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ヴィンセントルート

 クレア16歳の誕生日、ヴィンセントとクレアは会う約束をしていた。2人はダンジョン近くの人気がないところで話しをした。


「誕生日おめでとうございます。誕生日プレゼントです。お守りのようなものなんですが、使ってください」


 中には青い薔薇のブローチが入っていた。


「ありがとうございます」


 ワンピースにブローチをつけると、ほわっと温まるのを感じた。


「なんのお守りなんですか?」


「クレアさんが怪我をしそうになったら守ってくれるものです。来月からはもう護衛じゃなくなるので、俺がいなくても守れるように」


 ヴィンセントは一呼吸置いて続ける。


「でも、本当は貴女と世界を巡りたい。以前の告白の返事を聞かせてもらえますか?」


「………はい。一緒に旅をさせてください」


 ヴィンセントは虚をつかれたようにポカンとする。


「ほんとですか?」


 コクンと頷くとヴィンセントの顔がみるみる赤くなる。


「両親を説得するのに、時間がかかるかもしれませんが。私はヴィンセントさんと一緒にいたいです」


「あっそうか。そうですね、ご両親の説得には俺も行きます。許してもらえるかな」


 赤面したまま慌てる様子のヴィンセント。


「ヴィンセントさんならきっと大丈夫ですよ!ずっと守ってくれたんですから」


 今までとは違い、クレアがヴィンセントを励ました。


「そうだといいんですが」


 困り眉の笑顔でクレアを見る。


「まさかクレアさんが恋人になってくれると思ってなくて、フラれると思って覚悟してたんです」


「私の後ろ向きな考えが移りましたか?」


「あはは、そうかもしれません。似てきたんでしょうか」


「きっと2人なら大丈夫ですよ。今までヴィンセントさんが支えてくれたみたいに、私もヴィンセントさんを支えますから」


「そうですね。2人なら大丈夫。最初はどこに行きましょうか。寒いのが苦手なので、常夏の国へ行ってみようかと思ってたんです。色んなスパイスがあるんですって。それか、国内でも北部のほうなら獣のダンジョンがあるんですが、肉料理が盛んだそうですよ。それから、湖のダンジョンでレアドロップする虹色の魚の卵は珍味だそうです」


「食べ物のことばっかりじゃないですか」


「どこのお土産ならクレアさんが喜んでくれるかなーと色々調べたんです。一緒に行ってくれるなんて、夢みたいだ。今さら嫌だって言っても拐って行きますからね」


 饒舌になるヴィンセントは笑顔でクレアを見つめる。クレアも笑顔で見つめ返す。ヴィンセント照れくさそうに笑い、クレアの頬にキスをした。


「ずっと、一緒にいましょうね」




 ********************


 ーーーーー数ヵ月後。


「これは、ついにカレーを作る日が来てしまいました」


 クレアは大きな麦わら帽子をして、常夏の国のスパイスを見てわなわなしながら隣のヴィンセントに話しかける。


「なんですか?カレーって」


「パック保存食の定番です。毎日食べても飽きない魔法の食べ物ですよ。カレーを作るならお米も探さなくては」


「お米ですか。リゾット用のものなら見かけますが」


「リゾット用と違って、モチモチしたお米が合うんです。きっとどこかにあるはず!」


「じゃあ次はモチモチしたお米が見つかりそうな国にしましょう。どんな国で育てるんですか?」


「四季があって、梅雨と呼ばれる1ヶ月くらい雨が多い日があって、湿度が高い国、でしょうか」


「うーん、とりあえず四季のある国を回ってみましょうか」


「そうですね!モチモチしたお米なら、シンプルなお粥とか美味しくて消化に良い保存食が作れます。普段食事が満足にとれない人の回復食として支援用に作れたらいいな」


 戦争で使われた保存食の知識を持ち込んでしまったと後悔していたクレアは、保存食を貧困や災害支援に大々的に使用した。パック保存食は福祉のものであるというイメージを広めたのだ。旅をしながらでも、新たな保存食の開発は続けている。


「食べ物のことを考えるクレアさんが1番綺麗ですね」


 最低限の化粧しかしていない素朴な姿のクレアが好きだった。


「外で言うのは恥ずかしいからやめてくださいってば!」


 怒ったように話すクレアも可愛く見える。


「じゃあ宿で2人っきりになったらまた言いますね」


 麦わら帽子でクレアの照れた顔が良く見えない。麦わら帽子のリボンにはプレゼントした青い薔薇のブローチがついている。


 クレアと手を繋いで、2人で異国の地を歩く。こんな幸せな未来がくるとは思っていなかった。


 保存食について語る彼女を初めて見たときから引かれていた。本当はずっと特別だった。この感情が初めてで、気づかないふりをしていた。

 出遅れた俺は、結ばれることはないと思っていた。ただ彼女のことを想いながら、思い出になるまで旅をしようと思っていた。


 けれど、俺を選んでくれた彼女が一緒に旅をしてくれる。俺に笑顔を見せてくれる。名前を呼んでくれる。可愛いと伝えれば照れて顔を隠す仕草も全てが愛おしい。


 幸せな旅路は続いていく。世界中を巡るまで、この旅は終わらない。



 ーーーヴィンセントルート 旅立ちエンド

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