第49話 事件ははなまるに解決した?
いつも疑問に思う。
はなまるって――自分って、そんなに何も考えてないように見えるのかな?
これでも色々と考えているつもりなんだけど。
考えた過程に興味がなくて、
みんな結論しか興味がないのに、途中式を知りたがるのはなんでなんだろう。
まあ、どうでもいいけど。
この世界、いろいろと考えすぎると、心に悪いものが溜まっちゃう。
モヤモヤ。イライラ。
溜まりすぎると、つらいつらいってなっちゃう。
いくつもの理想を追い求めても、すぐにあっぷあっぷになっちゃって、壊れそうになっちゃう。
理想なんていくらでも追い求めらてしまうし、目的もなく理想を求め続けると再現がない。
だから、はなまるは1つの理想しか求めていないし、それ以外に興味を持たないようにしているの。
「よくやるねー」
「んんー」
はなまるの目の前では、怜央と陽子さんが唇を重ねている。
ここはマンションのスナックバーで、管理人さんが提案したパーティー中。
最初は遠慮がちだったのに、今は完全に他人の目もはばかっていない。
号泣している陽子さんを抱きしめたことで、怜央のタガが壊れたみたい。
別に目の前でイチャイチャしているのは気にならないけど……。
はなまるにも構ってくれるからいいんだけど、なんていうか、ここにいるのが面倒になっちゃう。
どうせだから、気になっていた疑問を消化しちゃおう。
管理人さんなら知ってるよね?
「ねえねえ、管理人さん」
「なんれすか?」
声を掛けると、管理人さんの呂律が回っていなかった。
すごく酔っているみたいで、顔が真っ赤でふにゃふにゃだ。
パパもママもお酒には強いから、ちょっと新鮮かも。
怜央もお酒を飲んでもあまり変わらないけど『酔えないから意味がない。体に悪いだけだ』って言って飲まなかった気がする。
「ねえ、陽子さんのパパ、どうしたの?」
「大丈夫です。二本松さんと三春さんに色々ととしてもらって、もう十六夜さんに近寄らないように誓わせましたから」
「本当に大丈夫?」
「かなり恥ずかしい写真を大量に撮りましたから、逆らえるはずがありません」
「あー。なるほどー」
それなら大丈夫そう。
あの人は会社での立場があるから、効果てきめんかも。
「それよりも、どうですか? 3人でのお付き合いは」
「うーん。そうだねー。怜央と一緒にいれれば、それでいいから」
「何か不満とかないんですか?」
不満かー。
「どうだろ。気にしないことにしてるんだ。そういうこと」
「気にしない、ですか?」
「うん。気にしなければ、つらくないから」
「でも、気になることは気になるでしょう? 完全に意識から外すことはできない」
「うーん、そういう時は、優先順位を考えてるかなー」
「優先順位?」
「うん。はなまるにとって、何が一番はなまるなのか、頭の中で明確に決めてるの。それに沿って考えて、絶対に守る。そうすれば、全然イライラしないからー」
「なるほど。では、はなまるさんの中の優先順位ってどうなってるんですか?」
あまり他人に話したくないけど、管理人さんならいいかなー。
「1番上は怜央。2番目はイラスト。3番目は配信って感じ」
「十六夜さんは入ってないんですか?」
「うーん。陽子さんはまだ決められてないんだよねー」
管理人さんは「なるほど」と言いながら、話題を変えてくる。
「そういえば、はなまるさんがVTuberをはじめた理由って、なんなんですか?」
「怜央がはじめたからだよー」
「本当にそれだけですか?」
「なにを言いたいのー?」
「なんでバ美肉をしたんですか? はなまるさんなら、バ美肉という風変わりな属性がなくても、十分に売れたと思います」
へー。
管理人さん、結構いろいろ見てるんだ。
「だって、怜央と並んだ時に、少しでも見栄えがいいようにしたかったからー」
「なるほど。そういう考えがあったんですね」
「うん、そうだよ。結果的に、3人でバランスよくなったけどねー」
よく考えれば不思議だなー。
怜央はもちろん男。
陽子さんもかなり女性らしい体格の女性。
はなまるのVTuberとしての姿は、女性。だけど、中身は男で実際にリスナーのみんなにも伝えている。
3人で並ぶと、なぜかしっくりくる。
「あの、はなまるさん、今は幸せですか?」
「うーん。はなまるかな」
「はなまる、ですか」
「うん。はなまるが保証する、とびっきりのはなまる」
幸せ、という言葉はあまり使いたくない。
その理想はすでに捨てちゃったから。
「そうなんですね。よかったです」
「うん。よかったよかったー」
怜央と一緒にいられるだけでいい。
怜央がはなまるのものにならなくてもいい。
はなまるは理想を深追いしない。
だから、今日もニヘラと笑えるんだよ?




