表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/67

第62話 ループ系VTuberの日常と覚悟

 朝起きて最初にやるのは、エゴサ。エゴサーチ。

 VTuberとして活動をはじめてから、欠かしたことがない日課だ。


 ブイックスの検索欄に、自分のVTuberとしての名前を打ち込んでいく。


 すると、濁流のようにメッセージが流れてくる。

 色んな人が紗香のことに言及してくれている。


 好き。

 愛してる。

 いつも見てる。

 頑張ってください。


 様々なアイコンの人たちがいて、その中には推しマークを付けてくれている人も混じっている。


 紗香を推しだと言ってくれる人。

 配信の感想を呟いてくれる人。

 

 本当にいっぱいいる。

 アンチはもちろんブロックしているけど。



「みんな、いつもありがとう」

 


 メッセージの1つ1つに『いいね』を押していく。


 だけど、すぐに制限がかかって押せなくなってしまった。

 最近のブイックスは活動者に優しくない。


 気を取り直して、簡単なメッセージを全世界に発信した。



《おはよう》



 すると、すぐに通知が来た。

 リスナーが『いいね』をしてくれたり、リプライを送ってくれている。

 その中には、さっきいいねをしたリスナーもいた。

 もしかすると『いいね』をもらったことに気付いて、紗香のおはようを待っていたのかもしれない。

 そう考えると、とってもかわいい。


 こんなにすぐに反応するだけでも、かなり大変なはずだ。

 今はもう9時だから、仕事中にこっそり送ってくれている人もいるかもしれない。

 起きたばかりの人もいるかもしれないし、夜勤明けの人かもしれない。


 様々なリスナーがいて、みんな紗香のことを推してくれている。


 たったこれだけのことで、幸せを感じてしまう。



「いつもありがとう」



 ギュッとスマホを握りしめる。


 だけど、次の瞬間には心の中から黒いモヤがあふれ出てきた。


 部屋の中を見渡すと、大量の同人誌が並べられている。

 そのほとんどがふたなり本。


 紗香はふたなり好きを隠して、VTuber活動をしている。


 受け入れられないと思ったから。

 ヤバイ女と思われたくなかったから。

 もし『一番星銀花』の妹とバレた時、彼女の名前をケガしたくないから。


 だけど、そのことに罪悪感と閉塞感をおぼえることがある。


 本当はカミングアウトしたい。


 リスナーがどこまで受け止めてくれるかはわからない。

 反転されるのは怖い。


 だけど、ふたなり好きの紗香も含めて好きになってほしいと思ってしまう。

 リスナーに好きと言ってもらえるほど、本当の自分を好きになってほしくなる。

 でも、同時に嫌われる不安が脳裏をよぎる。



「あーあ。新しい配信したいなー」



 正直、配信するのは飽きてきた。


 ああ、違う違う!


 配信自体は飽きてないっ!

 飽きてないんだけど、ループの中で配信しているから……。

 同じ内容の配信を何度もするハメになってしまっている。

 配信内容を変えればいいと思うかもしれないけど、そう単純じゃない。

 変更したせいで炎上してしまったら、管理人さんの迷惑になるかもしれない。


 まあ、同じ配信をすると同じ反応をしてくれるリスナーたちはかわいいんだけど。


 考えれば考えるほど、早くループを終わらせたい理由が増えていく。


 2回目のループは管理人さんをなるべく長時間、部屋の中に引き留めようとしあ。

 だけど、通り魔はずっと玄関前でスタンバっていた。


 3回目のループは、管理人さんが早く部屋を出るように仕向けた。

 だけど、通り魔がすごい速さで走ってきた。


 4回目のループはヤケクソで管理人さんに告白してみたけど、簡単にフられてしまった。

 よく考えれば、結構失礼なことだと思う。

 推しの妹と付き合えるんだよ!? 最高のシチュエーションじゃない!? チンコついてんの!? いや、玉はついてなかったか。

 ……いや、色々やらかしているから仕方ないかもしれないけど。


 多分、1回目に管理人さんが感じたことは合っているのかな。

 管理人さん自身が生きようと思わないとダメなんだ。



 そして、今日は5回目の運命の日だ。

 管理人さんが刺される日。



 今回で終わらせたい。



 今はパーティーの後、管理人さんを彼の部屋まで運んできたところ。

 自分が『一番星銀花』の妹であることをカミングアウトするのも、かなり飽きてきた。


 何度も挑戦してダメだった。

 こうなったら、もう遠慮なんてしない。

 ズカズカ入り込んでやる。

 何度も死ぬ管理人さんが悪いんだ。


 早くリスナーたちと新しい配信がしたいんだからっ!



「管理人さん、何を我慢しているんですか?」

「我慢……ですか?」



 不思議そうな表情をする管理人さんを見て、紗香のイライラゲージが溜まっていく。


 いっそのこと、もう全部吐き出してしまおう。



「管理人さん、脱いでください」

「…………へ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ