表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

第3話……レベルアップ

 ――十年前。


 銀髪の女の子が家に遊びに来た。とても可愛らしくて……その瞳が深緑で宝石のように綺麗だったのを覚えている。俺の心はその一瞬で奪われた。



「――エドウィン、あのね、わたし……世界一の騎士になるの! 一番になったら、結婚してあげるからねッ」



 その子はそう微笑んで――、

 二度と姿を現さなかった――。


 詳しい事情はよく分からなかったけど……分からなかったけど……あれ?



 意識が戻りつつある。

 視界がボヤけているけど、多分、そこには銀髪と深緑の瞳の美しい女性がいた。……もしかして、俺は膝枕(ひざまくら)されてる!?



「うわ!! 騎士団長!!」

「わたしの事はベリルと。ええ、その方がわたしがもれなく喜びます。なので、呼び捨てで構いませんよ」


「だ、だけど……分かったよ、ベリル。なんか俺としても、こっちの方がしっくりくるし」


 なんか頭を撫でられているし、キスもされそうだった。……なんだこの騎士団長、美人だけど、ちょっとおかしいぞ。



 何だ、何なんだこの状況。

 俺を試している!? そうか、そうなんだな。これはこの騎士団の入団試験(・・・・)なんだ、そうに違いない。



 そう状況を読み取っていると――



 いきなり外から騎士が三十、五十と集まってきて、取り囲まれた。




「何事だ!!」



 凄い剣幕でベリルが騎士達を(にら)む。こ、こわぁ……。でも、これが騎士団長本来の顔なんだろうな。これはこれで凛々(りり)しくてカッコ良いな。



「騎士団長・ベリル様。申し訳ないのですが、その男、エドウィンには騎士団から出て行って貰います」



 一人の男が前へ出て、そう厳しい口調で言った。……なんだこの赤髪ダブルピアスの男。糸目でこっち見んな。



「彼を追い出すというのか」


「そうです。聞く所によればエドウィンは侯爵家を追放された無能と聞き及んでおります。そのような男を騎士団で(かくま)うわけには参りません。何故なら、我々の品位が疑われてしまうからですよ。そうでしょう、騎士団長」



 納得がいかないと言って、ベリルは立ち上がる。――いや、ベリルにこれ以上の苦労や迷惑を掛けられない。ここは俺がいく。



「任せろって」

「エ、エドウィン……だが」

「なぁに、俺には食事(・・)があるからな」



 そう赤髪に向き直る。



「貴様、何を……! この五十人の騎士達をひとりで相手すると? 筋金入りの馬鹿か……それとも究極完全態の頓珍漢(とんちんかん)か」


「言いたい放題だな!! もう容赦しないぞ」



 俺は拳をバキバキ鳴らし、ゆっくり歩んでいく。すると五十人の騎士が距離をつめてくる。今だ!!



 俺は【レベルイーツ】を発動させ、視界を切り替える。周囲にいる騎士のレベルを喰った。早食いしまくって口に詰めて、詰めて、詰めまくった。



 はぐはぐはぐはぐはぐッ!!


 うめえええええええッッ!!


 涙が出る程うめぇええッ!!



 女騎士が多いからか、柔らかくて生クリームのように甘いのなんの。甘党の俺には最高すぎる瞬間だ。……ああ、これが女の子の甘美ってヤツか。――てか、何故このクリスタル騎士団はほとんど女なんだろうな。おかげで美味いレベルを召し上がれた。ご馳走さん!



 そうしてレベルを食べれば――



 なんと『Lv.334』となっていた。



 俺つええええええええッ!!




「あの男、何をした? 何も変化はないようだが……まあいい。我が名はアゲート! もうすぐで副団長になれそうな男だ。騎士団長をこよなく愛し、崇拝する男なり!」



 まだブツブツと話を続けるアゲート。大福になれそうな男?(難聴) そんなの知るか!!



「なあ、ベリル。ちょっと剣を借りるぞ」

「あ、ああ……」



 彼女の腰にある鞘から剣を抜き、俺は疾風迅雷(しっぷうじんらい)の如くスピードでアゲート以外の騎士全員にみねうちを果たした。


 全員がバタリと一斉に倒れる。


 おぉ、レベル300以上にもなると瞬間移動並の移動速度なのか。やべ~、俺やべ~。



「…………へ」



 ぽかーんとアゲートは立ち尽くし、腰を抜かす。ビビってやんの。



「いっちょあがり~。さて、どうする、アゲート」


「ま……参りました」



 俺の勝ちだな。



「ありがとう、ベリル。剣は返すよ。これが入団試験だったのかな? なかなか手応えがあったけど」


「…………エ、エドウィン。素晴らしいよ。最強の騎士になれるぞ!」



 がばっと抱きつかれ、俺はビックリする。マジかよ。なんだ、俺はまだ試されているのか……!? くそう、無駄に大きい胸を押し当ててきやがって、今度はこれを乗り越えればいいんだな。




 やってやらあ!!



『プシュ――――――!!』



 ……しかし、俺は忘れていた。女体耐性ゼロである事を。絶望的に耐性が無かった。そうだ、俺は女性経験なんてない人生を送っていたのだ。


 気が付けば膨大な量の鼻血を噴き上げ――撃沈した。



 …………ベ、ベリルのバインバインのおっぱいには勝てねぇ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ