第21話……絶体絶命の大ピンチ
「どうした、エド。わたしの胸がそんなに気になるのか?」
静かに俺を見つめるベリルは、人差し指を胸元のバスタオルに引っ掛けて誘惑する。……なんて禁断の遊びをしやがる。そんなの見ない方が失礼ってモンだ。
「ベリル、俺は……」
「……(ぷしゅ~~)」
「ん?」
「……(ぷしゅ~~)」
あれ、ベリルの頭から湯気が出ているような。これってまさか、オーバーヒートってヤツ!? まさか今までかなり無理をしていたのか。
この状況も俺の為に……!
だとすれば、俺は幸せ者だなと思うと同時に悪い事をしていたなという罪悪感とか背徳感に苛まれてしまった。
「す、すまん! ベリル、俺は部屋の外にいるから着替えてくれ……」
「……(コクコク)」
くるっと踵を返し、俺は部屋の外へ。
しばらくして、部屋の中からジタバタする音が聞こえ、ベリルが何かを叫んでいた。
『は、恥ずかしいいいいいいい~~~~~~っ!!!』
やっぱり恥ずかしいのかよ!?
そっか、今までの下着でベッドもわざとらしく胸を見せつけてくる行為も、さっきのバスタオルも……全部、全部、無理していたのか!!
手を繋ぐのも恥ずかしいってそういう意味ー!!
案外、ベリルは純潔なんだな。
……ああ、全部俺の為にムチャクチャしてくれたんだな!!
そう思うとこっちまで小っ恥ずかしくなり、寛容に受け入れてくれていたベリルに申し訳ないっていうか、やりたい放題やってた自分が恥ずかしくなってきた。
くそう、可愛いじゃねえかッ!!
その場に居られなくなった俺は、ただ闇雲に廊下を走った。ベリルの顔が浮かび上がる度に走って、走って、走りまくった――。
全力疾走で駆け抜けていると、曲がり角で誰かとぶつかった。
「――うわッ!!」
「きゃあ!!」
すってんころりんした俺と相手。
……痛ぇ。
腰を打ちつけた。
これは前を見ずに走っていた俺のせいだな。腰を擦りながら相手に謝った。
「ごめん、大丈夫か……って、シトリン」
「……いったぁい。って、エド様ではありませんか」
「すまん、急いでいた」
「そんな慌てられてどうされたのですか?」
「いや……ちょっとな。それより、シトリンこそ……うわッ!」
よく見ると地面には下着が散らばっていた。全部、女性のモノばかり!! なんだこの色彩豊かな地面ッ! こんなの動けないじゃないか。
「あぁ……やってしまいました。実は女性騎士達の下着をお洗濯していたんです。エド様、拾うの手伝って戴けます?」
「はい!?」
無理だろ。
無理無理無理。
不可能、そんなの手伝ったら俺ヘンタイじゃん!!
「リ、リサを呼んでくるから、すまない!」
「大丈夫ですよ。誰かに見られてもちゃんと説明しますし、誤解を生んだとしても、わたくしはエド様の味方です」
だからって服を引っ張るなぁ!
でもこれだけ地面に散らばっていると逃げ場もないな。仕方ない、せめて逃走通路だけでも確保して、それから誤魔化してリサに助けを乞う。これだ。
「じゃ、じゃあ……少しだけな。後はリサに頼むから」
「ええ。お願いします……あっ、手が滑った!」
ぴょんと複数の下着が俺の頭に落下する。
アアアアアアア!!
こんな場面を見られたら俺、ガチのヘンタイ――あああああああああああ、三人の女性騎士が通り掛かろうとしている。しかもフィルンもいるぅ!!
「「「………………」」」
……み、見られるううう。
おしまいだあああああ……!!
俺、絶体絶命の大ピンチ!!!




