第54話 久しぶりに出会ったお姉ちゃんは、とんでもない存在になっていました
「えっと、お姉ちゃん、なんだよね……?」
――紗香。
お姉ちゃんの声が聞こえる。
だけど、お姉ちゃんの口から声が聞こえている訳じゃない。
直接脳内に声が入ってきているような感覚だ。
「お姉ちゃん、なんでそんな恰好でいるの!? 生きてたの!? それとも幽霊!? 一体どうなっているの!?!?」
まくし立てるように叫んだけど、反応したのはお姉ちゃんじゃなかった。
「何を言っているの? 紗香ちゃん」
まるで不審者を見るような目を向けられている?
「三春さん……さん? 見えないんですか?」
「何を言ってるの? おかしくなっちゃった……?」
本当に紗香はおかしくなったのかな。
いや、そんなわけはない。
大丈夫。まだまだエロいことはいっぱい考えられるし、四十八手も思い出せる。
そうなると、お姉ちゃんが見えているのは、紗香の頭や目がおかしくなったせいじゃないと思う。
「四分一さんは見えてますか?」
今この場にはちょうど、オカルトの専門家がいてくれている。
「かろうじてですが、見えています。女性とはわかりますが……」
四分一さんには霊感がある。
幽霊の声や姿を認識することが可能らしい。
そんな彼でも、ちゃんと見ることができていないらしい。
「みなさんに見えるようにはできませんか?」
「……なるほど。少し待っていてください!」
四分一さんは早速、管理人さんの部屋から出ていった。
何かを取りに行ったのだろう。
30秒も経たないうちに、見慣れないものを持って、帰ってきた。
「みなさん、これを着けてください。これで見れるようになるかもしれません」
「なんですか? これ」
「あ、懐かしい。3Dメガネ」
三春さんの言葉に、ハテナマークが浮かんだ。
「え、3Dメガネって黒いサングラスみたいのじゃないんですか?」
「あー。それは新しいヤツ。あたしが小さいころはこの赤青のメガネだったから」
周囲を見渡しても、ほとんどの人はピンときていないみたいだった。
所持者である四分一さんだけが頷いている。
「あれ? もしかして、みんな知らない? うそ……」
三春さんの目が遠くを見つめはじめた。
ジェネレーションギャップから目を背けているのかな。
「えっと、これって呪物?」
「呪物ですが、そんなに強い力は宿っていないので大丈夫です。壊さないようにだけはしてください」
十六夜さんからの質問に、四分一さんが答えた。
みんなは少しおっかなびっくりで呪いの3Dメガネをかけていく。
「…………え?」
そして、『一番星銀花』を見て、目を見開いた。
「『一番星銀花』!?!?」
みんな見えるようになったようで、各々驚きの声を上げている。
その反応に気付いた『一番星銀花』は、ゆっくりと胸の前に手を置いた。
――みなさん、はじめまして、でいいのかな?
「お姉ちゃん……なの?」
――ここに来てくれて、ありがとう。
紗香の質問には答えてくれないんだ。
――みなさん、このマンションの管理人を救ってくれませんか?
「……救う?」
衝撃を受けた。
管理人さんはもう亡くなっている。
心臓は止まっていたし、死亡届も出されて、火葬されて骨になっている。
もう死んだ人は救えない。そのはずなのに――
「救えるの……?」
『一番星銀花』は神妙な顔で、ゆっくりと頷いた。




