第55話 VTuberと幽霊って似てる?
救う。
管理人さんを救える。
たしかにそれは重要なことだけど、今は他のことが気になりすぎて、頭がパンクしそう。
「その前に、答えてよ。なんでそんなことを。もっと地味な格好だったよね!? 黒髪のボブで背が高かったはず。今の姿はまるで『一番星銀花』だよ!?」
お姉ちゃんは困り眉を作った。
――ごめん。私にもよくんからないの。
「わかんないって……」
そんな言葉で片付けられていいのだろうか。
少なくとも、紗香は全然納得できていない。
死んだはずのお姉ちゃんの声が聞こえた。
しかも、亡くなったばかりの管理人さんの部屋から。
それで覗いてみれば、演じていたVTuber『一番星銀花』の幽霊っぽい姿になっていて……。
あーもー! 意味がわからないっ!
エロい展開を期待して読んだら、かわいい絵柄でドロドロの昼ドラ展開を見せられた気分!
「お姉ちゃん、死んだんでしょ? なんでこんなところにいるの? 幽霊なの? それとも化け物?」
――うん。私は確実に死んだ。だけど、気が付いたら死んだ場所に立っていて……。
「地縛霊ってこと!?」
お姉ちゃんは否定も肯定もせずに、うつむていばかりだ。
――ごめんね。本当にわからないの。こうやって誰かと話せるのも、はじめてのことだから。
『一番星銀花』は申し訳なさそうな顔をしているけど、紗香の心がさらにイラつくばかりだ。
なんでこんなにイラつくのはわからないけど、イラついて仕方がない。
「お姉ちゃんの身に何があったのか、順番通りに話して」
――わかったわ。
お姉ちゃんが早速話そうとした瞬間――
「あ、僕たちは出ていきましょうか?」
気を遣ってくれたのか、四分一さんが提案してきた。
他の3人も少し不安そうな表情魚浮べている。
――いいえ。今から話すことはみなさんにも聞いてほしいんです。それに、オカルトの専門家は心強いし。
「『一番星銀花』に知ってもらえているなんて光栄です」
お姉ちゃんは四分一さんに優しく微笑んだあと、『一番星銀花』の姿のまま改めて話しはじめる。
――私は『一番星銀花』として活動していた。VTuberの黎明期。まだ動画勢ばかりだった頃ね。毎日毎日、動画の撮影をしては家に帰るだけの日々。でも、結構楽しかったの。自分で望んだ仕事だったから。でも、そんなある日、スタッフと喧嘩になり、最終的に演者から外されたわ。
シレッと言っているけど、この場にいるほとんどの人にとってはショッキングな内容かも。
世間一般では『いつの間にか声が変わっていて炎上した』程度の認識しかないはず。
――そのストレスのせいかはわからないけど、マンションの一室で倒れて、そのまま死んじゃった。そして次に目を覚ますと、幽霊になっていたの。
紗香は静かに聞き続ける。
――だけど、その場から動くことができなくて……多分、呪縛霊みたいな状態だったのかな。監視カメラみたいにずっと同じ光景を見ることしかできなかった。その状態で数年を過ごしたと思う。
お姉ちゃんの顔は少し苦々しい。
それだけ、その時動けなかったのがつらかんたんだと思う。
――その後、住んでいたマンションが取り壊されて、自由になれると思ったんだけど、この土地からは出られなくて。
「それで?」
――しばらく経ったあとに、新しいマンションが建築されはじめたの。それがこのVTuber専用マンション。そうしたら、突然力が漲ってきて、今みたいに話せたり、この部屋の中だけでも自由に動けるようになったの。
話を聞いても、かなり疑問点は多い。
でも、なんとなくわかることはひとつある。
このマンションが何かお姉ちゃんに大きな影響を与えている。
『一番星銀花』の大ファンである管理人さんが建てた
すごく運命的なものを感じて、心がときめいてしまう。
「なるほど。大体の事情はわかりました」
静かに言い放った四分一さんは、まるで探偵のような動作でみんなの前に立つ。
「最初に言っておきますが、これはただの仮説です。現状から逆算した後付けのような考えです」
無意識に、全員が頷く。
「結論から話しましょう。二本松さんのお姉さん『一番星銀花』の中の人は、『一番星銀花』という神様になっています」
――え?
どういうこと?
全く意味がわからない。
「順を追って説明していきますね」
そう言った四分一さんは一見冷静に見えたけど、その瞳は好奇心と興奮でギラギラと輝いていた。




