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本命は

待機を命じられて、かれこれ1時間。


のんびりと雑談をしながら昼食代わりに菓子を摘んでいる。


外は良い天気。

窓から入る日差し丁度良いし、微かに聞こえる演奏も耳に楽しい。


「ふぁ‥」


ノアは眠そうに大きな欠伸を一つ。

指の背で目元をゴシッと擦った。


「今朝帰って来たって言ってたもんね」


「はい。本当は今頃到着予定だったんですけど、今日は義姉さんの誕生日だからって兄貴に急かされてーー」


あぁ、そういえば。

確かにトレッサも今朝方ソワソワしていたかも。

ヨーナスは先に帰宅したから、今頃家で準備をしているかもしれない。

さすが新婚さん‥羨ましいわぁ。


そういえば‥ノアの誕生日っていつなんだろう?

歳は私より年下で、未成年ではない‥はずよね?


「ーーだから急遽予定変更して、夜明け前に向こうを出発して‥確か7時過ぎくらいにはこっち着きましたね」


「ふんふん」


私は相槌を打ちつつ、淡々と語るノアを盗み見た。


髭を剃った形跡はあまりない。

かといって若い子特有の吹き出物跡もないし‥。


23〜20歳とか?


えー‥待って若い。


「そこから荷下ろしやら手続きやら‥その後、何故か会議まで出る羽目になったし」


とりあえず今聞くと、話の腰を折ってしまうから今度ちゃんと確かめよう。


「それは確かに強行日程ね」


「ですよねぇ?まぁ、もう済んだことなんでいいですけど。ハハハッ」


もっと大人数であれば1人の我儘で動く事はないけど、今回はノアとヨーナスのオイゲン兄弟だけだったからなぁ。


「少し仮眠する?」


「いやー‥さすがに此処ーー」


ーー「ピーピーッ!!」


室内に音が鳴り響いた。


「っ!?」


「ん。来たわね」


私はすぐさま立ち上がり、商会長の執務机に向かった。


「ミリーさん、この音は何ですか??」


そしてノアも狼狽えながらついて来て、辺りをキョロキョロと見回していた。


これは一応、機密事項。

当然商会長はそれをわかっていて、本来関係ないノアをわざわざ部屋に残したのだから、多少バレるのは仕方ない。


私はノアに見えないよう、執務机に隠されたある仕掛けをギュッと押した。


『ーーザザッ‥メイヤー君。まだそこにノア・オイゲンはいるかい』


机の天板がホワッと光り、同時に商会長の声が流れる。


また仕掛けを押し、今度は私が「ええ、まだ彼も一緒です。人手が必要ですか?」そう返答した。


『ーーいや、予想外の依頼が来てね。ザザッ‥どうしても彼が‥ザッ‥必要らしい。とりあえず準備をしてから、こちらに連れてきて』


「っ!?‥承知しました。用意でき次第参ります」


クルッと振り返ると、ノアは目を白黒させていた。


この机には『声渡り』の魔法が仕掛けられている。ただし、何処からでも、誰からでもではない。


例えばそのうちの一つ。

現在来客中の貴賓室から会長室がそうだ。


さっき私がそうせず、わざわざ会長室まで移動をしたのは、客人にその姿を見られ聞かれる事を避けたかったからだ。


「今のは商会長の声‥ですよね?どうやって??というか、俺が必要って??」


ノアはとても混乱していた。


その気持ちはよくわかる。

私もコレを初めて紹介された時、信じられなかったし、実際に扱ってみた時も意味がわからなかった。


しかも、彼が必要?

これは私も気になるし、その理由を直に聞きたい。


王立音楽院。

王女殿下。


私の想像では、どちらもノアに結びつかない。


「説明は後。とりあえず服装を整えましょうか?なんせ貴方をご指名された方はとんでもなく貴い方だから」


「貴い??待って。人違いじゃないの?俺、そんな方に呼ばれる覚えないよっ!?」


それは私も同意。

だってアードラー商会の会長ならともかく、一般従業員のノアよ?


「‥あなたに覚えがなくても、何処かで聞き及んだのでしょうよ」


「え、もしかして苦情?」


ノアの顔から血の気が引いて、青くなっている。

どうやら、良い方向には受け止めないらしい。


「さあ?まぁいいわ。とりあえず腕の見せ所ね。私が貴方を誰に紹介しても恥ずかしくないような立派は紳士にして見せるわ」


だって今日のノアは大きめの長袖シャツを上着代わりに羽織っていて‥普段通り、全体的に緩い服装だった。


せめて以前見た、濃紺シャツをピッと着ていれば、髪を整えるだけで済んだだろうに。


でもまぁ、コレも含めてノアなのだからしょうがない。


「別にそういう服を全く待っていない訳じゃ‥。でもまぁ、今から家に帰る訳にもいかないでしょうし、ミリーさんがそういうなら任せます」


以前ノアの部屋にお邪魔した事がある。

何をしに‥何て野暮な事は聞いてはいけない。

ただ子供のように『トランプ遊びを楽しんだわけじゃない』とだけ言っておこう。


少し思い出して、恥ずかしくなり誤魔化すために「んんっ」と咳払いした。


ノアは西区にある楽器工房の家を間借りしていて、確か商会から徒歩で20分くらいはかかる筈だ。


それくらいなら、商会内で揃える方が早い。

オーダーメイドを希望されるお客様向けに、採寸室兼、化粧室完備。

さらに見本としていくつか男性女性共に服の用意もある。


「お任せあれ!」


私はノアの手を引いて、意気揚々と会長室を後にした。


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