ある日、中二病の娘が異世界転移をすると言い出した。
Twitterでの冒頭部分一緒小説を書かせて頂きました!!
今日は変わった日だと、そう認識せざるを得なかった。快晴なのに、雷鳴が轟き、雹が降ってきたのである。
出掛ける予定はあったものの、急ぎではないため、後日にしようと決め、ごろりとソファへ寝そべれば、中学2年の娘がリビングへと降りてきた。
「また、ゴロゴロしてるわけ?」
たった今、横になっただけなのにまるで虫でも見るような冷たい視線を向けられる。それも、反抗期の娘の成長だと苦笑を浮かべれば、気持ちが悪いと一蹴された。
「この天気にどこかへ出掛けるのか?」
そう尋ねれば、娘は目を輝かせて持っていた文庫本の一頁を俺へと見せた。
「私、今から異世界に行ってくるから」
「はぁ!?」
「だから、ここ見て!!今日の天気と全く一緒なわけ。この天気は異世界への招待状なの。分かる!?」
「いや、全然分からん」
アニメやゲームが好きだとは思っていたが、まさか物語と現実の区別がつかないとは……。これが世にいう中二病というやつなのかも知れない。
そう思いながら、娘を見れば不機嫌そうな顔で睨まれた。
「とにかく、私は異世界に行くから!!捜さないでね!!」
と、大きなリュックを背負って家を飛び出して行ってしまった。だが、この悪天候で外に出るのは危険だと、慌てて追いかける。
「鳥居を潜れば異世界転移!!さよなら、地球!!さよなら、日本!!私は異世界へと旅立つわ!!」
叫びながら鳥居を潜った娘は特に変わった様子もなく、明らかに落胆した様子だ。だが、それも仕方がない。異世界になど存在するはずがないのだから。
「気が済んだのなら、帰るぞ」
そう言って、俺が鳥居を潜り抜ければ、そこにいた娘は消えていた。そして、目の前にあった神社も。
変わりに異国情緒溢れる町並みが広がっている。
「……はぁ!?」
何がなんだか分からない。呆然と道の真ん中に立つ俺を、猫耳やらドレスやら、コスプレをした人々が邪魔そうに通りすぎていく。まるで、ハロウィンだ。
「あの、すみません」
「§#%¶♭&&♪*‡◇§」
全く意味の分からない言葉を返され、俺は娘に毒されたのか一瞬、中二病のような単語が頭を過る。
「いやいや、まさかな。そんなことあってたまるか……」
この後、俺が現実を受け入れるのに一月、同じ天候が起こり帰るまでに3年の月日がかかった。
因みに、折角帰れたというのに、娘の第一声が「お父さんばっかりズルい!!」だったのが妙に懐かしくて嬉しかったことは、娘には内緒だ。そんなことを言えば、すぐに調子に乗るからな。
───end───