第13話……愛しさと切なさと狂おしさ
振り返るとそこには親父がいた。
その隣には三年ほど俺に仕えていた黒髪メイドの……リサ。どうして二人がココに。
「フン、ドコへ行ったかと思えば、もう新しいメイドを雇ってこんな場所でイチャイチャしていたわけか。なんとだらしない!」
「親父こそ、美人メイドのリサを連れて来ているじゃないか」
「うるさい! 誰が親父だ! お前に期待した私が愚かだったよ。親子の縁を切って正解だったわけだ。こんなのが息子では家の名が地の底に落ちとったわい」
そこまで言うか!?
さすがの俺でも傷付いた。たった今、この瞬間にガラスのハートが砕け散ったよ。――なんてネガティブに堕ちていくわけがない。
今の俺は騎士団長・ベリルとシトリンがいるんだぜ。こんなに人生変わってハッピーなんだ。寧ろ、家を出て正解だったね!
一応、傷付いた呈で心を痛めていると、シトリンが庇ってくれる。
「お止めください、侯爵様。エド様はご立派な方です! 彼はわたくしのご主人様なので、これ以上の侮辱は許しません」
「……ほう、このハークネス家の侯爵である私に逆らうというのかね!? メイドの分際で……身の程を弁えろッ!!」
いきなり右手を向ける親父は、掌から俺の『プチファイアーボール』を上回る『ギガファイアーボール』を放った。
マジかよ!!
一瞬で到達する爆炎がシトリンに激突。
彼女の体が宙を舞う……。
「……シトリン!!!」
……嘘だ。
……嘘だ。
俺を庇って……シトリンが!!
「フハハハハ!! エドウィン、これが現実だ!! いいか、これからお前の大切なモノを全て奪ってやる!!! 何かもだ!! お前はそうやって全部を失うんだ……それが十数年、怠けてきた代償なんだよ!!」
――ぐしゃっと地面に落ちるシトリン。俺は駆け寄って容体を確認する。……こんな大ダメージを受けて……ボロボロじゃないか。
何故だ!!
何故、親父はこんな魔王みたいな真似を!!
……許せねえ。
絶対に許せねえよ……。
「……エド様……。よかった……わたくし、あの時……助けて貰った時から…………あなたのことが…………」
「お、おい! シトリン、嘘だろ!?」
息を確認する。
まずいな、瀕死じゃないか!
このままだとシトリンは死ぬ
俺が助けないと……。
「元息子よ、人生共々全てを諦めて帝国を出て行くがいい。それで今までの行いを許そう」
「全てを……諦めろ?」
「そうだ、お前には所詮何も出来やしない。向上心の欠片もない、努力する気配もない……ただ怠けるだけのごく潰し。そんな愚息には天涯孤独がお似合いなんだよ」
「そうかよ。よ~~~く分かった」
「ほう?」
「親父、あんたが最低のクズ野郎って事がな!!!」
「フハハハハ!! まさか自己紹介してくれるとはな!! 面白い、元我が息子ながら笑わせてくれるなァ! 喜べ、エドウィン。今のだけは百点満点の花丸をつけてやろう!」
俺は、完全に堪忍袋の緒がはち切れた。
秘伝スキル【レベルイーツ】を発動し――親父のレベルを即時確認。へぇ……一応、侯爵って事で『Lv.185』もあるのか。通りであんなファイアーボールを放てるわけだよ。
確認後、俺は視界を反転。
――実食――
黒々としたクソマズそうな靄をもぎ取っていく。これこそが『レベル』なのだ。俺はバクバク喰っていく、ムシャムシャ喰っていく。
うおおおおおおおおおお……!!
まずううううううううううううう!! ハナクソみてえな味だ……。おまけに加齢臭。これはヒデェ、ヒドすぎるよ……親父。
「……? なんだ、何をした?」
「親父、あんたの負けだぜ」
「何を戯けた事を!! これでエドウィン、貴様も倒れるがいい!! ギガファイアーボール!!!」
ごうっと爆炎が迫ってくる。
――いや、違う! それどころか俺のプチファイアーボール並の火力なってるじゃないか!!
「なんだそのゴブリンの屁!!」
「ば、馬鹿な!? どうしてファイアボールの威力がガクンと落ちた!? なんだ、何が起きた!?」
混乱する親父。
今だ!!!
俺はピョ~~~~~~ンと飛び跳ね、拳を強く握り締めた。このゲンコツにシトリンの愛しさ×1000と、切なさ×1000と、狂おしさ×1000の想いを乗せていく!!
つまり、愛は勝つって事だああああ!!
「親父、この正義の鉄拳を受けてみろおおおおおお!!」
「ば、馬鹿なああああああ……ッ!!!」




