ!私はそんな事、考えてないからね!」


私は恥ずかしさを紛らわすように、足を振り上げ彼に水をかけた。


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